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22年2月期上期は増収営業減益のスギHD 杉浦克典社長は決算説明会で何を語ったか?

スギホールディングス(愛知県)の2022年2月期第2四半期業績(連結)は、売上高は対前期比4.0%増の3149億円、営業利益は対前期比13.6%減の161億円と増収・営業減益だった。決算説明会における杉浦克典社長の発言を抄録する。

調剤売上高は2ケタ成長、調剤併設率は85.2%

 経営環境の厳しさは増すものの、増収基調を維持することができた。3~8月における日本経済はワクチン接種が進む一方で、感染者の急増に伴う緊急事態宣言の発出など、依然として先行き不透明な状況は続いている。

 こうした中、当社は地域社会のインフラを支えるべく、感染予防対策を行いながら営業活動を継続し、前年以上にお客さま、患者さまにご利用いただけたことで、売上高は対前期比4.0%増となった。増収の主な要因は新規出店による店舗数の増加と、調剤売上が堅調に推移したことが挙げられる。調剤併設店舗の出店と既存店への調剤併設推進により、処方せん枚数は同21.0%増、調剤売上は同14.0%増の652億円と、2ケタ増で伸長した。物販は前年に需要が拡大した衛生用品の反動減、化粧品の需要減などにより、売上高は同1.4%増にとどまった。

 営業利益は同13.6%減の161億円となった。「スギ薬局公式アプリ」などのデジタル会員獲得とデジタル販促による費用対効果の改善、店舗間の人員配置の見直しなどを進めたが、季節商品が低調に推移したことや、調剤事業の成長を見据えた採用強化に伴う人件費、調剤薬仕入れに伴う消費税、キャッシュレス決済増加に伴う手数料などの増加が利益を押し下げた要因だ。なお経常利益と当期純利益についても営業利益の下振れをカバーしきれず、前年実績を下回る結果となった。

 出店状況では、22年2月期第2四半期末までに関東13、中部13、関西16、北陸8の計50店舗を新規出店した一方で6店舗を退店。期末店舗数は関東387、中部516、関⻄490、北陸42の計1435店舗となった。「スギ薬局」事業における調剤併設率は85.2%。今後もドミナント構築とシェア向上をめざし、引き続き既存の店舗展開エリアへの出店を進める。

「トータルヘルスケア戦略」を推進中

スギホールディングス 杉浦克典社長

 上期は増収減益となったが、成長に向けた取り組みを着実に進めている。

 まずは当社が目指している姿を簡単に説明したい。コロナ禍の中で多くの皆さまが健康の大切さ、ありがたさを実感されていることと思う。人が生まれてから亡くなるまで、さまざまなかたちで医療や薬とのかかわりがある。健康的な生活を送っている人が予防や未病などのセルフケアとしてかかわる期間、病気を発症し急性期や慢性期の治療に向き合う医療・服薬期間、そして介護・生活支援期間など、健康ステージによってもかかわりかたに濃淡がある。

 当社グループはお客さま、患者さまがどのような健康状態であっても接点を持ち、地域に密着しながら一人ひとりの状態に合わせて、リアルとデジタルを融合させた最適な商品・サービスをする「トータルヘルスケア戦略」を推進している。お客さまに満足していただき、お客さまの生涯価値を向上し続けていくためには、当社グループだけではなく、自治体や健康保険組合、医療・介護従事者などとの連携も必要だ。健康をキーワードに同じ志を持つ方々とのかかわりや連携を通じて、つながりや信頼を大切にしたヘルスケアネットワークを構築し、健康管理から健康増進、病気予防に至るまで一貫したケアサイクルを実現する地域になくてはならないドラッグストアをめざしている。

以上を踏まえて、上期の主な取り組みとして、①既存店の活性化、②製・配・販の連携、③ESGの取り組みについて紹介したい。

 1つめの既存店の活性化についてだが、先ほど説明したとおり調剤事業が2ケタ増で伸長し、今後も成長が続く見通しだ。こうした中で待合室の限られたスペース、設備では患者さまにご不便をおかけし、また調剤室内の動線が非効率になっているケースがある。患者さまに快適にご利用いただけるよう待合室を広げ、調剤室での薬剤師、医療事務の動線を改善する改装を進めている。そして物販を利用しているお客さまにも調剤をさらに利用していただける施策を進める。

