複数のディスカウントストア(DS)業態を有する大黒天物産(岡山県/大賀昭司社長)。同社のフォーマットにはどのような特徴があるのか。地盤とする岡山市内の店舗を調査し、各業態の特徴や価格戦略を紐解いていく。
調査日:2022年10月8~10日(本文中の価格は特記がない限り調査日の本体価格)
PBの幅広さが強み
大黒天物産は、本拠とする岡山県をはじめ、中部地方から九州地方にかけて194店舗を展開する、売上高2241億円(ともに2022年5月期末時点)のDS企業だ。
同社は6つの業態を有している。旗艦フォーマットは、飲食店やドラッグストアなどとともに近隣型ショッピングセンター(NSC)を形成し、「複合型メガディスカウントランド」を標榜する大型業態「ラ・ムー」。また、店舗面積1000~1500㎡程度の「ディオ」、郊外や中小規模の商圏に対応する「ザ・大黒天」、駅前などに出店するコンビニエンスストア(CVS)型の「ら・む~マート」を中心に商圏や店舗規模に応じて出店している。本稿での調査対象はこの4業態だが、そのほかディオより小商圏に対応した「ディオマート」が2店舗、100円ショップとコラボした「バリュー100」が1店舗ある。
まずは各業態に共通する部分について見ていきたい。その1つが、ダンボールを開封してそのまま売場に並べる「ボックス陳列」だ。ローコスト運営を強みとするDSでは見慣れた手法だが、大黒天物産ではその規模が大きく、とくに大型店では迫力ある売場を構築している。ふだん一般的な食品スーパー(SM)で買物している人にとっては、少々慣れが必要かもしれない。しかし売場を見る限りでは、お客は慣れた手つきで上手に商品をピックアップしていたため、固定客が多いようだ。また、ボックス陳列はゴンドラより高さがないため圧迫感が少なく、開放感のある雰囲気を醸し出していた。
商品面では、プライベートブランド(PB)の「D-PRICE」が売場で大きな存在感を放っている。チラシもPBを中心に構成しており、豆腐から水切りネットまで幅広い。バニラアイスの「大黒様のたまご6個」(238円)、「味付け玉こんにゃく480g」(184円)、「子持ちししゃも」(1 パック198円)など品揃えも豊富で、各商品でこだわりを持たせている。DS企業でこれだけ多くのオリジナル商品を持っているチェーンは少ない。
また、PBの製造体制も注目すべき点の1つだ。他社と同様、メーカー製造の商品ももちろんあるが、自社や傘下企業で製造したり輸入したりする商品も少なくない。自社で開発体制を複数持っていることも、利益の創出に大きく貢献している。
ラ・ムー大安寺店
迫力あるボックス陳列、揚げ物は驚異の47円
ここからは各業態を個別に見ていく。まずは主力フォーマットの「ラ・ムー」だ。
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