関西でもロピア旋風!驚異的な売上高伸び率
9月中旬、平日の正午前。ホームセンター2階にある店舗に行くと、折り返して駐車場スペースまで続いている行列が目に飛び込んでくる。行列に並び、松茸や栗、梨など旬の青果物が店頭に積まれているのを眺めながら店内に入る。狭めの通路にはピーマンやキュウリ、トマトがダイナミックに陳列されていて、突き当たりの壁面ではシャインマスカットの特売を実施。人だかりで通路の先に進めない──。
オープンしたばかりの「ロピア大和郡山店」(奈良県大和郡山市)で見た光景だ。2020年9月に関西1号店を出店し、業界中の注目を集めたロピア(神奈川県/高木勇輔代表)。同社はその後も出店を重ね、21年9月現在、大阪・兵庫・奈良の3県に6店舗を展開する。
出店の勢いは、まさに怒涛の一言だ。コロナ禍に見舞われたなか、21年2月期は同社史上最多の11店舗を出店、22年2月期に入ってからもすでに6店舗をオープンしている。その中には茨城1号店の「トナリエクレオ店」(茨城県つくば市)、奈良1号店の「ミ・ナーラ店」(奈良県奈良市)も含まれる。
売上高の伸びも凄まじい(図表参照)。21年2月期の売上高は2068億円と、いなげや(東京都/本杉吉員社長)の単体売上高(2139億円:21年3月期実績)に迫る規模となった。1期前が売上高1595億円だったことを踏まえると、1年間で約500億円もの売上高を積み増した計算で、前期比較では29.7%増と驚異的な伸び率を示している。20~21年は食品スーパー(SM)全体が好調だったことを加味しても、ロピアの成長スピードは頭一つ抜けているといっていい。
そんなロピアが見据えるのは「31年度のグループ売上高1兆円」の達成だ。近年のSM業界ではほとんど見ることがなくなった“超”強気な目標だが、ロピアの快進撃を見ていると、実現は決して不可能ではないと思わされる。
「マイナスポイント」があってもお客に選ばれる店づくり
本特集では、さまざまな分野の専門家にロピアの強さを分析してもらっている。同社が強みとするのは、なんといっても圧倒的な安さをベースとした高い集客力だ。
冒頭の大和郡山店に買物に来ていたお客の1人に話を聞くと、「(大和郡山店がオープンしたので)ミ・ナーラ店まで買物に行かなくて済む」と教えてくれた。大和郡山店とミ・ナーラ店は直線距離で7.5kmほど離れており、クルマ移動でも30分以上かかる。当然、その間には多くのSMや商業施設があるが、お客はわざわざロピアに来て買物をするのである。
それだけではない。ロピアの取り扱いアイテムは基本的に大容量であり、単身世帯の需要を想定した少量・個食タイプの商品は少ない。品揃えも絞られており、たとえば青果のカット野菜やカットフルーツなどSM各社が近年力を入れてきた商品政策にも消極的だ。
加えて、ロピアは一部の店舗を除いてクレジットカードをはじめとしたキャッシュレス決済は利用できず、現金決済を基本としている。また、ピーク時に店舗に行けば、店舗奥側壁面の主通路に達するほどの長いレジ待ち行列に並ばなければならない。そうした「マイナスポイント」があってもなお、お客がわざわざ行きたいと思う店がロピアなのだ。
単なる安売りではない!「1品単価」に注目
では、どのようにしてロピアは安さを実現しているのか。専門家らの調査で見えてきたのは、同社の生産性の高さだ。
看板部門である精肉を例に取ってみると、ロピアの精肉売場では、一般的なSMでよく見られる「スライス」「薄切り」といった品名の商品の取り扱いは極端に少なく、作業効率の高い「切り落とし」に加工を集中させている。
また、少量パックを扱わず、大容量パック中心の品揃えであることも、生産性アップに大きく貢献していることだろう。そのほかにも、売場では販売点数が多いアイテムを作業場からの動線に近いスペース、あるいはマグネットとなる場所に配置するといった工夫も見られた。詳しくは各部門の調査で解説しているが、こうした生産性を追求する数々の取り組みが圧倒的な安売りの源泉となっているのは間違いない。
