下位チームが圧倒的に優位なチームを下す
サッカーの母国イングランドには「FA(The Football Association=サッカー協会)カップ」という世界でもっとも歴史のあるサッカーカップ戦がある。1871年から始まり、プロやアマチュアに関係なく、FAに登録している全チームに参加資格がある。
これに範を取ったとされるのが日本の“天皇杯”だ。正式名称を天皇杯全日本サッカー選手権という。Jリーグが発足してからは、プロチームとアマチュアチームが対戦する唯一の大会となり、1996年からは高校生年代にも門戸が開かれた。
今年も12月9日(土)の国立競技場での決勝戦に向けて熱戦が繰り広げられているところだ。
天皇杯の醍醐味は何といっても“番狂わせ”にある。圧倒的に優位と思われるチームを下位チームが倒す。判官びいきの私には何とも言えない楽しみのひとつだ。
先日、NHKBSの『サッカーの園~究極のワンプレー~』でも紹介されていたが、思い起こされるのは、2003年の船橋市立船橋高校(千葉県)だ。1回戦ではザスパ草津を1-0で、2回戦では阪南大学を1-0で退けた。3回戦では、Jリーグ王者の横浜F・マリノスと対戦。接戦となり、延長戦後も2-2のスコアで勝敗は決まらず、結局、PK戦の末、敗れ去った。
さて、話はサッカーとは少し変わるが、「企業は人なり」と言われる。
好調の裏側には、必ず「誰」かの存在がある
その一方で、強い企業体の条件は、誰がトップにきても組織が支障なく動くことだともされている。企業運営には、あまり属人的な要素はないほうが良いということだろう。
確かにその通りなのだろう。しかし、私が企業や組織を見る上で重視しているのは、その属人的な部分だ。だから、「誰」が、そのセクションの担当者やトップになったのかは、とても気になる。強いチームには、強い理由があるはずで、リードしているのは「誰」かであるからだ。
たとえば、先述の市立船橋高校には、カレン・ロバート選手、増嶋竜也選手、佐藤優也選手、鈴木修人選手など数名のJリーガーのタマゴがいた。
J2所属ながら今年の天皇杯でベスト4に進出しているロアッソ熊本には37歳になった佐藤優也選手が活躍していることも見逃せない。
“番狂わせ”とみられた試合は、実は“番狂わせ”ではなかったのであり、裏側には、その時は無名だが、相当の力を備えた選手や監督がいたことを時間が証明した。
好調な企業というのも同じで、「偶然好調」ということはほとんどなく、その裏側には、必ず、「誰」かの存在があるものだ。それが「誰」なのかを明らかにしていくことが、私たちの大事な仕事のひとつであると考えている。