フードデリバリーサービスなどを展開するウーバー(Uber、アメリカ/ダラ・コスロシャヒCEO)のグローサリー&リテール部門で責任者を務めるオスカー・ヤットソン氏が来日。同氏は、南米を代表する食料品デリバリーサービスプラットフォーマーである「Cornershop」を創業し、ウーバーに売却、その後現在のポジションに就いたという経歴を有している。ヤットソン氏に、ウーバーイーツジャパン(Uber Eats Japan、東京都/中川晋太郎代表)の成長戦略や日本市場の見通しについて聞いた。
22年の食料品取扱高は対前年比2倍!
――世界のウーバーイーツと比較した時、日本国内における需要をどのように見ていますか。
私は、世界のウーバーイーツの食料品デリバリーサービスを担当していますが、なかでも日本はもっとも成長のポテンシャルが大きい市場だと見ています。たとえば北米地域では他のプラットフォーマーも多数参入していますが、日本においては、取扱高と加盟する小売業者数とも、当社が市場を牽引しています。事実、2022年における、日本国内のウーバーイーツの食料品等の取扱高(売上)は、対前年比約2倍と、急成長しています。また、当社に加盟する小売業者数も毎年増えています。
向こう5~10年を予想した時、日本国内においては、ウーバーイーツが食料品配送サービスにおいてドミナントを築いているのではないでしょうか。ウーバーの全社的な戦略においても、日本を重要な市場と位置付けています。
――アフターコロナの日本の市場において、フードデリバリーサービスはどのような姿になると考えていますか?
コロナ禍でウーバーイーツの食料品デリバリーサービスは飛躍的な成長を遂げました。とくに、日本ではその傾向が顕著で、21年の食料品等の取扱高は対前年比約3倍を記録したほどです。これにはいくつかの複合的な要因があると思いますが、その一つに、日本の消費者においては食料品のデリバリーサービスが海外と比較すると、「定着していなかった」という事実が挙げられるのではないでしょうか。リアルでの買物が避けられるなか、ウーバーイーツの利便性がお客に認知され始めたのでしょう。
もちろん、コロナ禍で経験したような急成長をアフターコロナの世界においても享受できるとは思いませんが、消費者は一度経験した便利さを手放そうとは思わないはず。食料品のデリバリーは、今後も、斬新的に成長をつづけるマーケットだと分析しています。
――日本国内でウーバーイーツを利用するお客の層の特徴を教えてください。
DINKs(子供を持たない共働き夫婦)やSINKs(子供を持たない片働き主婦)、子育て家庭といった忙しい世帯です。ウーバーイーツを利用する層は、世界も日本もあまり変わりがありません。とくに、40代以下の若いお客はアプリを使った注文やオンデマンドサービスに対する抵抗がありません。
日本のお客さまがウーバーイーツに求める要素としても「価格」「セレクション」「配送の速さ」など、他国との共通点が多いです。日本国内のウーバーイーツの目下の優先事項は、できるだけ多くの小売事業者とパートナーシップを組むことです。
23年の目標は「日本全国での展開」
――デリバリーサービスの発展を受け、日本国内の食品スーパー(SM)も自社のネットスーパーやQ(クイック)コマースを開始させるなど、サービスの内製化を進めています。
食料品の配送サービスがより一般化するという意味では、競争環境の激化は当社にとっても良いことだと捉えています。ウーバーイーツが他のプラットフォーマーと比べて優れている点は主に2つです。1つ目は、小売業者にとって新たな需要を創造できる点。日本国内だけでなく、世界中で共働き世帯の増加による「買物時間の不足」という問題が起きています。彼ら・彼女たちにむけて、日常の食材を自宅まで届けるという価値を訴求することで、小売業者がこれまで獲得できなかった層のお客からの売上を期待できるのです。
2つ目は「ロジスティクス」、つまりラストワンマイル問題の解決です。ウーバーイーツは独自の配送体制の構築により、お客さまの自宅まで速く商品を届けることができます。既存の小売店では配達員の人員不足や配送体制のノウハウ不足などにより、ウーバーイーツほど、効果的に食料品を届けるのは難しいのではないでしょうか。
ウーバーイーツ食料品デリバリーの成長は斬新であり、今後も一定の速度で需要が増していくことが見込まれます。ネットスーパーでは、お米や水などの重い商品の売上構成比が高いですが、ウーバーイーツはグローバルにおいても、バナナやたまご、玉ねぎなどの野菜といった調理のための生鮮品がメーンです。
――日本のウーバーイーツにおいても、今後食料品以外のカテゴリーの販売の強化に取り組む可能性はあるのでしょうか。
私が創業した南米の食料品デリバリーサービスであるCornershopでは、当初は食料品だけでしたが、次第に化粧品や書籍、住宅関連などカテゴリーを増やしていきました。日本でも、非食品のカテゴリーの販売を始める可能性は高いと思います。しかし、現在の優先事項が、食料品であることは明言したいと思います。SMやディスカウンター、コンビニエンスストア、ドラッグストアなど、食料品を販売するさまざまな業態のパートナーを増やしていきたいですね。
――最後に、今後の目標を教えてください。
日本国内においては、23年中に日本全国でウーバーイーツの食料品デリバリーサービスを利用できる体制を整えていきます。たとえば北海道札幌市ではジェイ・アール生鮮市場(運営会社:JR北海道フレッシュキヨスク/小山俊幸社長)との協業を22年10月に開始させるなど、サービスは全国へ拡大しています。
食料品デリバリーサービスへの参入は、小売業者にとって、新たな顧客の獲得やブランドの認知という意味でも、今後より重要な位置を占めていくようになるでしょう。日本でも多くのお客さまにウーバーイーツの価値を届けていきたいですね。