大阪を地盤に、京都、奈良、兵庫、三重の2府3県に店舗を展開する万代(大阪府/阿部秀行社長)。関西地方のスーパーマーケット(SM)としては、トップクラスの売上高を誇り、厳しい競争環境下でも成長を続けている。15年にはセブン&アイ・ホールディングス(東京都/井阪隆一社長:以下、セブン&アイ)と提携、セブン&アイの関西地方におけるSM戦略の一翼を担っている。取り立ててディスカウント戦略を売りにしているチェーンというわけでもないが、顧客から絶大な支持を集めている。
セブン&アイと緩やかな提携を継続中
万代とセブン&アイが業務提携を結んだのは2015年のことだ。その以前からセブン&アイは関西以西での勢力拡大に力を入れており、天満屋ストア(岡山県/野口重明社長)、近商ストア(大阪府/上田尚義社長、現在は提携を解消)とも提携した経緯がある。
セブン&アイはさらに18年に中国・九州の雄、イズミ(広島県/山西泰明社長)とも提携しており、これにより関西から中国地方での提携先のネットワークはほぼ完成したと言っていい。この提携ネットワークの中で、万代は関西地方における中核的な存在となる。
セブン&アイらしく、万代とは資本提携ではなく、業務提携のみの提携となる。提携発表から5年が経過しているものの、資本提携したというアナウンスはなく、緩やかな提携を続けている。
セブン&アイと提携した当時のあるインタビューを見ても、万代の首脳は「(セブン&アイ側からは)何の要望もない。自由にやってくださいという雰囲気」とコメントしている。連載#7でも記したヨークベニマル(福島県/真船幸夫社長)との提携と同様に、「相手先の自主性を尊重する」というセブン&アイのスタンスは貫かれている。
業績次第では「人を出しましょうとか、追加出資をしましょうか」と要求する企業が多い。「提携先としてはやりやすいのではないか」とセブン&アイの提携スタンスを評価する声も聞こえてくる。資本関係がある訳ではないが、万代側としても、セブン&アイという巨大流通グループの後ろ盾を得ているという安心感もあるだろう。
前期業績は増収・経常減益
万代は非上場であるため、詳細な業績動向は公表されていない。同社HPで公開されている2020年2月期業績は、売上高が対前期比3.5%増の3582億円、経常利益が同22%減の49億円の増収・経常減益だった。
関西地方、とりわけ万代の地盤である大阪エリアではイオン(千葉県/吉田昭夫社長)系のSM企業、SM最大手のライフコーポレーション(大阪府/岩崎高治社長)など大手有力小売がこぞって出店を続けている。万代の減収も、競争の激化とは無縁ではないだろう。
だが、この“コロナ特需”によって、万代もご多分に漏れず、業績が上向いていると見られる。今後は、今回の特需で獲得した新規客をリ固定客化させていけるかどうかが焦点になりそうだ。
絶大な支持の理由は「総合力」か
さて万代は、日本生産性本部のサービス産業生産性協議会が発表した「JCSI(日本版顧客満足度指数)」の2020年度第1回調査において、スーパーマーケット業種の顧客満足スコアで第6位を獲得している。
ちなみに、1位は首都圏地盤の「オーケー」、2位は「コストコ」、3位は「成城石井」、4位に「業務スーパー」、5位が「TRIAL(トライアル)」がランクインしている(いずれも店舗ブランド)。
ディスカウント系のSMが複数上位にランクインする中での万代の6位獲得は、「単に価格が安い」ということだけではなさそうだ。
ある在阪の新聞記者はこう話す。
「たしかに『万代は安い』という印象を持っている人は多いと思いますが、取り立てて安いというイメージはないですね。大阪には安売りをする店が多いですが、万代は生鮮食品の鮮度や品揃えなど『低価格+α』の“総合力”があるといえるのではないでしょうか」
ここでいう総合力とは、目の肥えた大阪の消費者を惹きつけているのは、「SMとしての総合力」ということだろうか。コロナ特需により、SM各社は今のところ堅調な業績を残している。想定外の追い風は、万代の評価をさらに高めることになりそうだ。