メニュー

新連載・レシートは語る 第1回ライフ、有力チェーンを差し置き コロナ禍で〇〇世代の利用拡大!

 ソフトブレーン・フィールド(東京都/木名瀬博社長)は、全国に約50万人の協力モニターを擁し、日本初のレシートによる購買証明付き・購買理由データベース「マルチプルID-POS購買理由データPoint of Buy(ポイント・オブ・バイ:以下、POBデータ)」を有している。

 このPOBデータと協力モニターへのアンケート調査を活用すれば、消費者から見た小売りチェーンの実態を明らかにすることができる。本連載では毎回、業界で関心の高いテーマを設定して独自調査を実施し、その結果をレポートする。

 連載第1回の今回は、食品スーパー業界最大手のライフコーポレーション(大阪府:以下、ライフ)をクローズアップし、利用動向や支持される理由に迫った。

30代以下の利用割合
コロナ前比で7.1pt増

 まず、ライフの利用者層を見てみよう。新型コロナウイルス(コロナ)感染拡大下では、消費者は感染防止の観点から、買物頻度を減らすほか、複数の店を買いまわることを控え、特定の店でまとめ買いをする傾向にある。こうした環境変化のなかライフはどのような層に利用されているのか。

図1●ライフの利用者層の変化 男性
図1●ライフの利用者層の変化 女性

 図1は、コロナ流行前の1月と、コロナの感染が広がった3月、その半年後の9月における、ライフの利用世代構成比を集計したものだ。ここでは、来店の中心である女性に焦点を当てると、1月と9月で構成比の変化が大きかったのが~20代と、30代の若年層だ。ともに3.9ポイント(pt)拡大している。

図2●利用世代の構成比(2020年1月)
図2●利用世代の構成比(2020年9月)

 次に図2は、総合スーパー大手の「イオン」「イトーヨーカドー」、また同じく食品スーパーの代表格である「ヤオコー」「サミット」の1・3・9月の利用世代の推移と比較したものだ(男女計)。ライフは1月と9月との比較では、~20代と30代の合計で7.1pt伸びている。

 「イオン」(+2.2pt)や「イトーヨーカドー」(-2.7pt)、また「ヤオコー」(+2.3pt)、「サミットストア」(-0.2pt)と比較してもその割合が増加している。ライフはコロナ禍で、各社が力を注いでいる若い世代の獲得に成功していると考えられそうだ。

他社より優れているのは
「焼きたてパン」「総菜」

 若年層から支持を得ていると考えられるライフは、どのような点が消費者から評価されているのだろうか。

 図3は、ふだんライフを最も利用すると回答した91人に「ライフが競合他社よりも優れていると感じるところ」について聞いた結果の上位10項目を並べたものだ(複数回答)。

図3●ふだん最も利用するスーパーが競合他社より優れていると感じるところ

 上位トップ3の「食品全般の品揃え」「価格の安さ」「生鮮食品の鮮度の良さ」についてはライフだけでなく食品スーパーの全体平均でも回答者の割合が高く、食品スーパー選定の際に消費者が重視するポイントであると考えられる。

 特筆したいのは、ライフでは食品スーパー全体平均と比較して「焼きたてがパンおいしい」「総菜の種類や味」の項目のポイントが高い点だ。近年同社が開発に力を入れてきた総菜や焼きたてパンといった店内調理の即食商品は、消費者から支持される理由につながっているようだ。

 この2つの項目について回答モニターのコメントを見ると「焼きたての時間に合わせてパンを購入する」「あごだしを使った総菜がおいしい」などの声があがっており、来店動機の創出やファン獲得に成功していることがうかがえる。

 また、総菜については「少量からお得用パックまであり選びやすい」という意見もあり、細かな量目対応も好評を得ている。

強化中のネットスーパー
その利用割合は?

 なお、ライフは19年からアマゾンジャパン(東京都)の有料会員向け配送サービスを通じて、生鮮・総菜を含む商品の販売をスタート。コロナ禍でそのエリアを、東京都23区とそのほか一部、さらには大阪府と神奈川県の一部にも広げ、ネットスーパーサービスを拡大中だ。

 ライフ利用者に同社のネットスーパーの利用状況についても問うたところ、その利用割合は1割弱ほど(ライフ単独で提供する「ライフネットスーパー」の利用を含む)で、ここについては今後のさらなる伸びしろと言えそうだ。

ライフはコロナ禍でネットスーパーを拡大中だ

 このようにPOBデータでは、各チェーンの利用動向や、他チェーンとの比較による傾向・実態を捉えることができる。コロナ禍で消費動向が激変する今だからこそ、こうしたデータに基づいた戦略の立案・実行を行いたい。

【調査概要】
調査対象:全国のPOB会員アンケートモニター 
調査日時:2020年11月12~13日  
調査方法:インターネットリサーチ
調査機関:ソフトブレーン・フィールド

【データ詳細】
図①:POBデータにより算出。ライフを利用したレシート会員の年代。2020年 1月4999枚、3月6413枚、9月7645枚(男女計期間中のレシート枚数) 
図②:POBデータにより算出。ライフ、ヤオコー、サミットストア、イオン、イトーヨーカドーを利用したレシート会員の年代。 各社レシート枚数 2020年1月=ライフ4999枚、ヤオコー1514枚、サミットストア1638枚、イオン9779枚、イトーヨーカドー3874枚   2020年9月=ライフ7645枚、ヤオコー2143枚、サミットストア3517枚、イオン1万4503枚、イトーヨーカドー5518枚 
図③:POBアンケートデータにより算出。ライフのN=1143人

【執筆者】

山室直経(やまむろ・なおつね)
神奈川大学経営工学科卒業。パソコンメーカーを経て、米リサーチ会社にてコンサルティング業務を学ぶ。その後、大手家電量販店子会社のパソコンメーカーで経営企画室に従事。計数管理とERP導入による業務改善などのプロジェクトを経験した後、2012年3月ソフトブレーン・フィールド入社、消費者購買データ事業の新規立ち上げを行う。現在はデータを軸とした事業開発と当社の基幹システムのDX戦略を担う