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ニトリVS DCM 島忠をめぐる買収合戦、双方のねらい 買い付け価格はニトリが1300円上回る

ニトリ

ニトリHD、29日にTOBを正式発表 価格は5500円

 家具・ホームファッション専門店を展開するニトリホールディングス(HD)は1029日、ホームセンター(HC)の島忠に対し、公開買い付け(TOB)を開始することを決定したと発表した。島忠をめぐってはHC業界2位のDCMホールディングスが102日にTOBの開始と経営統合契約の締結を発表している。

 ニトリHDが発表したTOB価格は1株当たり5500円。これはDCMが提示する4200円よりも1株当たり1300円上回る。DCM105日から1116日までをTOB期間としており、ニトリHDとしてはDCMTOBが成立する前に、TOBを開始したい考えで、1029日をTOB開始予定日としている。ニトリでは買い付け予定の下限を島忠株式の50%としており、それに達しない場合は応募株券の全部の買い付けを行わないこととしている。

 ニトリHDによれば、ニトリHDが島忠買収の検討を始めたのは、DCMによる島忠買収報道が流れてから。ニトリとしては、HC事業への新規参入が可能になること、島忠の強みがニトリHD傘下になることでよりいっそう発揮されるものとして島忠買収を決定したという。

島忠、その経営とフォーマットの特徴

 島忠は埼玉県を本部に、東京、埼玉、神奈川などの都心部で店舗展開をしている。売場は1階がHC、2階が家具とホームファッションという構成で、それに飲食、食品スーパー、アパレルなどのテナントを導入してショッピングセンター化することで、集客とテナント収入を確保。地代の高い都心部で収益性の高いビジネスを展開してきた。さらに、多くの小売業が物件の賃借がメーンであるのに対し、自社物件を多数保有するのも島忠の特徴。

 ただし島忠は、都心部に大型店を出店するというビジネスモデルゆえに、店舗開発に時間がかかり、成長が緩やかである点が課題。老朽化した既存店のスクラップ&ビルドも同時に進めているため、218月期の店舗数は5期前と比べて3店舗増の61店舗にとどまっている。

 島忠はこれまで実質無借金経営で、手堅い経営を続けてきた。現預金も潤沢で、逆に言えば、成長のための十分な投資が行われてこなかったと言うこともできる。

ニトリHD、DCMが、島忠をどうしても欲しい理由

 一方で、人口の集中する都心部に自社物件を多く展開する島忠は、ニトリHDDCM双方にとって魅力的だ。両社にとって出店の空白地で、本格的に開拓したいエリアだからだ。

 ニトリHDにとっては、「新たな成長の乗り物」の1つとしてHCをとらえているだろう。国内ニトリ店舗が440店舗(20年度2Q末)となり、半期で純増7店舗とその出店速度にも陰りがみられる。だからこそニトリHDは、成長スピードを失わないよう、「ニトリエクスプレス」、「デコホーム」、そしてアパレルの「N+」と新しい乗り物となりうる新業態を次々と試している。島忠買収でHC業界に参入できれば、39537億円(出典:ダイヤモンド・ホームセンター誌)マーケットで、家具・ホームファッションという他のHCにはない差別化売場を武器に、新たな成長戦略を描くことができる。

 一方、HC業界第2位のDCMにとっては、同業のHC企業である島忠を買収することで、極めて手薄な都心部の店舗網を一気に構築することができる(DCMの持分法適用会社であるケーヨーは都心部での店舗は少なく、あっても店舗規模は小さい)。

 島忠は、外国人投資家や機関投資家の割合が多いが、その理由は同社株価を割安とみているためだ。彼らの動向がTOB合戦の結果(TOB価格の修正含む)を左右することになりそうだ。どちらが島忠を奪取するにせよ、HC業界でさらなる再編が加速することは必至の情勢だ。