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決してゼロにはならない“ミス”と正確であることが当たり前の小売業

先日、ある地方で1080円の商品を購入した。ふだんは、レシートと売価を照合することなどほとんどないのだが、帰宅後にたまたますり合わせてみると、その商品の値段が1382円と記載されていた。どうしたものかと購入したお店に電話を入れてみた。

i-stock/Rossella De Berti

正確であることが当たり前の小売業

 「誤りがあるかもしれない」旨を話すと、「商品名」とレシートに記されている「レジ番号」「レシート番号」を聞かれた。その後一旦電話を切り、10分ほど待っていると店長からコールバックがあった。

 「確かにお客様のおっしゃる通りでした」とミスを認め丁寧に詫びた上、「これから自宅に行きたい」と言う。都内在住であることを説明して訪問を固辞すると、店長は「では、差額を現金書留ですぐに送ります」と言って電話を切った。その2日後には、差額の302円と電話代として100円、誰でも読める大きな文字の詫び状の3点が届いた。送料は522円だった。詫び状には、今回のミスの原因と対策までしっかり記されていた。

 小売業は本当に大変な商売だと改めて実感する。100%正確であることが当たり前だからだ。

ゼロにはできないミスにどう対応するか

 しかし、ミスとは必ず起こるもの。ミスやエラー、欠陥品などの発生確率を最小限にするためのフレームワーク「シックス・シグマ」の世界でも、発生確率の目標が100万回中3〜4回となっている通り、ゼロにはならないことが前提だ。

 一見、分母である100万回は天文学的な数字に見える。だが、少し考えてみればそうではないことがわかる。たとえば食品スーパーの場合、1日3000人のレジ通過客数がある店舗であれば年間では100万人超(3000人×365日=109万5000人)のお客が商品を購入している。逆にいえば、「シックス・シグマ」を徹底したとしてもレジ業務においては、1店舗で年間数度以上のミスが確実に発生することになる。

 それらのミスを限りなくゼロに近づけることは各社各店舗ともに努めているところであろうが、皆無にすることはたぶんできない。いま流行りの無人決済システムも同様だ。ということは、小売業側としてはミスは起こるものであることを前提とし、起こった際の対応をしっかり決めて徹底させる必要がある。

 小売業の業務はレジ以外にもたくさん存在する。年間100万回を超える作業はもちろん、3か月程度で100万回を突破するものもあるに違いない。だからこそ、転んだ後の処理策やマニュアルをしっかり用意し、浸透させておきたい。

 一方、巷では相変わらず“モンスタークレイマー”が幅を利かせているようだが、意図してミスを犯す企業や人間はいない。お客の方もそのことを知ったうえで、もう少し寛容に受け止めてほしいと切に願う。