日本KFCホールディングスは5月12日、2021年3月期決算説明会を実施した。コロナによる巣ごもり需要で中食市場が成長する中、その決算状況はどのようなものだったのか。新しい中期経営計画も発表され、今後3カ年の新たな取り組みも明らかになった。
大幅な増収増益、テイクアウト、デリバリーが好調
日本KFCホールディングスの2020年通期実績は、売上高が対前期比12.6%増の896億5200万円、営業利益は63億5400万円(同32.8%増)、経常利益は54億9800万円(同69.1%増)、純利益が28億500万円(同82.9%増)だった。いずれも2019年度実績を大きく上回った。
一方、持分法適用関連会社であるタイのKFC事業、Bamboo (Thailand) Holding Pte. Ltd.、和食レストランの株式会社ビー・ワイ・オーにおいてはコロナによる影響を受け、持分法による投資損失12億7500万円を営業外費用に計上している。
チェーン売上高も対前期比11.8%の1,439億円と創立以来の最高を記録。増収増益の要因について金原俊一郎専務は、「コロナにより需要が増えたテイクアウト、中でもドライブスルーやデリバリーの需要を取り込めたため」と説明。外食産業全体ではコロナ禍で客数が25%低下している中、客数、客単価ともに増加し、既存店平均月商は19年度の974万円から1,110万円へと大きく成長している。
また、店舗数も5店舗純増となった。より安全、安心で快適な店舗への改装も戦略的に進めた結果、233店舗で改装実施、配達代行を含むデリバリーサービスの実施店舗も対前期比156店舗増で376店舗となった。
なお、同社の既存店平均月商は840万円だった17年度から3期連続で上昇しており、その金額は実に270万円のプラスである(上図参照)。
21年度からの中期経営計画発表
決算説明会では、21年度を初年度とする3カ年中期経営計画も発表された。新しい中期経営計画の基本方針は、「『おいしさ、しあわせ創造』の企業理念のもと、環境変化に柔軟かつ迅速に対応しながら、KFC事業を中核とした総合フードサービスグループとして、より一層の成長を目指す」としている。コロナによってますます注目が集まる「食の安全・安心」「楽しく、豊かで、幸せな生活の提供」に着目した前・中期経営計画のミッションステートメントも引き続き継承していく。
計画の骨子は、「KFCをエブリデイブランドへ」「もっと近くに、より快適に」「『安全・安心なおいしさ』の追求」の3点だ。最大のテーマとして「1店舗あたりの売上伸張✕店舗数の増加によるチェーン売上高のさらなる成長」を掲げる。
その初年度となる21年度の数値目標は、チェーン売上高を対前期比5.6%増の1,521億円、既存店平均月商を1110万円から21万円増の1131万円、店舗数は23店舗純増を目指す。また、お客がより快適に過ごすための店舗改装について、220店舗でフルバージョンの店舗改装、注文から受け取りまでの動線を改善するカウンター周りの改装を65店舗で実施する計画だ。デリバリー実施店舗も、現在の376店舗から455店舗まで拡大させる。
具体的な施策として、定番商品であるオリジナルチキンの磨きこみ、ランチメニューの充実など、魅力的な商品・プロモーションの展開をはかる他、KFCアプリ、ネットオーダー等デジタルメディアの機能を強化する。また、持ち帰り専門小型店舗、初期投資を抑えたドライブスルー店舗の進化等、生活様式の変化に対応した柔軟な店舗開発、注文と受け渡しを分けたスプリットカウンター、ナンバーディスプレイ、セルフレジ等の導入を積極的に進める。
フードサービスの基本となるトレーサビリティの徹底(100%国内産)、衛生管理等もこれまで以上に徹底し、「安全・安心なおいしさ」を追求していく。
2021年度は増収減益見込み
このように21年度は、売上は引き続き増加を見込む一方で、営業利益、経常利益は減益になるとの見方を示した。これは、新・中期経営計画の柱である「店舗数の増加」にチャレンジするための初期投資、IT化、DX化を進めるための先行投資を行うためである。
6月22日の定時株主総会における決議で新社長への就任が決まっている判治孝之常務は「新しい中期経営計画を実現するには、人材育成、ダイバーシティ推進、環境CSR活動の強化が不可欠であると考えている。お客様により快適なサービスを提供するためのDX推進、ITインフラ整備もしっかりと優先順位をつけて取り組んでまいりたい」と語った。