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第101回 今年の新入社員の30年後は「全員管理職」?人口減時代のビジネスとは

今の50代が生まれた時、年間出生数は約200万人であった。この世代は団塊ジュニアやバブル入社組と呼ばれ、会社組織に「大きな塊」として存在する。順調に出世していれば部長や執行役員などの肩書きが付いている世代でもある。では、今後、この状況はどのようになるのか。今回はこの問題を掘り下げたい。

Melpomenem/istock

看過出来ない人口の減り方

 管理職という立場の50代、成長の乏しい日本経済においては管理職でなくても正社員であれば終身雇用制に守られ一定の処遇を享受する。もちろん、企業規模にもよるが、日本の高度成長を支えてきた諸先輩が築き上げた城壁に守られここまで来た。

 しかし、これからはそんな悠長なことを言っていられない時代になる。その理由は人口減少の速度だ。

 今の50代が生まれた時、年間出生数は約200万人だったと前述したが、それと比較して、今年の新入社員(2001年生まれ)が生まれた時の年間出生数はわずか100万人だ。と言うことは、彼らが50歳になる頃には大学全入時代ならぬ「全員管理職時代」になる。

 さすがにそれは現実的では無く、その頃には管理職と一般社員と言ったカテゴリーは無くなり、組織構造や社員の役割責任も変わり、マネジメントの言葉が表す意味も変わるだろう。その時、社員皆すべてがプレイヤーになっているのか、あるいは知的業務はAIが担い、AIができない肉体労働だけが人間の役割になる社会すら予想できる。

 

人出不足の行方

 今、どこの企業も人材不足に悩む。企業の人事担当に会うと時候の挨拶のように「西山さん、誰かいい人いたら紹介して」と言われる。しかし、前項の通り、絶対的な人数が減少している今、この状況の改善の余地は薄い。

 しかし、ショッピングセンター(SC)をはじめとする商業施設や商業用不動産の増加は続く。福岡、広島、神戸、大阪、名古屋、東京、札幌、その他地方圏においても都市開発は進んでおり、リニア新幹線や整備新幹線と交通インフラの建設も止まることはなく、今後、この維持管理、保守管理には当然に人の手が必要になる。したがって今のやり方を続けていては人出不足が解消することは望めないだろう。

一定数の商業テナントが集積されるSCの場合、現地に運営管理事務所が設置され、そこには日々の運営を管理する人員が常駐する。その配置人数は、企業によっても異なるが、彼らの担う業務は、日々の売上金管理や日報チェック、賃料清算などの経理業務、集客や売上増進のための販売促進業務、保安警備や環境保全のような管理業務、保守管理や修繕などの管理業務、店舗管理や顧客対応などの営業管理業務など多岐に渡り、その業務全体を俯瞰するとかなりの労働集約産業である。

 これら業務は比較的若年層が担当するが、ここにも前段で解説した人口減少によって大きく見直しが必要になる。

あらゆるところで起こる定員割れ
3割社会の到来

 8月14日の日経新聞で車の整備士のなり手不足と自動車整備学校の入学者数の減少グラフが掲載され、その深刻さを指摘しているが、そもそも子供の絶対数が減っていることから率が変わらなければ数は減少するしかない。同日の紙面では給与の低さからキャリア官僚が減少している記事もあるが、これも同様である。

 この問題は、じわじわとやってくる。まるでゆでガエルの状態だが、今から50年後、間違いなく3割社会は到来する。

 学校も働き手も市場の規模も3割の社会。企業も同じ事業を同じように続けていれば売上は3割になり、企業規模は3割になり、ポストも3割となる。その対策のために高齢者の就業や女性の社会進出やインバウンド需要を声高に叫んでいるもののそれにも限界があり、オーバーツーリーズムも世界的な問題になっている。

 したがって、現在の産業とそれに紐づく業務は3割になることを覚悟し、新たな問題や課題を解決する産業を生み出すことで豊かに暮らす国へ転換し、日本列島改造論から続く社会構造の衣替えが必要な時期に、今、来ている。

 

西山貴仁
株式会社SC&パートナーズ 代表取締役

小田原市商業戦略推進アドバイザー、SCアカデミー指導教授、SC経営士、宅地建物取引士、(一社)日本SC協会会員、青山学院大学経済学部卒