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エンチョー、DCM傘下へ 予想を覆した衝撃のM&A

エンチョー(静岡県/遠藤秀男社長)は、DCMホールディングス(東京都/石黒靖規社長:以下、DCMHD)と株式交換方式で経営統合し、9月1日付で完全子会社になると発表した。それに伴い、8月28日付で上場廃止となる。

1年前から提携先を模索

エンチョー
エンチョーは9月1日付でDCMHDの完全子会社となる

 エンチョーがDCMHDと経営統合することは、多くの業界関係者が予想できなかった。今回の統合の背景について順番に見てみよう。

 まず、エンチョーの歴史を振り返ると、同社は1939年に静岡県富士市で遠藤材木店として創業、75年に現社名へ商号変更した。74年にはホームセンター(HC)事業に進出し、富士市に1号店を出店。その後静岡県を中心に多店舗展開していった。

 HCの競争が激化するなか、早くから専門店事業も手掛けており、プロショップ「ハードストック」、アウトドア専門店「SWEN」、ペット専門店「ズースクエア」などを展開。現在グループ全体で57店舗を運営している。2004年にはJASDAQ(現・東証スタンダート)市場に上場した。

HC事業以外に、プロショップやアウトドア専門店など専門店事業の構成比が高いのが特徴だ

 エンチョーの直近の業績を見ると、25年3月期は、売上高332億円、営業利益1億円、経常損失5500万円、当期純損失4800万円。同社は23年3月期から3期連続で最終損益が赤字となっており、人口減少による市場縮小や異業種も巻き込んだ競争激化、物流費・人件費等の高騰が収益を圧迫していた。

 業績低迷を受け、エンチョーは24年6月ごろから他社との資本業務提携を模索しており、店舗ドミナント地域(静岡県)の市場環境や物流効率化などを勘案してDCMに経営統合を打診したとされる。

 一方のDCM側も、静岡県内での店舗網拡大によるシェア向上とスケールメリット獲得に相乗効果を見込み、経営統合に合意した。DCMはプライベートブランド(PB)商品のエンチョー店舗への供給やシステム・物流網の統合によるコスト削減、店舗・本部機能の合理化、人材交流によるノウハウ共有など、多方面のシナジー創出を期待している。

 統合後は調達力強化による商品値入れ改善や販売促進効果の拡大、さらには中部エリア特性に応じた戦略展開と本部コスト圧縮も図る見通しである。

コーナンはどう動くか?

 成熟市場で合従連衡が活発化するなか、近年HC業界の再編の受け皿となっていたのはDCMHDとコーナン商事(大阪府/疋田直太郎社長)の2社である。エンチョーは22年6月からコーナン商事のPB商品の供給を受けていた。

 そのことから、「エンチョーは将来的にコーナングループに参入するのではないか」とみる業界関係者もいた。実際に、コーナン商事からPB供給を受けていたホームインプルーブメントひろせ(大分県/村上文彦社長)が完全子会社になるという事例もあったからだ。

 DCMHDが4月に発表した26年2月期の売上高の見込みは対前期比1.7%増の5536億円。ここにエンチョーの売上高約330億円が加わると約5800億円となる。

 HC首位のカインズの25年2月期売上高が5738億円であることから、順位が入れ替わる可能性もある。コーナン商事も25年2月期に初めて5000億円を突破しており、上位3社による首位争いが熾し れ烈つ化している。

 今後、エンチョーはどのようになるのだろうか。直近でDCMHDと経営統合したケーヨーの例を見ると、まず数年間かけて、全店舗で改装を行い、棚割り、商品を統一していく。それらが一巡する見込みが立ったタイミングで、事業会社DCM(東京都/石黒靖規社長)に吸収合併され、屋号も「DCM」へと順次切り替えていった。静岡県内にはDCM店舗が30店舗あり競合する店舗が多いものの、エンチョーも同様の方向性で統合される可能性が高い。

 一方、これまでPB供給で協業していたコーナン商事は静岡県内にHCと「コーナンPRO」を合わせて5店舗のみの展開にとどまっていた。今回の統合で協業関係がなくなったことから、今後、静岡県に積極出店していく可能性も考えられる。

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