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AIとビッグデータでサプライチェーンを最適化!物流ベンチャーHacobuとライナロジクスが業務提携

高齢化や人口減少などによる人手不足や、小口配送の増加などを起因とする積載率の低下など、さまざまな課題を抱える物流業界。これらの課題を解決するため、物流ベンチャー企業のHacobu(東京都/佐々木太郎社長)とライナロジクス(千葉県/朴成浩社長)が業務提携したことを発表した。2社の取り組みと業務提携の内容についてレポートする。

写真はイメージ(cybrain / iStock)

物流ビッグデータでサプライチェーン全体を最適化

 2015年に創業したHacobuは、「運ぶを最適化する」をミッションとして、メーカーや卸、小売、3PL(サードパーティー・ロジスティクス:他社から委託された物流業務を担う企業)、運送事業者など多くの関係者で構成されるサプライチェーン全体の最適化をめざしているベンチャー企業である。そのために同社が注力しているのが、物流ビッグデータの収集だ。

 Hacobuは、物流データを集めるために自社開発した物流情報プラットフォーム「MOVO(ムーボ)」を活用している。トラックバースの予約システム「MOVO Berth(ムーボバース)」や、配送車両のリアルタイム情報を把握できる動態管理システム「MOVO Fleet」など、合計5つのアプリを物流各社に提供、各アプリとMOVOを連携させ、物流ビッグデータを収集している。

Hacobuは5つのアプリを活用し、物流ビッグデータを収集している

 MOVOは、日本通運(東京都/齋藤充社長)などの物流会社のほか、共同仕入れ機構のシジシージャパン(東京都/堀内要助社長)やオフィス用品を販売しているアスクル(東京都/吉岡晃社長)、家電量販店大手のビックカメラ(東京都/宮嶋宏幸社長)など、小売企業での導入事例もある。

 2000年に創業したライナロジクスもHacobuと同様、物流に関わる業務の効率化・改善を事業としており、そのためのシステムやソフトウェアの開発に注力している。AIを活用した自動配車システム「LYNACLOUD(ライナクラウド)」など、AIやオペレーションズ・リサーチ(OR)の分野における最先端の研究成果を実用化したシステムを提供している。

2社の提携で物流業務の効率アップをめざす

 業務提携後の取り組みの第1弾として、前述したHacobuのムーボバースとライナロジクスのライナクラウドをAPI連携させる。ムーボバースはトラックバースの予約や物流施設における入退場受付をオンライン上で管理する仕組みで、ドライバーの長時間待機や物流拠点の庫内作業の非効率性といった課題の解決を手助けする。ライナクラウドは、配送オーダーを入力するだけで必要な車両台数を素早く見積もり、各車両の配送ルートの自動作成が可能となるクラウド型のシステムで、配車業務の効率化や輸送時間の最適化に役立つ。

2社のアプリをAPI連携することで、配送業務や庫内作業の効率が飛躍的に高まる見込みだ

 両システムのAPI連携により、ライナクラウドでの配送計画作成時に物流施設のバース空き状況の照会や、バースの予約確定後に自動で配送計画への反映が可能になるなど、バース状況を考慮した配送計画の作成がワンストップで実現するため、配送業務や庫内作業の効率が飛躍的に高まることを見込んでいる。両システムの連携は20年内に実現する予定だ。「自社のシステムだけでは、納品先での滞在時間が予想しづらい場合もあったが、ライナクラウドとの連携で滞在時間の削減や車両の効率的な利用が可能となる」(Hacobu佐々木社長)。

物流業界の「合成の誤謬」をデータで解消

 「物流業界では、各社の業務効率化の取り組みが他社にとってもメリットを与えるわけではなく、サプライチェーン全体の効率化を妨げる『合成の誤謬(ごびゅう)』が多く発生している」と佐々木社長は話す。たとえば、運送業者からすれば一度にたくさんの商品を積んだほうが積載率が高くなるが、小売店が在庫を多く持つと廃棄率が高まる可能性がある。このような合成の誤謬を解消すべく、Hacobuは個社ではなくサプライチェーン全体の最適化をめざしさまざまなデータを集め、ライナロジクスのような他社が開発したアプリとの連携にも乗り出している。

 小売業にとって物流は切っても切れない関係である。AIやビッグデータなどを活用した物流ベンチャーの取り組みが、小売業界の課題の1つでもある物流費の削減につながれば、小売業も大きなメリットを享受することができるだろう。そのためには小売各社もサプライチェーン全体の最適化のため、他社との連携が必要なのではないだろうか。