イオンリテール(千葉県/井出武美社長)は6月8日、同社初の本格的なスマートストアと打ち出す「イオンスタイル川口」(埼玉県川口市)をグランドオープンする。どのような店か、写真を多数使用しレポートする。
既存の安全カメラを
「AIカメラ」に活用!
イオンスタイル川口は、埼玉高速鉄道「鳩ヶ谷」駅から北西へ約1.8kmに立地する。今回建て替えオープンした商業施設「イオンモール川口」の核店舗として入居している。
現在、AIカメラやデジタルサイネージなどを活用したスマートストアの開発が各社で進んでいる。そうしたなかイオンリテールも、2020年6月にグランドオープンした「イオンスタイル有明」(東京都江東区)において、デジタルを活用したさまざまな施策を実験的にスタート。それらに改良を加えて、本格導入させているのがイオンスタイル川口だ。
具体的には、「AIカメラ」やハンディ端末「AIカカク」、シェルフサイネージなどを導入している。
まず「AIカメラ」については、イオンスタイル川口の全3階に計149台を設置。防犯向けの「安全カメラ」を活用し、店舗ごとに新たに設置するAI搭載の映像解析マシンによってリアルタイムで情報を解析する。
“監視されている”
感じのないスマートストア
売場を見てまず印象に残るのが設置台数の少なさだ。たとえば食品フロアは、直営売場面積が3216㎡であるのに対して、その数は78台だ。AIによる画像解析の精度が高いため1台でカバーできる範囲が広く、AIカメラの設置台数が少なくて済むという。そのため、多数のカメラに監視されている感じを受けない印象だ。
購買前の行動を
「ヒートマップ」で可視化
このAIカメラ導入によって可能になるのが、来店客が商品を購入する前の行動の把握だ。
来店客の買物動線や各売場での立ち寄り時間、お客が手を伸ばした商品棚などの情報を集積し、利用率に応じて「ヒートマップ」状に色分けして可視化する。これにより「売場への立ち寄り率が高い・低い」「商品を手にとられている・いない」がわかり、購買されていない商品の要因を分析できるようにしている。
接客が必要な来店客を
AIカメラが感知
接客向上にも活用する。なかでも、ベビーカーやランドセルなど商品の説明がとくに必要とされるカテゴリーの売場においては、AIカメラが「売場での滞在時間」から接客が必要そうな来店客を感知し、従業員が携帯するスマホに通知する試みを行っている。これにより、従業員がつねに売場に滞在せずとも、必要な時にだけ接客できるようになるため、省力化と販売機会ロスの低減が可能になる。
データで割引率を最適化
総菜の廃棄額が半減!
次に「AIカカク」は、これまでの販売実績やその時の天候や客数データをもとに、最適な割引率を提示するハンディ端末だ。これを、商品のなかでもとくに値下げや廃棄の多い総菜売場で活用。操作は非常に簡単で、商品のバーコードを読み取り、売れ残っている個数を記入するだけで、最適な割引率が表示される。そのため、パート・アルバイトでも総菜の割引率の設定ができるようになる。
シェルフサイネージは、主通路沿いのゴンドラエンドに計5台設置する。棚上部に取り付けたAIカメラによって顧客を分析し、年代に応じたコンテンツ動画を流す。取引先メーカーが専用に制作した動画も用意し、実際の購買データのほか、AIカメラによる購買前の行動分析データも取引先メーカーに提供して売上向上に生かす。
イオンリテールは、AIカメラは全国の約80店に、AIカカクは7月までに約350店とほぼ全店に、シェルフサイネージは首都圏の店舗を中心に導入を進めていく計画だ。
イオンスタイル有明の開店から約1年で、デジタルを活用した店舗を一気に広げるイオンリテール。これまでの実験ですでに、売上向上や販売機会ロスの低減に大きな効果が出ているという。今後もスピード感を持って同社店舗のデジタル化が進んでいきそうだ。
【イオンスタイル川口概要】
所在地:埼玉県川口市安行領根岸3180
売場面積:全3階・直営計9468㎡(うち食品3216㎡)
営業時間:9:00~22:00(1階食品売場のみ~23:00)