日本OTC医薬品協会(東京都)は5月21日、オンラインで会長会見を開催し、2021年度に重点的に取り組む活動計画等について発表した。セルフメディケーション税制の期限延長や対象品目の拡大、スイッチOTC(一般用医薬品)化の促進など、セルフメディケーション推進の環境整備に注力してきた同協会は今後どう動くのか。新会長の上原明氏(大正製薬ホールディングス代表取締役社長)の会見要旨を掲載する。
セルフメディケーションの役割は今後ますます大きくなってくる
――日本OTC医薬品協会は5月17日開催の会員総会及び理事会で上原明氏を新会長に選任した。
上原 佐藤誠一(佐藤製薬代表取締役社長)前会長は2018年から3年間、協会をけん引していただいた。セルフメディケーション税制の期間延長、対象品目の拡大、さらにはスイッチOTC推進に向けた取り組み、それをさらに幅広く行い、厚生労働省にセルフメディケーション推進組織の創設をお願いすることで、それらを実現していただいた。佐藤会長には今後の業界の発展に寄与する礎を築いていただいたものと思っている。私はそれを引き継いでより確実なものとし、次の時代に引き継ぎたいと考えている。
本日の私の挨拶のテーマは「高齢長寿社会に貢献するセルフメディケーション」だ。今後の日本OTC医薬品協会の活動方針について、着眼大局・着手小局の視点から以下のように考えている。まず「着眼大局」として、高齢化による医療費(社会保障費)の激増や医療の高度化を背景に、医療費の効率的・効果的使用が求められていることが今後の大きな課題として挙げられる。特に自助・共助・公助の棲み分けが重要であり、その中でも自助、すなわちセルフメディケーションの役割が今後ますます大きくなってくると考えている。
厚労省「セルフケア・セルフメディケーション推進室」との連携は極めて重要
上原 次に「着手小局」として、生活者に向けた啓発活動と生活者が実践しやすい環境づくり、そして国際的な活動の3点に注力することを考えている。
1点目の生活者に向けたセルフメディケーション啓発活動としては、7月に予定しているセルフメディケーションの日・週間やSNS(Twitter等)の活用、薬局・ドラッグストア、関連団体との連携強化を通じてセルフメディケーションの認知を広げ、自助、共助、公助の理念の理解や、学校教育・地域専門家による「健康リテラシー」教育の普及推進を支援していきたい。
次に2点目の生活者がセルフメディケーションを実践しやすい環境づくりとして、自分の健康状態を把握するためには自己診断ツールの充実や相談しやすい環境づくりが重要で、さらにセルフメディケーションを実践する(行動変容)ためには、セルフメディケーション税制の充実・発展やスイッチOTC化の促進、新たな効能範囲の拡大、オンライン相談と連携したセルフメディケーションの実践方法の検討を進めていくことが必要だ。
3点目の国際的な活動については、日本のOTCの海外展開のために海外ニーズへの対応支援を行うことを予定している。
これら活動を進めていくうえで、さまざまな関係者からのご意見をうかがい、ご理解とご支援をいただきつつ、連携していくことが必須であり、特に4月に厚生労働省内に新設された「セルフケア・セルフメディケーション推進室」との連携は極めて重要であると認識している。なお、現在、2019年に当協会が公表した「OTC医薬品産業グランドデザイン」の見直し作業を進めており、新たな取り組みについても積極的に取り組んでいきたいと考えている。