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ツルヤ前橋南店がベイシア本社近くにオープン ツルヤらしさを出しながら、ローカライズを進める売場づくりとは?

長野県内で35店舗を展開するツルヤ(掛川健三社長)は11月12日、初の県外店舗、「ツルヤ前橋南店」をオープンした。群馬県を代表する小売業、ベイシア(橋本浩英社長)の本社から徒歩約20分、旗艦店のベイシア前橋みなみモール店からも近い場所への出店となった。ツルヤ県外1号店は果たしてどのような売場づくりなのか、そして迎え撃つベイシア側の状況は? オープン当日の様子をまとめた。

ツルヤ前橋南店

ツルヤ渋滞が発生!
競合するベイシアの状況は?

 11月12日午前10時、高崎インターチェンジを降りてツルヤ前橋南店へと向かう。インターチェンジの出口からツルヤまでは県道27号線(通称「高駒線」)を2km進むだけ。ところがとにかくひどい渋滞で、車は全く進まない。結局ツルヤの駐車場に辿り着く頃には11時を大きく回っていた。Googleマップ上では27号線はびっしりと真っ赤が続き、Twitterを見ると「ツルヤで5km以上の渋滞」という書き込みも見られた。車はその多くが県内ナンバーで、地元の人がオープン日に大挙して押し寄せた格好だ(註 左折入場のため、片側二車線のうち左側車線がひどい渋滞で、右側車線は多少混雑するも流れていた)

 そのツルヤ前橋南店は、自社開発の近隣型ショッピングセンター(NSC)ツルヤ前橋南ショッピングパークの核店舗として出店。駐車場は420台分を備え、マツモトキヨシやダイソーなどと商業施設を形成する。完全なロードサイド立地で、道路を一本入ると、のどかな住宅地と畑が広がる。競合店としては、東へ800mの距離にしみずスーパー前橋亀里店、南へ約2㎞の距離にはコストコ、カインズ、東京インテリアなどとともに巨大商業集積の核を担う「ベイシア前橋みなみモール店」がある(11月15日修正:「ベイシアからさらに東へ500mの距離にフレッセイ店舗がある」と記述していましたが、正しくはフレッセイ本社で店舗ではありません)

ベイシア前橋みなみモール店は、ツルヤオープン日もお客で賑わっていた

 とくにベイシアは、本部から徒歩20分程度という至近距離にツルヤが出店したこともあり、並々ならぬ対抗心を燃やしているようだ。11時半ごろ別の編集部員がベイシア前橋みなみモール店の状況を確認したところ、SCの駐車台数は満車とは言えないものの目視で6〜7割ほどは埋まっている状況。平日にしては十分な集客だった。またベイシア店内もお客で賑わっており、「10周年誕生祭」のチラシを入れ、黒毛和牛100g598円などの強烈な価格を打ち出すことで対抗している様子がうかがえた。

ツルヤ前橋南店の売場づくりは?

 次にツルヤ前橋南店の売場づくりについてみていきたい。前橋南店は旗艦店の軽井沢店と同等の広さという印象で、地元紙報道によると約3500㎡(軽井沢店は約3300㎡)である。 

 ツルヤの店作りは、売場レイアウトや商品政策(MD)が全店舗でほぼ共通しており、標準化が極めて進んでいるのが特徴だ。前橋南店の場合も既存店と同じレイアウトが採用されており、主通路上は青果からはじまり、反時計周りに鮮魚、精肉、総菜、ベーカリーと続く。平場では酒類、日用品、加工食品、和洋日配を展開し、過度な装飾が一切ないすっきりした売場づくりを行っている。また、青果から鮮魚に至る直線上に中通路が設けられていないのが特徴で、鮮魚まではお客をワンウェイで誘導する。

 その青果売場では、オープンセールということもあり、2ケタ売価の商品を軸にかなり低価格訴求をしていたのが印象的だった。レタス1玉79円(税抜き以下同)、えのき茸各種1袋79円、ふじりんご・名月りんご1玉99円、ツルヤオリジナルのカットサラダ各種(100~120g)1袋69円といった具合だ。もっともお客が集中していたのがこの青果売場だった。一方、鮮魚、精肉売場は混雑はあまり見られず、お客はゆったりと買い物していた。精肉では宮崎黒毛和牛ロース肉100g799円など特売品を随所に差し込んでおり、また、鮮魚売場では刺身の品質が高かったのが印象的だった。

 総菜は揚げ物、弁当、丼、寿司など一通りのカテゴリーを網羅しているが、全体的には売れ筋を中心とした構成。ただ、「アボカドグラタン」といったユニークなメニューを用意したり、「信州名物からしいなり」「ゆずいなり」店内手詰めの「やわらかいなり」「バラエティいなり」などいなり寿司だけで複数SKUを展開しているのは競合他店にはない独自性だと感じた。

 ベーカリー売場も盛況で、その期待の高さをうかがわせた。インストアベーカリー以外にもツルヤ契約工場直送のパンが同店の大きな特徴となっており、ドライフルーツの甘味だけで砂糖・油脂を使わない「ルヴァンスティック」(1本289円)、スイスの伝統製法パン「石窯パリスエッテ醍醐味」(1本419円)などが並ぶ。

ツルヤらしさを出したまま
群馬ローカライズを徹底

 ツルヤといえば、「ツルヤオリジナル」を中心とする豊富なプライベートブランド(PB)商品の品揃えで知られ、ワイン、日配、グロサリーから冷凍総菜まで多岐にわたる。そのPBこそツルヤらしさを体現しており、強固なツルヤファンを増やす原動力になっている。

 同社PBの最大の特徴は、大半の商品が地元長野県のメーカーや生産者と共同開発した商品だという点にある。こうした商品開発はきめ細かな産地開拓が必要で、短期間でできるものではない。

 では前橋南店も「メイドイン長野」が中心の売場なのか、というとそれだけではなかった。想像以上に「群馬」「上州」が打ち出された売場になっているのである。ワインなどの酒類、こんにゃくなどの和日配、そのほか各種グロサリーで群馬のメーカーの商品が数多く導入。たとえば前橋の人気イタリアンのドレッシングなどもPBのドレッシングと並んで販売されていた。

 このようにPBを軸とする「ツルヤらしさ」を全面に打ち出しながらも、食品スーパーとして出店エリアの食生活に合わせたローカライズを行っている点がツルヤ前橋南店の特徴だ。

 今後、群馬県で多店舗化を進めるものと思われ、それに伴って、群馬県地産地消型のPB開発が進むのかに注目だ。