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ユニー代表取締役社長 佐古 則男
衣住がけん引しアピタ好調 2020年度、営業利益200億円めざす

総合スーパー(GMS)や食品スーパー(SM)を展開するユニー(愛知県)。店舗の活性化を進めるなか、昨年、ユニー・ファミリーマートホールディングス(東京都/髙柳浩二社長)がドンキホーテホールディングス(東京都/大原孝治社長)と資本・業務提携したのを背景に、ドン・キホーテのノウハウを取り入れた新たな店づくりをスタート。「2020年2月期以降、攻めに転じる」という、同社の佐古則男社長に事業展望や課題などを聞いた。

在庫処分し売場の鮮度上げる

──2018年2月期をどのように振り返りますか。

さこ・のりお●1957年(昭和32年)7月、岐阜県下呂市生まれ。80年3月明治大学卒業、ユニー入社。2001年アピタ中津川店長。02年経営政策室マーケティング担当部長。05年経営政策室長。06年執行役員。08年取締役、執行役員。10年営業統括本部長。11年常務取締役、常務執行役員。12年営業統括本部長兼関連事業本部長。12年専務取締役、専務執行役員。13年代表取締役社長(現任)。

佐古 前期のスローガンは「原点回帰」、テーマに「個店経営」と「店舗の魅力」を掲げ、事業展開しました。「原点」とは、「商品」「52週マーチャンダイジング」「品揃え」「売場環境」「従業員のおもてなし」といった5つの分野を追求するもので、当社が重視してきた施策です。

 そのもと具体的なカテゴリーの売上高に目を向けると、衣料品は昨春、気温の影響で夏あたりまで振るいませんでしたが、8月に潮目が変わりました。以降、秋物、冬物の季節商品は順調でした。食品も同様に、第2四半期あたりまでは芳しくなかったものの、秋口から上向きはじめました。とくに名古屋市内の食品スーパー(SM)企業が苦戦するなか、当社はかなり善戦したと自負しています。

 今期はまだ決算を出していませんが、通期では、不採算店を閉めているため減収の一方、営業利益は増益、既存店は前年並みで着地する見込みです。

──衣料品は昨年9月以降、住関連は同11月以降、既存店ベースで対前年実績をクリアし続けており、非常に好調です。どのような取り組みをしているのですか。

佐古 16年9月にユニー・ファミリーマートホールディングスが発足しましたが、それを前に同年8月から動きの悪い在庫の処分に着手しました。衣料品、住居関連商品について、それぞれ10~15%の削減です。また売れないと見た商品は、早いタイミングで値下げするなどの施策を続けた結果、徐々に売上が伸びました。前期の初春は、振るわなかったといいましたが、回復の予兆はありました。そこへ売れ筋商品を投入して売場の鮮度を上げる手法が功を奏したと分析しています。

──何かヒット商品に恵まれたというわけでもないのですね。

佐古 そうです。ただし社内で決めた「売り込み商品」を、全店で積極的に売る施策に、この4年来、取り組んでいます。衣料品で25%、住関15%、食品10%と、それぞれ「売り込み商品」の売上高構成比の目標を決め、販売するものです。当初、目標の半分も行かなかったのですが、売り方を工夫したことで現在はいずれも達成しています。在庫処分、さらに売り込みの施策で身につけた販売力が相まってうまく回り出したかたちです。

衣料品、住関、食品で、社内で決めた「売り込み商品」を積極的に売り込む施策に取り組む

──さて19年2月期(今期)がスタートしていますが、どのような方針で事業を展開しますか。

佐古 現在、18年2月期を初年度とし4年間を期間とする中期経営計画に取り組んでいます。今期含め最初の2年間は「守り」に徹し、不採算店舗や事業の整理を進めていきます。来期後半の2年間は「攻め」に転じ、積極的に事業拡大を図ります。これまでの最高益は88年度の営業利益186億円ですが、21年2月期にはそれを超える200億円をめざします。達成するためにも、今期が重要な年度だと気を引き締めています。

 先ほどの売り込み商品について言えば、衣住食でそれぞれ構成比を35%、20%、15%へ引き上げ、さらに販売力強化に努めます。一方で、“ 売らんかな”の精神が行き過ぎるとお客さまにとっては魅力のない売場になります。お客さまの買いたい商品を品揃えし、それを売り込んでいくということに力を注いでいきます。

