関西エリアでの競争がますます激化するなか、万代(大阪府/阿部秀行社長)は地域密着型の経営を追求し続けている。「ハイ&ロー」の価格戦略を軸にしながらも、品質と鮮度を妥協なく追求する「正しさ」を徹底し、顧客ロイヤルティを着実に高めてきた。そうした姿勢の背景にある、同社の経営哲学について、万代取締役の和久正樹氏に聞いた。
「ハイ&ロー」を生かし来店サイクルを形成
──関西エリアでの競争が激化しています。足元の経営環境をどのように分析していますか。
和久 直近1年でコスト高騰、メーカーによる値上げ、また米や野菜といった主要商品の相場高により商品単価が上昇しました。この影響で、一人あたりの買上点数はやや減少しましたが、客数は横ばいで、単価アップによって結果的に売上高は堅調に推移しています。
●1997年、万代に入社。天理店で畜産部門チーフを務めたのち、2005年オペレーション推進部トレーナー、06年スーパーバイザー、09年バイヤーを歴任。12年にデイリー部へ異動し、14年チーフバイヤー、16年シニアマネージャーに就任。20年より店舗運営部エリアマネージャー、22年に西宮浜店店長兼施設支配人を担当。23年に取締役に就任し、店舗運営部・店舗オペレーション支援部・フロントエンド部を担当。24年には、上記に加えてネット宅配事業部・営業企画部を兼務(現任)。
このような傾向は業界全体で共通して見られるものの、客数の落ち込みが顕著な店舗・企業が苦戦を強いられることは想像に難くありません。競争の厳しさが浮き彫りになっています。当社としても、現場の細やかな対応や価格戦略の工夫が、よりいっそう求められるフェーズに入ってきていると認識しています。
──そうしたなかで、あらためて万代の強みはなんだと考えますか。
和久 当社の最大の強みは「人の力」です。そして、この人の力によって柔軟に売場に変化をつけられることが、万代の特徴である「ハイ&ロー」の価格戦略を効果的に機能させていると考えています。
関西のお客さまは単に価格の安さではなく、「今日はこれだけ得した」という納得感や高揚感を重視される傾向にあります。たとえば、同じ商品を常時98円で販売するよりも、「本日限りで50円」といった強烈な訴求方法が来店動機に直結しますし、購買意欲も高まります。
こうした“お得に買えた”という実感は、万代での買物を「楽しい体験」として記憶に残し、結果的にリピーターの増加やロイヤルティの醸成につながっているのではないでしょうか。
──ハイ&ローの強みをより強く訴求するために、売場ではどのような工夫をしていますか。
和久 お客さまに「今日はなにが安いんやろ?」と期待していただけるような売場づくりを常に意識しています。たとえば万代では毎月1日の「月の市」や、毎週火曜の「大均一祭」など多彩なセールを開催。集客効果が高く、ついで買いの促進にもつながっており、結果として販売点数の底上げに寄与しています。
また、曜日ごとに売場構成や販促内容を調整することで、来店の習慣化と定着につなげています。
たとえば特定の曜日を特売日と設定することで、「今日は何曜日だから安い」と感じていただき、自然に来店サイクルを形成しているのです。
「正しさ」の追求がロイヤルティ形成に直結
──価格戦略以外で顧客ロイヤルティにつながっている要素はありますか。
和久 関西のお客さまは「安かろう、悪かろう」では納得されません。そのため、当社は品質に重きを置き、「正しい商品を、正しいサービスで、正しい価格にて提供する」ことを基本としています。
この「正しさ」を全社員が共有し、日々の業務で実践することで、お客さまの信頼を得ていると考えています。
たとえば、畜産や水産の商品調達については
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