もう少し踏み込んでいくと、ロピアの価格政策が単なる安売りではないことも見えてくる。注目したいのは、ロピアの「1品単価」の高さだ。
前述のとおり、ロピアの品揃えは大容量が多く、1品単価アップに大きく寄与している。また、たとえば鮮魚売場の人気商品である握り寿司は1パック9貫入りで999円という価格設定となっている。大ぶりにカットされたネタが特徴の値ごろが感じられる同商品だが、決して安いというわけではなく、付加価値商品の位置づけとみていい。そのほかにも、日配売場ではバンドル販売を積極展開。集客部門の青果でも、価格訴求品のラインアップの中に単価1000円を超えるような商品を差し込んでいる。
これらはいずれも1品単価を上げる意図があるとみられ、ロピアの売場では同様の工夫が随所に見られる。実際に、本特集で実施した消費者調査でも、ほかのチェーンと比べてロピアの平均1点単価が高いというデータが得られている。この1品単価の高さこそ、驚異的な売上成長の原動力であり、儲けの源泉にもなっているとみられる。
SPAに向かうロピア、今冬に京都進出か
さて本特集では、“ロピア対策”についても考察している。圧倒的な集客力を持つロピアは確かに自店を脅かす存在ではあるものの、対抗不可能というわけでもなさそうだ。実際に神奈川県の秦野エリアでは、埼玉県を本拠とするベルク(原島一誠社長)が、ロピアとほぼ同時期にオープンした店舗において、巧みな価格対応により多くのお客から支持を集めている。
ロピアの店づくりや商品政策は、生産性や作業効率のアップを目的に“割り切った”部分も多い。ロピアの強さを分析していけば、自店でも実践可能な対抗策も見えてくるはずだ。本特集内の部門別調査でも、専門家らが“ロピア対策”を解説しているので参照されたい。
最後に、ロピアの直近の動きを確認しておきたい。最近の同社にはSPA(製造小売)に向かう動きが観測されている。21年に入り、山梨県で鶏肉の加工販売を手掛ける甲斐食産、千葉県で酪農業を営む斉藤牧場などをグループに加えたほか、「ロピアファーム」という名の新法人を立ち上げている。この新法人がグループ内でどのような役割を果たすのかは明らかにされていないが、法人名からしてアグリビジネスに関連した企業であることは間違いなさそうだ。
これら新グループ会社はロピアのSM事業にどのような影響をもたらすのか。最近のロピアの売場を見ていると、16年に傘下に入った総菜製造の利恵産業は、すでにロピア総菜部門においてなくてはならない存在となっている。また、調味料コーナーでは18年にグループに加わった醸造メーカー、丸越醸造の商品ラインアップが大幅に増えている。さらなる製造機能の取り込みにより、商品力がいっそう強化されることが予想される。
さらに本特集の取材中、ロピアが21年冬に京都府内に新規出店するという情報をキャッチした。公式発表はされていないものの、「京都」駅近くの好立地に出店する、とすでに関西の小売関係者の間で注目の的となっている。また、真偽は定かではないが、東海地区へ出店するという噂もある。
関西進出で衝撃を与えた20年に引き続き、話題に事欠かないロピア。21年のSM業界も同社が話題の中心にいることになりそうだ。
会社概要
創業年月日 | 1971年4月28日 |
本店所在地 | 〒212-0016 神奈川県川崎市幸区南幸町2-9 |
代表者 | 高木勇輔 代表取締役 |
総店舗数 | 62店舗(2021年9月時点) |
関連会社 | ユーラス、川崎南部青果、利恵産業、丸越醸造、川崎丸魚、 eatopia、斉藤牧場、甲斐食産、ファインド大宜見、ロピアファーム |
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