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NRF2021で女性CEOたちが語った!逆境をチャンスに変えるリーダーシップとマネジメントの極意

毎年1月にニューヨークで開催されるNRFビッグショーは、今年初めてヴァーチャルとなっただけでなく、例年なら圧倒的に男性が占める講演者の30%以上を女性とした。アメリカでは女性がキャリアウーマンとしてバリバリ働いているイメージを持つ日本人が多いが、労働人口における女性比率は高くても、管理職やCEOのほとんどは未だに男性が占めている。フォーチュン500社における女性CEOの数は2020年8月に過去最高を記録したもののわずか38人だ。ちなみに男性を含む黒人は5人、ヒスパニック系は誰もいない。
1月22日の「変動の時代をリードし成功する」というセッションでは、小売業界で実績を重ねてCEOの座を獲得した女性たちが、コロナショック後の経営について語っている。そこからは、逆境をチャンスに変えるリーダーシップとマネジメントの極意を学ぶことができる。

共感とボランティアの精神が企業の強みに 「企業も消費者も共に助け合って生き抜く」

Mindy Grossman, President and CEO, WW International, Inc.

 ウェイト・ウォッチャーズ・インターナショナル(Weight Watchers International、以下WW社)。57年の歴史を持つ同社は、ダイエット食品・レシピ、ダイエット誌、オンラインの体重管理ツールなど、ダイエット全般に関わる製品とサービスを提供する大手企業だ。同社CEOのミンディ・グロスマン氏は、ラルフローレン、ナイキを経て2006年にTV通販のHSNCEOに就任後、同社をライフスタイルメディアとして改革、IPO(新規株式公開)に導き、2017年にWWCEOに就任した。
 WWでも事業領域を「痩身」から「ウェルネス」へと拡大し、業績回復を果たしている。フォーブスの「世界で最もパワフルな女性100人」に5回選ばれ、NRFでは2015年から17年まで取締役会会長を務めた。

 一方サプリメント販売大手のザ・ヴァイタミンショッペ(Vitamin Shoppe、以下VS社)のシャロン・ライテ氏は、ウォルトディズニー、ギャップ、インテリアチェーンのピア1インポート等を経て2018年にVS社CEOに就任した。

ザ・ヴァイタミンショッペCEO、シャロン・ライテ氏(出所:同社提供)

 両社は在宅時間の長期化により、精神的なストレス緩和や心身の健康管理へのニーズが拡がる健康とウェルネス市場を基盤としている。VS社の調べによると、消費者の56%はストレスを和らげ、バランスを求める新しい方法を探しているという。そこでVS社は202011月に、大麻草に含まれる健康成分・カンナジオール(CBD)を配合したプライベートブランド商品を発売し、一部の商品は完売した。

 一方、WW社はコロナ前には毎週3万本の対面セッションを提供していたが、感染拡大後は12都市でヴァーチャルに切り替えた。また11月にはAIを使って健康とウェルネスをカスタマイズして管理できる会員制プラットフォーム「マイWWプラス」を運営開始した。ここでヴァーチャルコンサルテーション、ヴァーチャルワークショップ、カスタマイズしたコンテンツ、会員間でのコミュニケーションなどを提供する。グロスマン氏は「人々はヴァーチャルであっても一体感を欲しがっている」とコメントした。同社はまた、低所得者10万人を無料で会員に招待している。

 2021年1月、両社は戦略的パートナーシップを組み共同ブランド「WWバイ・ヴァイタミンショッペ」を立ち上げ、サプリメント、スナック、WW会員制度を双方の販路で販売開始した。コロナによる追い風が吹いているとは言え、両CEOは「企業同士も協力し合うことが今、非常に重要だ」と述べた。グロスマン氏は「共感とボランティアの精神は10年前には企業にとって弱みだったが、現在は大きな強みとなっている。企業も消費者も共に助け合い、励まし合いながら1つのコミュニティとして生きていくことが今の世界には大変に重要だ」と述べた。

リーダーシップに必要なことは「希望をつくり出すこと」

右:ウォルマート・インターナショナルCEO、ジュディス・マッケンナ氏、左:アメリカンエクスプレス社エンタープライズ戦略的パートナーシップ、プレジデント、グレンダ・マックニール氏
出所:NRFビッグショー2021、チャプター1ヴァーチャルイベント

 ウォルマート(Walmart)・インターナショナル部門CEOのジュディス・マッケンナ氏は1996年に英国アスダに入社後2018年に現職に就いた。フォーチュン「最もパワフルな女性50人」に5回選ばれた彼女は、現在25か国6,000店舗70万人の従業員のリーダーだ。このため、世界中のコロナ禍への対応を見ることにもなったが、世界共通の現象は①ECへのシフト、②デジタル決済の増加、だったと言う。また急成長したカテゴリーも、健康とウェルネス、家庭で料理、ホームインプルーヴメントと共通した。このような変化は今後も長く継続するだろうと分析している。

 同社では感染拡大時に5つの規律に沿って経営を続けた。その規律とは①まず従業員のケアをすること(さもなくばお客さまに奉仕できない)、②顧客の安全を守る、③コミュニティをケアする、④日々の事業経営に集中しながら、⑤長期的に思考する、だ。例えば英国では従業員の一部は「喜んでお話し相手になります」というバッジをつけ、顧客の安全を確保しながら対応をしたそうだ。

 従業員へのケアとしては①ウェルネスとメンタルヘルスを重視し「大丈夫だよ」というコンセプトを導入、②コミュニケーションを増やし、「タウンホール」と呼ぶ全世界の担当者が集まる会議を開催、またヴァーチャル店舗訪問も数多く実施し、店舗従業員がiPadを持って店内を説明して歩いたりした。

 リーダーシップに必要なものは何かという質問に対し「信憑性、適応性、好奇心と生涯学習、忍耐、幸せでいられる力。一言で言うなら、いかに希望をつくり出せるか」と答えた。