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CSVを基軸に飲料を通じて豊かな生活に貢献していく=キリンビバレッジ代表取締役社長 堀口 英樹

新型コロナウイルス(コロナ)の影響により、これまでになく健康志向が高まっている。キリングループにおいて清涼飲料事業の中心的存在であるキリンビバレッジ(東京都)では、そうした生活者のニーズに応えた商品を次々と提案。今、注目を集めるCSV(Creating Shared Value)経営を実践している。その具体的な取り組みについて、代表取締役社長の堀口英樹氏に聞いた。

コロナ禍で変化した志向・購入場所・容器サイズ

──まずは直近の業績について聞かせてください。

ほりぐち・ひでき1962年生まれ。85年慶應義塾大学卒業、同年キリンビール入社。2007年キリンホールディングス経営企画部グループブランド室長。08年ナショナルフーズ(豪州)マーケティング企画部長、09年フォアローゼズディスティラリー(米国)代表取締役社長。14年小岩井乳業代表取締役社長。16年キリンビバレッジ代表取締役社長(現任)

堀口 ご存じのとおり、3月後半ぐらいからコロナ感染拡大が進み、緊急事態宣言が発令された4~5月は、外出自粛や在宅勤務などによる影響がみられました。とくに、自動販売機や駅の売店、オフィスビル内にあるコンビニエンスストア(CVS)への影響が大きく、ようやく回復してきたものの、1~9月累月のキリンビバレッジの清涼飲料販売数量合計は対前年比8%減という状況です。

──やはりコロナの影響は少なくないようですね。

堀口 環境が大きく変わるときはダメージもありますが、一方でプラスの要素もありました。まず、今年6月に発売した「キリンレモン スパークリング 無糖」が大変好調だということ。健康志向を背景に、“ステイホーム”での運動不足もあって無糖商品が支持され、レモンフレーバー人気も追い風となりました。おかげさまで、コロナ禍でも「キリンレモン」ブランドは1~9月販売数量は累計で対前年比106%で伸長しています。

 また、9月に「キリン 生茶 ほうじ煎茶」を発売したところ、発売から3週間で2000万本*1を突破。過去3年のキリンビバレッジ新商品*2で最速*3での2000万本突破となり、記録的なスタートが切れました。さらに、健康志向が高まったことで、プラズマ乳酸菌配合の「iMUSE(イミューズ)」ブランドも好調です。1~9月累計で対前年比280%を達成しています。

*1:2020年10月6日時点
*2:該当期間に新発売した商品(リニューアル除く)比較
*3:発売日からの同日比

──コロナ禍で、飲料業界にはどんな変化があったのでしょうか。

堀口 当社だけでなく業界全体でも健康を訴求した商品が伸びていますね。機能性をもった飲料や、糖分を摂らない無糖飲料が伸びています。

 これに加えてコロナ禍の変化といえば、購入場所や容器の大きさでしょう。自動販売機やCVSでの購入が減り、ECや量販店、ドラッグストアなどでの買いだめが起こり、巣ごもり需要によって大型容器が選ばれています。

 また、コーヒーやお茶などはご家庭でご自身で淹れる人が増えているのも特徴的な変化です。外出先では、自分で淹れられないため、パッケージに入ったペットボトルなどの飲料を飲んでいましたが、ステイホームで家にいれば、その必要はありません。こうした生活スタイルの変化もコロナの影響といえるでしょう。

「健康」と「環境」の領域で社会課題を解決する商品開発

──消費者の志向や生活スタイルが大きく変わる中、“ウィズコロナ”時代の商品開発はどうなるでしょうか。

堀口 健康や環境といったキーワードのものが最終的にお客さまに受け入れられると考えており、それをめざしてやっていくことになるでしょう。しかしそれ以前に、キリンビバレッジではもっと大きな考え方のもとで商品開発に取り組んでいきたいと考えています。それが、いかにお客さまや社会と共有できる価値を創造していくかに取り組む、CSVです。

 キリングループとしても、「健康」「環境」「地域社会・コミュニティ」「酒類メーカーとしての責任」という4つのテーマを挙げ、これらの社会課題の解決・改善に取り組むことで、持続的に成長することを指針にしています。それにより、お客さまの豊かな生活や幸せな未来に貢献していく。コロナ感染拡大や自然災害の発生など、先行きを見通せない世の中では、何かしら基軸となるものが必要になります。キリングループ、キリンビバレッジではそれをCSVとし、長期経営構想「キリングループ・ビジョン 2027」における「世界の先進CSV企業となる。」という方針に合致した目標を掲げています。