改装で売上高1.5倍をめざす

──ユニーはGMSのアピタ、ミニGMS、SMのピアゴを展開しています。それら業態別の状況と、それを踏まえた今後の施策について教えてください。

佐古 商勢圏では競争が激化するなか、規模の小さいピアゴは商圏が狭まっており、やや厳しいのが現状です。食品の売上高構成比が高く、青果や精肉といった生鮮食品の相場高もあり、利益確保が難しい。一方、衣料品、住関品が順調、広域商圏のアピタの方が比較的、好調です。その意味でGMSは、今後もさらに伸びしろがあると見ています。

──その商圏が狭まっているピアゴの打開策は?

佐古 それがドンキさんとの取り組みで、現在、両グループのノウハウを結集したダブルネーム業態店を開発しています。

「商圏が狭まって厳しいピアゴ店舗をダブルネーム店舗に転換。売上を1.5倍、営業利益を2倍にする」

──その商圏が狭まっているピアゴの打開策は?

佐古 それがドンキさんとの取り組みで、現在、両グループのノウハウを結集したダブルネーム業態店を開発しています。

その第一弾として、当社の「ピアゴ大口」(神奈川県横浜市)を今年2月23日、「MEGA ドン・キホーテ UNY 大口店」としてオープンしました。さらに今年3月9日には「アピタ東海通」(愛知県名古屋市)を「MEGAドン・キホーテUNY東海通店」に改装しました。いずれも昨年11月に設立したUDリテール(東京都/梅本稔社長)が運営しています。その後、3月16日に「MEGA ドン・キホーテ UNY 座間店」(神奈川県座間市)と「MEGA ドン・キホーテ UNY 星川店」(三重県桑名市)、同月23日には「MEGA ドン・キホーテUNY 豊田元町店」(愛知県豊田市)、同月30日に「MEGA ドン・キホーテ UNY国府店」(愛知県豊川市)を開業しました。6店中4店舗がピアゴで、2店舗は実験の意味でアピタも業態転換しています。

──リニューアルのポイントは?

佐古 買い物の楽しさを感じられるような売場、店づくりです。スローガンに掲げるのは「NEW UNY」、「意識を変え、売場を変え、店舗を変える」がサブタイトルです。現代はモノがあふれ、ショッピングの喜びが薄れている一面があります。実際、当社の店舗も、実需に応える売場の色合いが強まっている。それをもう一度、楽しく買い物ができるような売場にしたい。その点、ドンキさんの店舗はとても参考になっています。

──新業態店への改装で商圏の拡大を図るわけですね。売上や利益ベースではどの程度の効果を見込んでいますか。

佐古 リニューアル後、数年後に最低でも売上高を1.5倍、営業利益は2倍にしたい。そのため、当社従業員をドン・キホーテ店舗に派遣、これまでに計60人ほどが考え方や具体的なノウハウを学んでいます。今期はこれら施策により、ダブルネーム業態店でしっかり成果を出したい。とくに衣料品、住関品を伸ばし、そこで確保した利益を原資として食品を低価格で提供、さらに集客するといった好循環を実現させたいと思います。

──伸びしろがあるというアピタ店舗については、どういう施策で臨みますか?

佐古 これは主に来期からの「攻め」の2年で集中的に行います。売場づくりのポイントは“提案型”。衣料、住関という部門の垣根を超えた売場によって、楽しいライフスタイルを提案する店づくりを行います。すでに一部店舗では検討が始まっています。それら店はいずれも1階に食品と住関、2階に衣料品売場を配置していますが、改装により住関を2階に上げ、衣料品とミックスした売場をつくります。たとえばキッチン用品とレディース衣料を組み合わせるといった具合です。今後、そういった手法に磨きをかけ、当社独自の成功パターン構築を進めます。

 20年2月期から改装に力を入れ、アピタ、ピアゴ合わせて5年間で100店のテコ入れをする計画です。そこではドンキさんと連携した改装も行いますが、当社独自のリニューアルも進めます。

