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ヤオコー20年度上期決算は「価格」「若い世代取り込み」で大幅増収・増益 下期は設備投資と低価格対応に注力

ヤオコー(埼玉県/川野澄人社長)の2020年度第2四半期決算は、新型コロナウイルス(コロナ)による需要増加で好調のスーパーマーケット(SM)各社同様、高い伸び率での増収増益となった。

営業収益・営業利益ともに2ケタ増

 ヤオコーの2020年度第2四半期連結決算は、営業収益2584億5600万円(対前年同期比114.7%)、営業利益158億2700万円(同145.6%)、四半期純利益106億8500万円(同149.2%)と、大幅な増収増益となった。コロナによる巣ごもり消費で、売上が大きく伸びたことが要因。売上の伸長に伴い人件費(同109.7%)や配送費(同118.8%)などの販管費も増加したが、それを十分にカバーする増収幅を示した。

 既存店売上高も同113.4%と過去にない伸び率だった。コロナ禍での買い溜め、まとめ買いの影響を受けて客数は同91.7%と減少したが、同123.5%と大きく伸びた客単価によってカバーされたかたちだ。なお、他の有力SMと比べると大幅な客数減が目立つものの、これはコロナ対策でバラ売りをやめたことによるベーカリー専用レジの閉鎖が大きな要因。同社によればその影響は約8ポイントあると言い、それを差し引くとほぼ横ばいか微減ということになる。

 それでも、9月の既存店売上高は同102.3%とほぼ昨年と同様の水準まで戻っており、「9月の4連休を境に、コロナ前の消費行動に戻ってきている印象がある」と川野澄人社長は話した。

 部門別売上高構成比では、生鮮が同1.0ポイント(pt)増、グロサリーが同0.5pt増と、コロナ禍での料理の手づくり・内食需要を反映する結果となった。反対にデリカは同1.0pt減となり、テレワークによって仕事帰りの顧客需要が減ったことの影響を受けた。

上期の重点施策は若い世代の取り込みと差別化

 上期、重点的に取り組んだ施策としては低価格商品の充実がある。コロナによる景気低迷で今後も消費者の節約志向は高まるとみられており、ヤオコーでは先取りして5~6月から価格対応を実施してきた。ヤオコーでは若い子育て世代のファミリー層の取り込みが課題となっていたが、その対策も兼ね、冷凍食品やアイスクリームなど、比較的若い顧客が好んで購入する商品の価格をとくに引き下げた。

 低価格で提供できる商品を増やすためコストカットにも注力した。店舗の省力化・生産性向上のために、ヤオコー各店で取り扱う総菜などを集約して製造する「デリカ・生鮮センター」の活用を推進。これには、ヤオコーならではの総菜で、他社との差別化を図る狙いもある。たとえば生地から作ったヤオコーオリジナルのピザが人気を集めているが、これはデリカセンターで生地を製造し、店舗へ供給することで実現したもの。他社との差別化を行うことで、競争力の強化へつなげることが目的だ。実際に、SM全体でデリカの売上が落ち込む中、ヤオコーは比較的順調な回復を見せている。「(順調なデリカの回復は)われわれが提供する総菜の品質への評価ではないか」と川野澄人社長は語った。

下期は設備投資を強化、販促の工夫も不可欠

 下期は引き続きMD強化や生産性向上の取り組みも行いつつ、設備投資に注力する。11月に予定している、旗艦店の1つ「所沢北原店」(埼玉県所沢市)のリニューアルオープンを含め、新規出店5店舗、大型改装10店舗を予定している。また、ヤオコーは「八百幸成城店」(東京都調布市:2017年11月開業)を皮切りに都心部への出店拡大をめざしていたが、コロナ禍で郊外への人口流出が指摘されている現在もこの方針は変更しない見通しだ。もともと得意とする郊外エリアを抑えつつ、積極的にシェア拡大をめざす。

 また、コロナで需要が急激に高まったネットスーパーの事業拡大も急務だ。上期の売上高は対前年同期比で171%まで伸長したが、現状配送キャパシティが売上のボトルネックになっている。今後も続くとみられているネットスーパー需要への対応のため、展開エリアの拡大とともに配送インフラの整備も推進する。

 販促面では、下期はより価格を意識した消費行動が強まるとの予測から、チラシ販促は引き続き重要施策として位置付ける方針。ただし、コロナ対策として4月に行った折込チラシの中止などを通じて、エリアによってチラシへの反応が異なるという傾向もみえてきた。商圏シェア率がすでに高い郊外エリアでは、遠方からの集客効果などチラシの果たす役割は大きいが、競合が多く都心に近いエリアでは、チラシよりもEDLP(エブリデー・ロープライス)を展開する方が売上につながったという。今後はこうした地域ごとの特性も考慮しつつ、顧客層の拡大に努める。

 21年3月期通期の見通しについては、「9月からの売上動向を見る限り、当初想定していた以上に厳しくなる。ただし、対策に奇策はない。引き続き品揃えの充実と価格訴求など、売上につながる手立てに集中する」と川野社長。コロナ特需の反動が予想される22年3月期については「ハードルは高いかもしれないが、現時点では22年3月期も増収増益をめざす。無理に達成しようとすることで社内にゆがみが生じてはならないが、めざすことでより成長につながるのではないか」とも川野社長は語った。