成城石井のなかでも特徴的な売場の1つが、天井に届きそうなほど高く、びっしりと商品が陳列されたグロサリーだ。オリジナル商品の品揃えや独自の売場展開で多くの人を惹きつけている。その強さとは何か。食品小売業向けコンサルティング事業などを行うテイク・アソシエの樋口武久氏が分析する。
細やかなSKU管理で幅広い品揃えを提供
はじめに私と成城石井の“出会い”について話したい。私は1978年に東急百貨店(東京都)に入社し、同社が2000年、「旧・東急東横店」(東京都渋谷区)内に“デパ地下ブーム”の先駆けにもなった食品売場「東急フードショー」を開業する際に統括マネジャーに任命された。
その開発に当たり、グロサリー売場の運営を委託したのが成城石井だ。当初は、直営で展開しないことについて社内から批判の声もあがったが、渋谷という大都市の中心地で、お客さまの満足度を高めるには成城石井に託すべきだと考えた。それほど、すでに当時から成城石井の強さは圧倒的だったのだ。
その強さの1つが、商品管理体制だ。とくに駅ナカの狭小店で見られるように、成城石井のグロサリー売場は基本的に1SKU当たりの陳列が1~2フェースと少なく、そのぶん小型店でも多くの品揃えを提供している。陳列数が少ないと欠品による販売機会ロスが生じやすいのだが、成城石井の売場は、品切れで“穴あき”状態になっていることがほとんどない。
そのうえ、多くの食品スーパー(SM)では、補充作業の容易さとバックヤード面積の削減のために、陳列棚の最上段に在庫を置いているのだが、成城石井にはそれがなく、最上段まで商品をびっしりと陳列している。これが、整然として、かつ商品がまるで迫ってくるような臨場感のある、成城石井ならではの売場を実現している。これらは在庫管理や発注、商品補充作業が徹底的に行われてなせるものだ。
この隙のない商品管理体制こそ、成城石井が駅ナカや商業施設内などさまざまな立地への出店を可能にし、ここまで事業規模を拡大できた大きな要因の1つだと考えている。
食シーンを想定した緻密な売場配置
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