既存店を改装、ドンキとのダブルネーム業態1号店としてオープンした「MEGA ドン・キホーテ UNY 大口店」

6つのカテゴリーで品揃えを拡大

──では、商品政策について。ライフスタイル提案型の売場づくりをするなか、どんなカテゴリーに力を入れますか。

佐古 重点カテゴリーは、食品では精肉と総菜、住関ではヘルス&ビューティとキッチン、衣料品ではインナー、靴。この6つのカテゴリーは品揃えを最大限に広げ、魅力的な売場づくりをします。いずれも中期的に売上高が落ちにくいカテゴリーだと見ています。それ以外でも充実したいものはありますが、強弱をつけ拡充を図っていきます。

──キッチンの市場は今後も伸長が期待できると、業態の垣根を超え他社も強化しています。

佐古 当社では、SPA(製造小売)の手法により、売れ筋については独自商品を投入します。ただ品揃えとしては松竹梅が必要で、とくに松は魅力的なブランドを取り入れます。独自商品は、ポピュラープライスやロアポピュラープライスのラインに投入。キッチンに力を入れるといっても用品全般でなく、皿やフライパンはやるけれど、ガラスコップはやらないなど、品目を絞って展開します。

──独自商品といえば、ユニー、イズミヤ(大阪府/四條晴也社長)、フジ(愛媛県/尾﨑英雄社長)で共同開発するプライベートブランド(PB)の「スタイルワン」「プライムワン」があります。

佐古 他社にはない商品として今後も力を入れていきます。幅広いカテゴリーがありますが、これからは野菜をはじめ、生鮮食品の開発も検討します。産地と連携、健康志向をはじめ付加価値型の商品を増やしたい。

──近年、新しいプライベートブランド(PB)が売場で見られます。

佐古 「デイジーラボ」というブランドで、徐々に商品を増やしています。手掛けているのは、全員が女性のタスクチーム。これまで住関品を中心に、約500アイテムの商品を開発しました。17年9月には「easy care」シリーズとして、秋冬用のオリジナルセーターや寝具、ボトル等24アイテムを発売、商品のカテゴリーも徐々に広がっています。

 当社の店舗に来られるお客さまの8割は女性。やはり女性の力、感性をもっと活用すべきだと考えています。実際に出てくる商品は、デザイン、色使いが男性によるものとまったく違う。彼女たちにとっては、自分が買いたい商品をつくるという感覚なのでしょう。

PB「デイジーラボ」を開発する女性チーム。女性らしい色使い、デザインが特徴だ

──バイヤー職に女性を増やしているということですか。

佐古 いえ、男性バイヤーと一緒にバイイング、開発を行っています。商品のほか、売場づくり、ゾーニング、内装にも彼女たちの意見を取り入れています。そのなかで女性だけで手掛けた改装もあります。「男子禁制プロジェクト」と題し、「アピタ精華台」(京都府相楽郡精華町)をリニューアルしました。ただ女性が活躍する場が増えるといっても、男性が得意な分野もあります。企画と実務など、適性を見極めながら男女がそれぞれ力を発揮できる職場環境を整えていきたい。

困りごとを解決するサービス

──徐々に利用者が増えているネットスーパーはどのような考えですか。

佐古 当社では40店で「アピタネットスーパー」を展開しています。確かにお客さまに対するサービスとしてはいいのですが、ビジネスとして成立させるのは難しいと考えています。収益を確保できるモデルとするため、ビジネスを再構築していきます。

 同じネットスーパーでも、市街地や郊外における当社のドミナントを活用したネットSMと、店が少ないローカルエリアの2つのタイプがあります。このうちローカルエリアは、買い物不便地帯に向けたサービスで、採算をとるのは難しいのが現状です。今後は産地と連携し、産直のようなスタイルでお客さま宅へ定期的に商品を届けるような仕組みも取り入れることで、新しいモデルができればと思っています。販売するのは、モノだけでなくサービスでもいい。たとえば介護サービスの一環で、髪の毛をカットするとか、ペットのトリミングといったもの。お客さまのニーズに耳を傾け、考えていきます。

──店舗ではユニークなサービスを提供しているそうですね。

佐古 アピタ稲沢東店(愛知県稲沢市)では、「暮らしカフェ」といって、飲食できるカフェの周囲に、生活に関する困りごとを解決するサービス窓口を併設した空間をつくっています。掃除や家事代行、介護や健康、相続など、それぞれ専門の業者がお客さまの相談に乗っており、好評を得ています。

 アマゾンや楽天はじめ、ネット通販が台頭するなか、当社ではリアル店舗ならではのサービスにも力を入れ、差別化を図っていく考えです。