 その物販においても改装を進めている。とくにお客さまの健康をサポートするうえで「食」は重要な要素であり、購買頻度の高い食品を強化することで、多頻度で接点を持たせていただけると考えている。地域のニーズを取り込み、お客さまの満足度を高めることが会社の成長につながるので、下期以降も既存店の改装、活性化を推進していく。

「サプライチェーン イノベーション大賞2021」で大賞を受賞

 2つめの製・配・販の連携についてだが、当社はライオン(東京都)さま、PALTAC(大阪府)さまとの連名で、「サプライチェーン イノベーション大賞2021」において、オープンな製・配・販の連携で実現した在庫の適正化、返品削減に関する取り組みで大賞を受賞した。メーカー、卸、小売の三者が仮に1つの会社であったとして、地域の皆さまに提供する価値をどのように高めることができるのか、あるいは非効率なものをどこまで改善できるのか、こういった視点で取り組みを進めてきたものだ。

 当社では情報の早期共有、店舗別の販売・配架計画、売上拡大と適正在庫、店舗・商品別の在庫管理に課題があり、機会ロスや無駄な返品が発生していた。とくに返品は流通業における商慣習として問題は大きく、メーカー、卸、小売それぞれでコストがかかる。また安全性の観点からも最終的に産業廃棄物として処分することになり、循環型社会の実現の妨げにもなっている。これらの課題解決に向けて、発売準備期、発売拡大期、縮小・終売期に応じた計画を共有して取り組みを進めた結果、「サプライチェーン イノベーション大賞2021」で評価された。

 今後のさらなる製・配・販連携のカギはDX(デジタル・トランスフォーメーション)にあると考えている。当社の「スギ薬局アプリ」会員数が順調に推移し、直近で700万ダウンロードを超えたことに加え、当社内でさまざまなデータ連携を可能とするインフラが整備され、協業パートナーさまとともにデジタルマーケティングやCRM(Customer Relationship Management:顧客関係管理)領域へ積極的に打って出る時期に入ってきた。今後も製・配・販連携の対象カテゴリーを広げ、新たなお取引さまとも協力しながら、サスティナブルな地球環境の存続に向けた取り組みを進めていく。

 3つめのESGの取り組みについてだが、定時株主総会終了後に統合報告書を発行し、当社グループの事業やサスティナビリティに対する考え方を示した。当社グループの存在意義、資本、強みを活用してどのように価値を生み出し、ステークホルダーの価値向上につなげているかを示したものだ。

 当社の創業の理念である親切・誠実・信頼をベースに、少子高齢化、地球環境問題などの社会課題の深刻化や価値の多様性、消費行動の変化など価値観の変化といった社会の変化を見据え、価値を生み出す事業活動を通じて、地域社会への貢献をめざしている。価値創造の源泉となる当社グループの最大の強みとして、薬剤師、登録販売者、管理栄養士、ビューティアドバイザーといった多数の専門家人材を有している。これらの人材を中心に顧客生涯価値の最大化を図るため、DXを進めながら物販、調剤を中心に事業活動を行っている。さらには協業パートナーと新たな事業・サービスの展開を進め、お客さまの新たな価値を創造し、地域社会から支持される企業へと成長し、あらゆる人々が幸せで笑顔あふれる社会の実現をめざしている。

 いまだ新型コロナウイルス感染症の猛威は衰えず予断を許さない状況が続き、あらためてドラッグストアの社会的インフラとしての役割の大きさ、責任を感じている。そのような中、6月から愛知県にある藤田医科大学病院さまでのコロナワクチン調製をご支援させていただいている。大規模接種、職域接種でのスムーズなワクチン接種を進めるうえでもワクチン調製は重要な工程であり、当社の薬剤師がご支援させていただけることをうれしく思っている。

 このほかに下期になるが、本社をコロナワクチン接種会場として、愛知県大府市さまに提供し、大府市さまが進める民間事業者を活用した大規模集団接種に協力。当社の薬剤師がコロナワクチン調製などを支援している。今後も私たちが果たすべき責任を全うするためにも、従業員が安心して業務を行うことができる環境を提供し、地域の皆さまの安心・安全な暮らしをご支援させていただけるよう取り組んでいく。