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コンビニのPB強化が進むなかでファミリーマートがあえて慎重になる理由

コンビニ業界2位のファミリーマート。2016年9月に社長に就任した澤田貴司氏は、サークルK・サンクスとのブランド統合だけでなく、商品構成、店頭オペレーション、さらには自ら前面に露出するマーケティング手法など様々な改革を進めてきた。昨今、競合ではプライベートブランド(PB)商品を強化しているが、ファミリーマートではそれほど店頭で見かける機会は多くない。これには明確な理由がある。上阪徹氏の著書「職業、挑戦者」からその一端をお届けする。

あえてPB商品を前面に打ち出さないファミリーマートの戦略とは

なんでも自前ではなくメーカーとウィンウィンになる仕組みが重要 

 大手コンビニや大手スーパーの商品戦略といえば、PB商品の強化がある。店舗に入ってすぐのスペースに、ずらりと小売り自社のブランド名の入ったお菓子などの食品が並んでいる店舗も少なくない。だが、PB戦略については、澤田は実は懐疑的に見ている。

「コンビニというと、お弁当や総菜の中食に力を入れないといけない、商品を開発しないといけない、というイメージがあります。たしかに利益率の高いこれらの商品は大事です。でも売上げに占める中食の割合というのは、そうはいっても30~35%なんです」

 それ以外の65~70%は何を売っているのかというと、他のメーカーがつくった商品を売っているのだ。

「PB商品といっても、結局はメーカーさんがつくっているわけです。日本を代表するナショナルブランドのメーカーさんはすごい技術や開発力がある。なんでもかんでも自前でやろうとせずに、メーカーさんとお互いがウィン-ウィンになる仕組みが重要だということなんです」

 メーカーにとって、自社の名前が出なくてもPB商品を手がける理由は、大きく2つ挙げられる。大手チェーンの売り場に商品を並べられ、棚を確保でき、売上げのチャンスが得られること。そして、ブランドを変えることによって、自社ブランドではできない価格設定ができることだ。

「それ自体、僕は否定しませんが、大事なことは、お客さまにとっての価値だと思っているんです。たとえば、ファミリーマートだけのものが店頭に並んでいても、それがお客さまにとって魅力的な売り場といえるのでしょうか。それよりも、メーカーさんの知名度や信頼感も借りながら、一緒になって、ファミリーマートの売り場をどう盛り上げられるかを考えたほうが、お客さまにとってもいいんじゃないかと考えたんです」

 それなら、新しい価値を生み出せるということだ。

「ファミリーマートの売上げは年間3兆円あるわけです。カテゴリーによっては、1社で数百億円の売上げになることもある。こうなると、ちょっと何かつくってほしい、とお願いするのは難しいことではない。メーカーさんには開発力も技術力もありますから、それはできます。でも、こんなことをしていて、本当に付加価値につなげられるのか、と思うわけです」

 それよりもメーカーとガッチリ一体になって商品や売り場をつくる。52週計画にメーカーにも入ってもらって力を合わせてつくっていく。

「もっとメーカーさんをリスペクトするということです。ファミリーマートの商品開発担当者に、メーカーさん以上の開発力があるんだったらいい。でも、ないわけですよ。日本のメーカーの技術力はスゴイ。それだったら、もっとメーカーさんと一緒に掛け算の取り組みをしたほうがいいんではないかと」

加盟店が楽しく販売できる企画 

 PBにして、ファミリーマートブランドで売るという一辺倒ではなく、堂々とメーカー名で売ろう、ということだ。あるいは、ファミリーマートとのダブルネームで売る。すでに、そのトライアルは始まっている。新たな付加価値を生み出すのだ。

「そうすれば、メーカーさんだって燃えると思うんですよ。メーカーさんは、自分たちの会社に、ブランドに、誇りを持っているわけじゃないですか。その現実に気づかないといけない」

 一方でファミリーマートには、店舗という付加価値がある。全国1万6500店の店頭の発信力は驚異的なものがある。この付加価値を活かして、共同で商品をつくっていくのだ。
 この付加価値を活かした新しい取り組みが2018年からすでに始まっている。さまざまなカテゴリーの有名ブランドのメーカーとコラボしたキャンペーンを月替わりで企画したのだ。

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「春のお菓子、夏のドリンクなど、そのカテゴリーが一番売れるときに、一番売れるメーカーさんと、これまで以上に強力なタッグを組んで、お客さまや加盟店さんに喜ばれる施策を毎月、実施していくんです」

 協力メーカーに選ばれたメーカーに対しては、社長の澤田自ら、「この月は、みなさんの月です。一緒に売り場を盛り上げるために考えていきましょう」と提案するという。

「そして加盟店さんにもモチベーションを上げて取り組んでもらうために、キャンペーンで頑張った加盟店さんを、報奨する仕組みをつくりました」

 これには加盟店からも大きな反響があった。報奨には、海外視察やメーカーの工場見学なども組み入れられ、いままでのキャンペーンにはない規模だったという。

「森永製菓さんのチョコボールとファミチキ先輩が組んで、『キョロチキ先輩』というキャラクターを新たにつくったんです。これから、こういう仕掛けもやりますよ」

 これまでのレビューを踏まえて、仕組みや仕掛けもどんどん変えていく。来店客にどれだけ響くのかという視点に加えて、加盟店が楽しんで販売する企画になっているかという点を何より重要視しているのは澤田らしい売り場改革だ。