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ブランド品の在庫を持たず、アートを展示 コメ兵の南青山サステナブル店舗が見据えるSDGsのかたち

ラグジュアリーブランドの買い取り・販売に強みを持つブランド品リユース大手のコメ兵ホールディングス(以下コメ兵HD)がさきごろ東京・南青山にサステナブル店舗「KOMEHYO AOYAMA」を出店した。建材に廃材を利用し、在庫を持たない同店舗は、これまでの店舗イメージとはまるで異なる。モノを売る場所というより、ギャラリーに近い同店舗が、同社の持続型経営をさらに推進するという。同店舗の出店を統括した同社執行役員マーケティング本部長の藤原義昭氏にその狙いを聞いた。

KOMEHYO AOYAMA

在庫なしで、アートを展示するギャラリーのような店舗

 美術館やブランドショップが点在する南青山エリアに立つ「KOMEHYO AOYAMA」。そのたたずまいは周囲に何の違和感もなく、しっくりとなじんでいる。1階が店舗で、2階がギャラリー。1階は店舗ながら、在庫を持たず、取り寄せ販売に特化しており、一見すると美術館と見まごうほどだ。

 同社にとって初となるリユースとアートを扱う同店舗は、1947年の創業以来継続するサステナブル経営を具現化する、そのものが循環型店舗となっている。例えば、店舗内装の98%は廃材のリサイクル。設置する家具や扱うアートも廃材から生まれたものだ。

なぜアートを取り扱うのか

店内はリユース店ではなく、完全にギャラリーといった佇まい

 同店舗を統括する藤原氏は「この店舗ではディスプレイ商品以外の在庫をなくし、KOMEHYOオンラインで選んだ商品を取り寄せ、実際に見て、触れて、確認してから購入するスタイルです。KOMEHYOにとって初めての試みとなりますが、これまでと同じ満足感のあるお買い物体験を提供していくことを目指します」と出店の意気込みを語った。

 『モノは人から人へ伝承(リレー)され、有効に活用(ユース)されてこそその使命を全うする』という独自の概念に則り、単なる再利用ではなく、そこに新たな価値を生み出しながら意味のある循環にこだわり続ける同社。同店舗は、この思想をさらに推進する上で大きな意味を持つという。カギを握るのが、ギャラリーに展示されるアートだ。

 力強さ、悲しさ、辛さ、明るさ。どの作品からもすさまじいエネルギーが発せられている。アーティストの力はいうまでもないが、実は作品の素材は全て産業廃棄物。アフリカ・ガーナのアグボグロシー地区のスラム街。そこに大量に山積みされた産業廃棄物に工具や筆を使い、現地の悲惨な状況を目の当たりにし、感じた想いを吹き込んでいる。

廃材アートで実現する社会課題の解決

 その地に降り立ち、有害物質にまみれた廃材からアートを生み出すMAGO CREATION代表で美術家の長坂真護氏は言う。「ゴミは先進国が不法投棄した産業廃棄物です。それによって現地の人々は環境悪化や健康被害、貧困に苦しんでいる。廃材アートは、それを解決するための一つの手段。とはいえ、芸術家が世界を変えるのは社会性が乏しい。ですから、今回のKOMEHYOさんとの業務提携のように、みんなで世界を変えていけるような取り組みにシフトしていきたい」。

 かたやブランド品、かたや産業廃棄物。素材こそ対極だが、モノを再利用し、新たな価値を生み出す点ではやっていることは共通している。それが、廃材アートと同店舗をつなげた。藤原氏は「ここはリユースとサステナブルアートがコラボレーションした店舗。サステナビリティに共鳴するお客様が、ブランドリユースだけでなく、『MAGO GALLERY』でのお買い物を通して、ぜひ循環型社会に参加していただきたい」と力説した。

利潤追求があってこそ、健全な循環型経営が可能になる

 南青山とガーナ。真逆の環境にある2つの地域が、「サステナブル」を共通言語につながり、さらに店舗でのアートの消費が社会の課題解決にもつながっていく――。異なる2つの循環型経営が交わることで、その輪は社会を巻き込む大きなサイクルとなり、結果的により大きな意味を持つ循環を生み出した。

 藤原氏は最後に「当社は70年以上『リレーユース』を守り続けていますが、この店舗を通してやっとお客さまが参加できるかたちになったと思っています。『売る』『買う』という行為によって、お客さま自身がサステナブル活動に参加していただいて、我々だけではなく、お客さまも含めた世界観でリレーユースをどんどん進めていけたらと思っています」と感慨深げに話した。

 消費活動がそのままサステナブル活動につながる仕組みの構築。社会貢献と利潤の追求は相容れない印象を持たれがちだが、企業は利益を上げなければ存続できない。経営を持続し続けるためになにを犠牲にするかではなく、なにができるのか。同社の取り組みには、ポスト大量消費社会に企業が存続し続けるために必須となったサステナブル経営を考える上で、多くのヒントが詰まっている。