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ドラックストア商品がスーパーマーケット生き残りの「最重要商材」になりえるこれだけの理由

昨今のスーパーマーケットではグローサラントに注目が集まる中で、流通コンサルタントの有田英明氏は実需として見込めるのはDSG(ドラッグストア)商品だと提言する。その商品特性と具体的な展開のエッセンスを同氏の著書「ドラッグストアの教科書」から一部編集してお届けする。

 「ついで買い」されやすいカテゴリー

  スーパーマーケット(SM)の生き残り戦略としてDGS商品の獲得は、効果は大きくリスクは小さい。DGSにとって 11 月から翌年3月は重要な期間である。風邪薬、皮膚薬、胃腸薬、鼻炎薬 といった医薬品の売上高構成比が上がるからだ。特に鼻炎薬は重要で、利益貢献度が高いのでDGSの経営者は「今年の花粉飛散の状況」に一喜一憂する。

 医薬品には「ついで買い」されやすいカテゴリーがたくさんある。例えば目薬、コンタクト用品、ドリンク剤、ビタミン剤、胃腸薬、関節薬、サポーター、そして鼻炎薬等である。ビューティケアや雑貨も「ついで買い」されやすい。ハウスキーピングニーズの商品は、習慣的に買われる商品であり、「ついで買い」されやすい。

 これらの商品は、1日の来店客数が1000人のDGSよりも、1日の来店客数が3000人の地域一番のSMのほうが売りやすい。お客からしても、週に何度も買物に行くSMで購入したほうが便利である。SMによるDGS商品の獲得は、業態論で言うならば「日本型フード&ドラッグ」である。

 問題は、日本型フード&ドラッグの開発では「あるべき論」「理想論」からスタートしてもうまくいかないことだ。SMによるDGS商品の獲得では、既存店を含めた全店の売場活力化のテーマで取り組むことが急所になる。

 本部スタッフの知力と労力を結集して、素晴らしいフード&ドラッグを1店舗だけつくっても、企業経営からすればほとんど意味はない。1店だけでは企業の業績に大して影響は与えない。

 日本型フード&ドラッグの開発では、既存店の数値も変えることを前提に戦略的に取り組む必要がある。DGS商品の獲得に取り組む際の手順が以下である。

展開規模に合った売場修正と拡大を

 フェーズ1のテーマは「既存店のノンフーズ売場の修正」である。具体的には定番棚割りの改善、プロモーション売場の拡大、売れ筋の発見とプロモーション売場での「爆発点MD」である。フェーズ1は小規模な売場改善なので、低コストで低リスクである。全店で取り組めるし、効果は大きい。

 実のところSMのノンフーズ売場は改善すべきところが多い。多くのSMはいまだにPOSデータランキング上位品目と、メーカーや卸売業が売れると断言する品目と、安売り効果が大きい品目を並べているだけだ。したがってこのフェーズ1だけでも相当に効果は大きい。

 フェーズ2のテーマは「既存店の改装によるカテゴリーの適正規模の実現」である。フェーズ2は什器レイアウトの変更といった中規模の売場改装なので、中コストで中リスクである。

 具体的には優先順位が高いカテゴリーの定番スペースを拡大する。客数が多く視認性が高いロケーションへの移動、同時に優先順位が高いプロモーションテーマのスペースを拡大、客数が多く視認性が高いロケーションへの移動、そして「爆発点MD」である。フェーズ3のテーマは「日本型フード&ドラッグの開発」である。フェーズ3は新業態開発なのでハイコストでハイリスクである。

 日本型フード&ドラッグの開発では、カテゴリーの優先順位の明確化、カテゴリーの適正規模の実現、カテゴリーの組み合わせの実現が急所になる。原則的にはフェーズ1→フェーズ2→フェーズ3の順に取り組んだほうがリスクが低減化できる。フェーズ1、フェーズ2、フェーズ3にしても、急所は売れ筋カテゴリーの発見と育成、売れ筋品目の発見と育成である。

 ちなみに売れ筋カテゴリーとは「どの品目というよりも全体が売れているカテゴリー」のことである。例えば乾電池や歯磨き、シャンプー等のカテゴリーである。これらの売れ筋カテゴリーは、適正規模で展開することが急所になる。

 ハウスキーピングニーズのマーケットを付加価値で分類する方法がある。付加価値が低くて価格も安く、しかしマーケットが大きいのが「生活必需品マーケット(ベーシックゾーンマーケット)」である。一方、付加価値が高くて値段と利益貢献度も高いのが「生活向上品マーケット(スペシャリティゾーンマーケット)」である。

 DGS商品の獲得では「生活必需品マーケット」から狙っていく。低単価で低粗利益高で価格競争も発生しやすいマーケットだが、確実に売上と利益が見込めるからだ。

障壁は「無意識の商品差別」

 生活必需品マーケットを獲得できたら、次のステップとして「生活向上品マーケット」を狙っていく。生活向上品は潜在需要であり、お客からすれば「あったほうが生活水準が向上するが、なくてもそれほど困らない」という商品である。つまり生活向上品は売るのが難しい。

 生活向上品は売れれば売上と利益に多大な貢献をする。またお得意さまも創る。しかし売れなければ売上と粗利と在庫回転とロスとコストが悪化するリスクもある。生活向上品は売るためのハードルは高い。したがって生活必需品の販売が軌道に乗ってから取り組んだ方がリスクが最小化できる。

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ハウスキーピングニーズを部門で分けると、ヘルスケア部門、ビューティケア部門、雑貨部門に大別できる。ヘルスケア部門の導入だが、第2類と第3類の医薬品であれば比較的簡単である。調剤は相当に難しい。

 ビューティケア部門は、トイレタリーは比較的簡単である。化粧品は導入そのものが難しい。化粧品部門は育つまで時間がかかるので、在庫回転主義ではやれない。美容部員の育成も必要になるからだ。

 雑貨部門は比較的簡単である。とはいえ、ヘルスケア、ビューティケア、雑貨にしても 52 週MDと店頭での作業動作を確立することが前提になる。また先に述べたように、生活必需品の導入は比較的簡単だが、生活向上品の導入は難しい。  SMが強化すべき部門としては食品もある。レトルト、インスタント、冷凍食品、乾麺と いった簡単便利食品、それに菓子と酒類も取り組めば売上高と粗利益高は改善する。

 実のところSMによるDGS商品の獲得において一番の障壁となるのが「無意識の商品差別」である。SM業界では生鮮4品が一番の価値であり、そのほかの食品は2番目の価値であり、ノンフーズは価値が低いとの意識が強い。例えば「殺虫剤や除草剤は品がない」という意見もあったりする。

 お客からすれば本マグロの刺身も、乾電池も、2Bの鉛筆も、除草剤も価値は同じである。つまりDGS商品の獲得では「商品に貴賤はない」という意識の徹底が必要になる。