小売の決算発表が始まった。イオン(千葉県)は決算説明会で積極的なデジタル・トランスフォーメーション(DX)戦略を発表、投資家の注目を集めた。
その一方、小売業界全体ではDXが遅れている。経済産業省が2020年に公表した「DXレポート2」では、全企業の95%がDXに未着手か取り組み始めたばかりであるとの実情が明らかとなっている。経産省と東京証券取引所が共同で選定する「DX銘柄2020」は35社で、そのうち「小売業種」は日本瓦斯とHameeの2社だけだった。ただ、これは見方を変えれば、今からDXを始めてもチャンスが大きいということでもある。少しでもDXを進められれば、競争力の優位性を高めることができるだろう。
そこで今回は、DXが進みにくい理由を分析し、小売がDXを推進するためのヒントを提案したい。
DXが進まない最大の理由は、「DXとは何か」「なぜ、DXが会社にとって得なのか」という“What”と“Why”が知られていないからだ。また、「どうすることがDXなのか」という“How”も不明だ。
まず、DXとは何か。DXの意味や定義は立場によってさまざまで、筆者の場合は「会社の目的である、『長期的に売上高が伸び、儲かり、かつ社会的にもよい』という姿の実現を、効率的に加速させる仕組み」となる。DXの効果としては「業績改善とSDGs推進が容易になること」が考えられる。
では、DXとは何をすることなのか。まず必要なのは、トップから執行役員までがその意味と目的を理解することである。DXなしでは社会変化に遅れ、競争に敗れてしまう。DXは短期でなく、長期戦略として取り組まないといけない。役員の理解と、長期で取り組む覚悟が一丁目一番地となる。
経産省によれば、DXのステップは3段階ある。
・・・この記事は有料会員向けです。続きをご覧の方はこちらのリンクからログインの上閲覧ください。