小売店経営に欠かすことができない計数管理。個店の売上高や経費の増減ばかりに目がいきがちだが、それだけでは不十分だ。個々の商品が売場でいかに売れているか、逆に動いていないかを把握することが重要だ。なかでもとくに「死に筋商品」の見極めがカギを握る。日本リテイリングセンター「新・流通業のための数字に強くなる本」から、死に筋商品の定義から商品管理への役立て方をお届けする。まずは商品構成の改革のための、具体的な売場構成の進め方を紹介する。
まずは適正なユニット・コントロールから始める
商品構成の改革のために、取り組みたいのがユニット・コントロールである。死に筋退治は重要な対策であるが部分の改善にすぎない。それだけでは商品関連の数字は向上しない。
ユニット・コントロールとは、商品を分類する単位を決め、その単位ごとの販売数量実績を陳列数量と比例させることだ。日本ではユニット・コントロールのことを単品(SKU)管理と訳すが、正しくない。販売データに基づいてSKUの動向だけで判断することになり、弱点は先に述べたとおりだ。
ユニット・コントロールの流れは、次のとおりである。
① 現状の赤字部門をやめる。フォーマット上その部門をやめられないなら、再編して黒字化するのか、売場貸しをするのかを決める
② 部門内はTPOSの範囲内で客層が広く販売頻度の高いベーシックな品種を揃える
③ TPOSを絞り込んで該当する商品ラインに徹底する(効率の悪い商品ラインはカットする)
④ 次いで価格ライン(売価の種類数)を少なくする
⑤ 売れ筋の商品ライン内の品目を増やす
⑥ 売れ筋商品を拡大(マス化)する
⑦ 結果、ラインロビングできる(※注)
このように単位は部門→品種→商品ライン→価格ライン→品目と徐々に細分化する方が有効だ。狙うTPOSで互いに関連する組み合わせを完全にするためである。陳列量は、売れる商品は大量に、あまり売れない商品は少量とする。つまり品目ごとに陳列量を販売量に比例させ、陳列量に大幅な格差をつけるのだ。
この結果があるべき棚割りとなり、これを基に標準化を進めるのである。
あるべき棚割りが決まれば、なんとなく発注してしまったことによる過剰在庫や、発注忘れによる欠品は発生しなくなる。最近は自動発注が進んでいるが、あるべき棚割りを決めずに進めても精度は低い。
つまりユニット・コントロールの目的は、①スペース生産性の向上、②商品回転率の標準化、③棚割りの標準化、これらの結果として販売効率と労働生産性を大幅に向上させることである。
(※注)ラインロビング:品揃えの総合化の手法。品種ごとに特定の価格帯に属する商品を揃え(商品ライン)、他社からお客を奪取(ロビング)すること。
新商品開発より前に商品管理の基本に戻れ
ここ数年、経済環境が厳しさを増すにつれて、商品を安く売らなければならない、しかも品質も高めなければならないと言われることが多い。他方、成功した事例が大きく報道されるためか、商品開発を活発に行うことが必要だとも言われている。
だが、まずは商品管理の基本問題と取り組むことが先である。制度としてユニット・コントロールのできる体制がない限り、企業としての本筋の戦闘力はつかない。
具体的には、店舗運営部、商品部、物流部の三者合同で13週に1回は必ず、重点を絞った同じテーマについて、調査を繰り返すことである。
これに対して商品開発はそう簡単に結果は出ない。非常に順調に進んだときで6ヵ月、通常ならば1年以上たたないと日の目は見ない。商品の品質を改めて決め直すトレードオフに取り組むことになれば、3年はかかる。
しかしユニット・コントロールは3ヵ月で効果が出るものなのだ。