食品スーパー(SM)の生産性の低さは、積年の課題になっている。この現状を打破するためには、ビジネスとして「儲けること」を明確な目標として掲げ、一つひとつの作業を見直し、効率化を図っていくほかない。昨今は“コロナ特需”で好業績をあげているSMも多い。体力的にも比較的余裕のある今こそ、デジタル活用への投資を含め、生産性向上の取り組みに本腰を入れるべきだ。
プロの提言!
▶「生産性向上のための顧客創造」を意識しよう
▶「単純作業」「付加価値作業」を区別し、前者の効率化を急ごう
▶公的補助金も活用しつつ、デジタル投資を加速させる
生産性向上は「顧客創造」が前提
今日のSMのオペレーション上の問題は何より、人時生産性が低いことにある。その原因としては、そもそも「生産性」に対する意識、勉強が足りないためだ。それに加えて、「営業利益」に対する経営者の意識が低いことが根本的な問題として存在している。
どのようなビジネスでも、目的は儲けること(営業利益の拡大)だ。利益が出るからこそ、会社はあらゆる投資を行って成長発展を実現し、従業員の報酬や雇用環境のレベルを上げることが可能になる。
そして、ビジネスの成功のカギは「顧客創造」にある。そのために必要なのは、「顧客の問題解決」だ。マンネリ化や価格、時間や手間など、お客の不満や要望を的確に察知して対応すること、そして、独自価値の提供によって、大きな利益につなげることができるのだ。つまり、「顧客創造のための顧客の問題解決」に、優先的かつ戦略的に時間とお金を投資して、自社の競争優位性を確立しなくてはならない。
こうした「儲けることの重要性」と、その手段としての「顧客創造の重要性」を理解したうえで、日々のオペレーションを改善していきたい。代わり映えのしない売場はお客の支持を失い、売上も利益も上がらず、生産性はどんどん低くなってしまうのだ。
一つひとつの作業効率が企業の生産性を左右する
生鮮部門を有するSMは必然的に、店内での加工作業が必要となる。ドラッグストアなど他業態と比べて作業の種類、工数が多くなり、結果として多くの人時投入を必要とする。生鮮食品は、それ自体が他業態に対しての差別化要素である反面、過剰在庫や作業改善が進まず効率の悪い現場では、数々のムダが発生して、生産性低下を招く主要素ともなってしまう。言い換えると、そうしたムダが、FLコスト※を高めて、商品の売価を押し上げてしまうことになり、価格競争力を低下させてしまうのだ。
また、過剰在庫は
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