──つまり、商品開発においてもCSVを切り口にするというわけですね。

堀口 そうです。4つのテーマのなかで当社が力を入れているのが「健康」と「環境」。それらを軸にした商品開発を進めています。まず健康については、3つの領域に分けて考えています。1つは「摂りすぎない健康」。糖分やカフェインを摂りすぎない、無糖やカフェインレスなどの商品群が該当します。2つめは「プラスの健康」。「プラズマ乳酸菌」を使用した商品のほか、機能性表示食品などの商品群になります。3つめは「そのままの健康」。自然のまま、果汁100%の飲料商品がこれにあたります。

 これらの中で、「摂りすぎない健康」と「プラスの健康」についてはとくに力を入れています。「摂りすぎない健康」カテゴリーにおいては、「午後の紅茶 おいしい無糖」が成長していますが、昨年春にはひと手間かけた甘くない*4 微糖紅茶「午後の紅茶ザ・マイスターズ ミルクティー」を新たに発売しました。お客さまのニーズに合わせて、有糖・微糖・無糖のサブカテゴリーを創出することで、「午後の紅茶」のさらなる活性化を図ります。

*4:「キリン 午後の紅茶 ミルクティー ホット」比

 一方、「プラスの健康」では、「iMUSE」ブランドがリーディングブランドです。来年に向けてさらに強化していく考えです。キリングループならではの技術力、商品開発力を強みに、これからもお客さまに価値ある商品をご提案していきたいと考えています。

──環境への取り組みはいかがでしょうか。

堀口 環境破壊につながるプラスチック問題をいかに解決していくか。キリングループでは、ペットボトルの資源循環を推進するため、2027年までに「日本国内におけるリサイクル樹脂使用量の割合を50%に高める」ことをめざしています。当社でも、昨年より「キリン 生茶デカフェ」に再生ペット樹脂を100%使用したペットボトルを採用。目標達成に向けて第一歩を踏み出しています。

日本初!「iMUSE」ブランドが免疫で機能性表示食品に

──今年8月、キリンホールディングスとキリンビバレッジの「iMUSE」6商品が、免疫機能で初めて機能性表示食品として届出受理されました。

 

堀口 機能性表示食品制度が施行されたのが15年。以来、さまざまな機能を届出受理されてきましたが、免疫分野はハードルが高く、免疫効果を謳った機能性表示食品はこれまで存在しませんでした。消費者庁にはエビデンスをベースに申請するのですが、プラズマ乳酸菌は、長年の研究により、この制度に適合できるエビデンスをつくれたことで、今回の届出受理につながりました。昨今、免疫に対するお客さまの関心が高まっているだけに、多くの方々に喜んでいただけるのではないかと思っています。

──「健康な人の免疫機能の維持をサポート」と言えるエビデンスをとれたことは画期的です。

堀口 本当にチャレンジでした。キリンの独自素材「プラズマ乳酸菌」は、免疫の司令塔である「pDC(プラズマサイトイド樹状細胞)」を直接活性化することができます。活性化された司令塔の指示・命令により、免疫全体が活性化され、外敵に対する防御システムが機能します。「プラズマ乳酸菌」を使った商品にはタブレットもありますが、飲料というのは日常的に手軽に摂っていただきやすいもの。その意味で、飲料で唯一となる「免疫」での機能性表示が届出受理されたことは大きな意味があると思っています。

 キリンビバレッジからは、「キリンiMUSE ヨーグルトテイスト」、「キリンiMUSE レモン」、「キリン iMUSE 水」を11月24日より新発売します。

──「iMUSE」ブランドはCSV経営を象徴する商品のひとつといえそうです。最後に、機能性表示食品として「iMUSE」商品が発売されるにあたり、小売業の方々へメッセージをお願いします。

堀口 日本で初めて「免疫」という領域で機能性表示届出を受理された、皆さまに貢献できる商品をお届けすることができます。より多くの方にお試しいただき、そして飲み続けていただきたいですね。それによって、キリンビバレッジは、皆さまの健康や幸せな生活に貢献していきたいと考えています。ぜひ製販一体となって取り組んでいけるよう、お力添えをいただければと願っています。

今年8月、キリンホールディングスとキリンビバレッジの「iMUSE」6商品が、免疫機能で初めて機能性表示食品として届出受理された。