ベイシア(群馬県/橋本浩英社長)は3月6日、群馬県北群馬郡吉岡町の食品スーパー「ベイシアフードセンター前橋吉岡店」(以下、前橋吉岡店)を改装し、マルシェのような買物空間をコンセプトに掲げる新業態の1号店としてオープンした。他社との差別化をめざし、本格フレンチのコースメニューを低価格で販売するという試みに挑戦している。
ストアコンセプトは
マルシェ+ベイシア=「マルシア」
しかし今年1月には、店舗から南約400mにディスカウントストア「ドン・キホーテ群馬吉岡店」がオープンするなど店舗周辺の競争は年々激化しており、競争力向上を図るべく新業態としてリニューアルオープンするに至った。
彩り豊かな空間 高い鮮度を提供
では、実際にどのような店づくりを行っているのか。写真とともに紹介していこう。
ベイシアは19年に創業60周年を迎えたのを機に、新しい店づくりを開始。出入口すぐの場所に、青果売場、総菜売場、ベーカリー&カフェ「Hana Cafe」を集中配置した売場づくりを進めており、前橋吉岡店ではこれをさらに進化させている。
青果売場では、マルシェのような空間構築をめざした。改装を機に市場にバイヤーを配置し、商品を直送することで従来より高い鮮度を実現。陳列においてはカラーコントロールを意識した商品配置で彩り豊かな売場を追求している。さらに売場に使用するサインボードにも新しいデザインを採用した。
総菜売場に続々と
増える新コーナー
総菜売場では、店頭の素材を使用し部門横断型で開発する総菜を集積した「スーパーデリカテッセン」コーナーを売場中央で展開。前橋吉岡店では、その商品ラインアップを広げているのが特徴だ。
ベイシアは最近の新店で、鶏肉を使ったメニューの「千羽鶏(せんばどり)」、海老料理の「寿老舗(じゅろうほ)」など、ショップのような売場のコーナー化を進めてきた。
同店では新たにグリル肉総菜の「Deli Viande(デリ ヴィアント)」、近畿大学が完全養殖する「近大マグロ」のサクや刺身を揃える「近大ショップ」、海鮮丼「彩香路(さいかろ)」などの新たなコーナーを投入している。
2000円以内で楽しめる
本格フレンチコースを提案
総菜の新しいコーナーのなかでも注目したいのが、フレンチメニューの「Bon Repas(ボン ルパ)」だ。本格的なフレンチメニューを提案することをめざして、バイヤーが取引先メーカーと協力し、約3カ月で開発したものだ。前菜からスープ、メーンディッシュ、デザートまで計約25SKUを販売。前菜などはアウトパックだが、多くの商品を店内調理で提供する。
写真はメニューの一例だが、いずれもフレンチ風の見た目、味付けにこだわっていることがわかる。注目したいのは価格だ。「より良いものをより安く」を掲げるベイシアの方針を踏襲し、1品目を500円以内、コースで買い揃えても2000円以内で収まる価格設定とした。
筆者もオードブルとハンバーグを購入し、実際に食べてみた。オードブルは、なかなか食べ慣れないメニューで評価が難しかったが、ハンバーグはソースにフォアグラの風味が効いた“本格感”があった。日常の食卓のなかで異国の本格的なメニューを低価格で味わえたという満足感も得られたように思う。
新しい店づくりの
成功例を深堀り!
さて、ふだんの食卓に必要な食材の提供をメーンとする食品スーパーにおいて、ベイシアはなぜ本格的なフレンチメニューの開発を行ったのか。
橋本浩英社長は「本格的なフレンチメニューを、総菜売場で、ここまで低価格で提供できている食品スーパーはほかにない。お客さまに売場でエンターテインメント性を感じてもらうとともに、業界全体に一石を投じたいと考えた」と話す。
さらに橋本社長は「競合が激化するなか生き残っていくためには、他社と差別化を図り、新しい客層を開拓できる店をつくる必要がある」と述べる。
実際、すでに新しい店づくりを進めてきたベイシアの店舗では、客数が増加し、かつ利用者全体に占める10~20代の若年層の割合が既存店平均の約5%に対し約10%と伸長する効果が出ているという。そこで、新しい店づくりをさらに進化させた新業態「マルシア」の出店によりこうした効果をよりいっそう発揮したい考えだ。
今後ベイシアはこの新業態の店舗を広げていく方針で、前橋吉岡店よりもさらに完成度を高めた店を今年夏までにオープンする計画だ。
【ベイシア前橋吉岡店 概要】
電話 0279-55-6222
営業時間 10:00~20:00
売場面積 3397 ㎡