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ディスカウンティングの意味

廉価政策とEDLPの違い

 仕入れ価格高騰の今、“値上げ”が経営の最重要課題だ。コロナパンデミックの3年間で国際的に偏る消費者の需要に対応しきれなくなり、それ以前までなんとかバランスを保ちつながっていたグローバルなサプライチェーンが所々で切断された。それにより商品原価が高騰していることが大きな原因である。こうしたなか各社、売価を上げざるを得ないのである。

 この苦境は流通企業にとって一見平等に見えなくもないが実はそうではない。単なる「激安販売」や実質の伴わない「廉価政策」の企業と、EDLP(エブリデー・ロープライス)販売が可能な仕組みを構築した企業とでは本質がまるで違うからである。そのため値上げ回避の手段は異次元であり、値上げする品種、品目の条件も、値上げ幅も違ってくる。

 最近テレビのニュース番組がしばしば値上げ問題を取り上げるが、メディア露出度の高いある激安スーパーマーケット(SM)の店主が店頭でテレビ局の取材に応じ、「お客さまのために何とか値上げをしないで頑張っています」と胸を張って誇らしげに語った。その後のインタビュアーからの質問に答えた内容が衝撃的だった。

仕入れ価格高騰の今、“値上げ”が経営の最重要課題だ。(i-stock/Hakase_)

 周知のとおり物価高に伴い政府が誘導している「賃上げ」対策だが、それにはどう対処するのかと聞かれたところ、「価格維持のために利益率が減り、原資がないから従業員の賃上げはできない」と言う。加えて「従業員だって店がつぶれて職を失うより賃金維持でももらえるほうがいいはずだ」と。

 経営者として、あるまじき発言であるが、激安販売とはそういうものだ。仕入れ価格が上がればそのぶんの利益が減るから安さは継続不能に陥る。それがわかっていて値下げを強行するのだから従業員の賃上げどころではないのは本音だろう。しかしそれなら従業員は賃金の高い企業に再就職するだけだ。なにしろ人手不足なのだから。

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