「ファストフード市場はブルーオーシャン」
「日本のファストフード市場は未成熟で、ブルーオーシャン。将来的には国内で3000店以上を展開できる新たなファストフード業態を開発したい」。
イタリアンレストランチェーン「サイゼリヤ」を展開するサイゼリヤ(埼玉県)の堀埜一成社長が、「ダイヤモンド・チェーンストア」誌のインタビューで語った言葉だ。
実はあまり知られていないが、サイゼリヤは国内で勝ち残るための1つの道とするべく、長い年月をかけてファストフードの新業態開発を進めている。
その最新の実験店舗として11月9日にグランドオープンしたのが、新業態「ミラノ食堂」(東京都中央区)だ。場所は東京メトロ「茅場町」駅から南西約300m。飲食店やオフィスが立ち並ぶエリアのオフィスビル1階に入る。
「ミラノ食堂」は、「サイゼリヤ」の看板メニューである「ミラノ風ドリア」を中心に提供するのが特徴だ。
「サイゼリヤ」では、来店客が複数のメニューを組み合わせて楽しむ食事スタイルを志向し、単品ごとの分量を多すぎないようにしている。
これに対して「ミラノ食堂」では、「ミラノ風ドリア」のサイズを1.5倍と1食で満足できるボリュームで提供する。そうすることで、顧客回転率を高めるとともに、テイクアウト利用の比率も向上させるねらいだ。
昼のピーク時にも商品を30秒ほどで提供
客席数は約30席。1人当たり滞在時間は約15分を見込む。
来店客は入店後、カウンターで注文し隣の窓口で商品を受け取る。ほとんどのメニューがテイクアウト可能だ。
顧客回転率とテイクアウト利用比率を高めるために工夫した点の1つが、「ミラノ風ドリア」を短時間で提供可能にすることだ。加熱条件を変更するとともに、熱伝導の具合や厚みが最適な専用のアルミ容器を使用することで、「サイゼリヤ」では約6分かかる調理時間を約4分に短縮させた。
コンベクションオープンで1度に18個焼成可能で、昼のピーク時には来店客がオーダー後30秒ほどで商品を受け取れる体制をめざすという。こうした工夫によりテイクアウト利用比率については全体の4割ほどまで高めたい考えだ。
短時間で完食できる
メニューを中心に提供
メニューは、ランチタイムはドリア3種のほか、パスタ3種、ドリアにサラダ・スープがつく「ザ・定食」(イートイン限定)を提供。17時以降には、サイドメニューやスープ、アルコールもラインアップに加えて、しっかり、素早く済ませられる夜ごはん「サパー」を提案する。
筆者は当日、イートイン限定の「ザ・定食」をいただいた。ドリアの上にカレー、小エビのフライ、温泉卵がトッピングされていて、サラダにスープを合わせて総重量1㎏というボリューム満点のメニューだ。
ただ、スプーン1本で食べ進められるメニューであることと、カレーや温泉卵のとろみもあり、食べるのが遅いという弱点を持つ筆者でも、10分ほどで完食できた。
サイゼリヤはこれまでにも、スパゲッティ専門店「Spaghetti Mariano(スパゲッティ マリアーノ)」やカフェ「リフレスカ」などを実験的にオープンしており、今年2月には「ファストカジュアルレストラン」と銘打った新業態の小型パスタ専門店「伊麺処(パスタドコ)」を東京・浅草と新宿に出店している。
サイゼリヤ執行役員新事業本部長の上田諭氏は「ドリアに特化したファストフード業態の市場があるのかしっかり見極め、多店舗化を検討したい」と話す。
「ミラノ食堂」はファストフード市場を開拓する新規チェーンとなるか。その利用動向に注目だ。
「ミラノ食堂」概要
所在地 東京都中央区日本橋兜町 16-5 Y‘s ビル1F
営業時間 ランチタイム 11:00~15:00 、サパータイム 17:00~22:00 (年中無休)
店舗面積 34 坪