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「自分の店の料理はうまい」と思ってはいけない サイゼリヤ創業者に学ぶ客観的な判断の重要性

出張帰りの新幹線で何を読もうかと立ち寄った古本屋で、サイゼリヤ(埼玉県/堀埜一成社長)の創業者である正垣泰彦(現会長)さんの『おいしいから売れるのではない 売れているのがおいしい料理だ』(日経BP社)を購入。車内であっという間に読み終えた。サイゼリヤは、低価格のイタリア料理店「サイゼリヤ」をチェーン展開するフードサービス業。現在は1517店舗(海外428店舗を含む)を出店しており、新型コロナの逆風もものかはと連結売上高は1268億円(対前期比19%減)を計上している(2020年8月期)。

おいしいかどうかは客数で判断する

 サイゼリヤは昨年度、1度目の緊急事態宣言を受けて早い時期からテイクアウト販売に注力。また、硬貨の使用を減らすことで接触機会と会計時間を削減するためにメニューの税込み価格の末尾を00円、50円に統一し、過去に経験したことがないような難局に挑んだ。

 さて、同書では、正垣さんの実体験に基づくオリジナルの経営論が展開されていく。中でも、ひと際異彩を放って輝いていたのは、「(外食の経営者は)『自分の店の料理はうまい』と思ってはいけない」(p9)の一言だ。「『自分の店の料理はうまいと思ってしまったら、売れないのはお客が悪い。景気が悪い』と考えるしかなくなってしまう」(p9)からだ。

 では、正垣さんは、おいしい、まずい、を何で判断しているのか?それが客数なのだという。「客数が増えているなら、その店の料理はおいしい。逆に客数が減っているなら、その店の料理はおいしくないのだから、何かの対策を講じるべきだ」(p50)。その考え方が、本書のタイトルということになる。

客観的な判断の重要性

 確かにその通りで、とかく人間は自己満足に陥りがちなものだ。そして、「これだけ苦労してつくった味だからおいしいに決まっている」と独善が頭を持ち上げてしまうと、もう埒が明かない。これは何も外食産業に限ったことではなく、食品スーパーでも同じことが言える。たとえば、商品開発担当者自慢の「コロッケ」の販売数量がどうなっているのかは必ずチェックしたい。購入客が全客数の1割に満たないとするならば、味に改善の余地があるということだろう。

 われわれのようなWEB媒体や紙媒体を扱う企業の場合なら、PV数や発行部数ということになる。これが落ちているようであれば、“おいしい情報”ではないということになる。

 自分たちが一生懸命つくったものは、子供のように可愛いものだ。もちろん、感情的にはそれでかまわない。しかしながら、商売としてはそれではダメであり、客観的・科学的アプローチでメスを入れる必要がある、ということを正垣さんに改めて教えられた。