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イー・ロジット角井亮一社長が語る4つの購買パターンから見極める「小売物流の未来」とは

EC物流国内実績№1イー・ロジット(東京都/角井亮一社長)による毎年恒例の物流戦略セミナーが、去る10月20日に開催された。節目の20回目となる今回は、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、初めてのオンライン開催となったが、このコロナ禍にあっても高い成長を続けているワークマン(東京都/小濱英之社長)、オイシックス・ラ・大地(東京都/髙島宏平社長)両社から、戦略に深く関わる土屋哲雄氏(ワークマン専務取締役)、奥谷孝司氏(オイシックス・ラ・大地執行役員)がゲストスピーカーとして登場。例年以上の盛り上がりをみせた。本稿では角井氏による講演「小売物流の未来~物流ネットワーク再構築~」をまとめた。

i-stock/ipopba

コロナ禍による変化がECの課題を解決する

 角井氏は、コロナ禍で「小売物流の未来が加速した」と明言した。EC(ネット通販)の急拡大がその理由だが、物流視点からは「配荷機能をもつ(=店舗から消費者のもとに届ける機能を持つ)小売店が増えた」という点が重要だという。消費者にとってはだれが届けてくれようがさほど関心はないが、サービスを提供する側からするとこれは構造変化を伴うものだ。

 これまで、EC物流の課題として次の3点が指摘されてきた。「消費者は送料を払わない」「再配達問題」「宅配料金の上昇傾向」だ。しかし、コロナ禍でのステイホーム、外出自粛、接触回避などの要因により、これらに対する解決策が見えてきた。

 まず送料についてだが、コロナ禍で躍進したフードデリバリーサービス「Uber EATS」を高い送料を支払ってでも、利用する人が増えている。送料がかかっても、ECのメリットのほうが大きいと考える人たちが多くなってきたということだ。次に再配達の問題だが、接触を避ける荷物の受け渡し方法として、“置き配”の認知が進んできた。置き配が可能ならば、届ける側も受け取る側も配送時間を気にせずにすみ、双方にとって負担が一気に軽減される。最後の宅配料金だが、ギグワーカーによる配送マッチングサービス(たとえば前述のUberEATS)や異業種からの参入もあり、既存の宅配会社以外の利用が容易になった。たとえば、CBクラウド(東京都/松本隆一社長)の提供する配送マッチングプラットフォーム「PickGo」では、プロの配送ドライバーによる買物代行サービスが受けられる。対面/置き配を選べるほか、複数店舗(3店舗まで)での買い物指定ができ、配達時間も24時間自由に設定することが可能だ。

 買い物の質、つまり「楽しい買物なのか、楽しくない買物なのか」によっても、ECの利用度合いは変わってくる。楽しい買物とはつまり「買物する行為自体に価値を感じる」というものだ。ウインドウショッピングや店員との会話を通じた“時間消費”に価値を求めるケースなどが該当する。

 一方、楽しくない買物は「商品の入手だけに価値がある」という場合だ。消耗品など生活必需品の補充のための買物のように、できるだけこの買物に時間を費やしたくない、合理的にすませたいと考えるものを指す。今後アマゾンを筆頭に、ECや定期購入サービスの利用がますます進んでいくと考えられる。

講演するイー・ロジット 角井亮一社長。

“買物自体の価値”を高める

 また角井氏は、買物という行為自体の価値として、「役に立つ・新しい情報が得られることが楽しい」「スタッフや顧客同士など、人と話せることが楽しい」「体験を通じワクワクして楽しい」「バリエーションのある商品からお気に入りを選ぶことが楽しい」の4つを挙げた。実現のためには、「店員教育の強化」「エンタメ性の強化」「体験を先に提供する」「商品ラインアップの拡充」が重要になると語る。

 たとえば、「あのテニスコートは予約が取りやすい」「あのアイドルは〇〇を着ている」など、直接商品とは関係のない情報も提供する店舗スタッフは初心者にとってのアドバイザーにもなってくれる。買物自体をエンタメにしている渋谷パルコや、吉野家×ライザップのコラボ商品などは、ほんの一例だ。

消費者の行動パターンから需要を見極める

 現状の消費者の買物パターンを考えると、買い方(オンラインか、オフライン(実店舗)か)、受け取り方(自宅て受け取る、店頭で受け取る)の2軸から4つのタイプを想定することができる。「店舗で購入して自宅に持ち帰る(通常の買物)」、「店舗で購入して配達代行を利用する(配達代行)」、「オンラインで購入して店頭で受け取る(BOPIS:Buy Online, PickUp in Store)」、「オンラインで購入して自宅で受け取る(ネットスーパー、EC)」だ。

 この4パターンから消費者が実際にどれを選ぶかは、そのときに求めている利便性による。とにかく時間を節約したいときはオンラインで注文するし、宅配を依頼する。買物には行きたいが、持って帰る労力がないというような場合は配達代行を利用する。たとえば、高齢者が健康を考えてスーパーまで買物に行くものの、3kgのコメを持ち帰ることは難しいような場合が該当する。逆に、若い子育て世代の場合は、買ったものを持ち帰る力はあっても、子どもの面倒を見ながらの買物は負担になりやすい。そのため、買物時間や料理時間の節約が重視され、オイシックスのミールキットなど時短を可能にする商品が支持される傾向にあるのだ。

 角井氏はコロナ禍になってとくに、「店頭受け取りは普及しますか」と聞かれることが多いと語る。もちろん答えは「イエス」だが、「何店舗あれば良いのか」という質問に対しては、「店舗数ではない。大事なことは自社の商圏がどれだけあるかだ」と答えるという。そもそも、店頭受け取りを利用する人はもともと店舗を利用していた人だ。なじみのない店にわざわざ、店頭受け取りのためだけに足を運ぶということは考えにくい。また、店舗の立地が立ち寄りやすい場所にあるかどうかも、消費者の利用メリットを考えると大きい。ロードサイド立地や、通勤路、帰り道にあるなどはそれだけで有利になりやすい。

 業種・業態でいえば、「プロ向け市場」「軽いアパレル系」「生鮮食品」「飲食」は店頭受け取りに適している。また、たとえば「8000円以上の購入で送料無料」など高い送料無料バーが設定されている場合にも、手数料無料で店頭受け取りが可能であれば消費者のメリットは大きいといえるだろう。

 角井氏はこの講演の締めくくりとして、withコロナ・afterコロナにおける、物流再構築のポイントについても触れた。「今後小売は、カスタマージャーニーに合わせて再構築をしていく必要がある。顧客がどういう動きをするか、すべて見えていなければ顧客満足を提供するような対応はできない」と述べた。