トライアルと西友の経営統合が発表されてからわずか1カ月後の今年4月、トライアルホールディングスの社長に就任したのが、創業家出身の永田洋幸氏だ。西友買収のディールをまとめた張本人が、新生トライアルグループの指揮を執ることとなった。経営統合完了から約半年。永田社長は現状をどのように分析し、今後をどう展望しているのか。本音で語ってもらった。
この記事のキーポイント
- 西友買収をトライアル単独での成長限界と競合の動きに対する未来の課題の打ち手として捉えている
- 流通戦国時代において、ある程度の規模を持たないと淘汰されるという危機感や、リテールデータビジネスの環境を整える必要性を強く感じている
- 中長期的な「勝ち負け」を考えるのではなく、買い物体験の便利さや、値ごろでおいしい商品などお客さまへの豊かさの提供を経営の軸としている
西友買収を決意させた「危機感」
──西友買収から少し時間を経た今、あらためてその意義をどう感じていますか。
永田 相応の買収金額だったこともあり、市場では賛否両論あるのは認識しています。しかし、私としてはポジティブなディールであったとしか思っていません。
今は安定していても、トライアル単独での成長にはいずれ限界が来ます。競合も当然、さらなる成長を画策しているでしょう。そうした未来の課題に対する打ち手として、西友の買収は絶対に成し遂げるべきものでした。
1982年福岡県生まれ。2009年中国・北京にてリテール企業向けコンサルティング会社、11年米シリコンバレーにてビッグデータ分析会社を起業。
15年にトライアルホールディングスのコーポレートベンチャーに従事し、シード投資や経営支援を実施。17年より国立大学法人九州大学工学部非常勤講師。
18年に株式会社Retail AIを設立し代表取締役社長に就任。
20年よりトライアルホールディングス役員を兼任、25年4月より現職。
──トライアルとしては過去に類のない規模のディールでした。永田社長としては、どういった思いで臨んだのでしょうか。
永田 ご存じのとおり、今は流通戦国時代ともいえる状況です。これまで百貨店、コンビニエンスストア(CVS)、ドラッグストアと各業態で寡占化が進み、いよいよ食品小売にもその時がやってきました。欧米の事例を見ても明らかですが、やはりある程度の規模を持っていないと突然淘汰されてしまいます。さらにトライアルは長年、リテールデータビジネスのインフラを整え、暮らしに豊かさを提供することを確固たる目的としてきました。だからこそ、このタイミングで“面”をとっておかないと、その環境をつくれない。ここでリスクをとって前進しなければ、われわれがずっとやりたかったことが、できなくなってしまうかもしれない。
そこに西友の話が舞い込んできたのです。そのため、ある種の危機感が買収を決意させたところがあります。
──西友が持つ資産の中で、とくに魅力に感じているものは何ですか。
永田 いちばんは人材です。思った以上に、
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この記事をさらに読むと、流通業界の寡占化が進む現状に対するトライアルホールディングス社長の危機感や、西友買収で得られた人的資源の魅力、そして今後の首都圏での成長戦略とM&Aに対する考え方について理解することができます。
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