新年あけましておめでとうございます。2025年最初のテーマとして、今回は「2025年アパレル業界大予想」をお届けします。2025年のアパレル業界を取り巻く変化の諸相を5つのテーマから占い、どんなことに注意すべきかを明らかにしていきます。
予測1 激安EC隆盛がユニクロ一強を招く
1つ目は、「激安EC隆盛がユニクロ一強を招く」だ。
2024年は、Temu(テム)、SHEIN(シーイン)など激安ECが猛威を振るった一年だった。「Temuって何?」という感じから、誰もがTemu、SHEINなどを普通に買う時代が来た。超円安時代に苦しんでいるのはセレクトショップだ。ウールのプライベートブランド(PB)コートがなんと20万円、イタリア製のパンツが5万円台と、とても一般人が手を出せる値段ではなくなってきた。私も昨年は一本もパンツを買わなかった、というより、買えなかった。
こうした状況で、以前と同じ生活レベルを維持できるのはDINKS(Double Income No Kids)くらいで、ますます日本の人口減少は進んでゆくだろう。若者のファッションを見て気づくのは、“よれた”服を着ている点だ。もちろん彼らなりにおしゃれを楽しんではいるのだが、それは激安ECなどを上手に取り入れているというもので、本当に良いものを手に取る機会はますます減っている。逆説的だが、こうなるともはやユニクロの一人勝ちは揺るぎないものになるだろう。ユニクロ品質と価格が多くの若者にとって、最も“上”になるからだ。
予測2 アジアで轟く神話と円安で、都心百貨店はさらに売上拡大
2つ目は「アジアで轟く神話と円安で、都心百貨店はさらに売上拡大」する、だ。
地方の百貨店は相変わらず苦しいが、都心部の百貨店はインバウンド需要でますます潤う。円安が“反作用”をおこしてインバウンド客にとってとても買いやすい値段になっているからだ。「日本の百貨店は品質がよい」という百貨店神話はアジア全体に広がっており、ここに円安でコスパが高まり、「今が買い時!」とばかりにインバウンド客が押し寄せ、百貨店が潤っている。
「日本は観光立国を目指す」と政府は叫んでおり、この百貨店の好調は当面続くだろう。しかし、しばらくすれば消えてなくなるだろうと思われていた百貨店が息を吹き返すとは、アパレル業界は本当に面白い。
河合拓氏の新刊、大好評発売中!
「知らなきゃいけないアパレルの話 ユニクロ、ZARA、シーイン新3極時代がくる!」
話題騒然のシーインの強さの秘密を解き明かす!!なぜ多くのアパレルは青色吐息でユニクロだけが盤石の世界一であり続けるのか!?誰も書かなかった不都合な真実と逆転戦略を明かす、新時代の羅針盤!
予測3 外資による日本アパレル買収が、日本企業のアジア進出を牽引する!
第三の論点はM&A(合併・買収)で、私の予測は、「外資による日本アパレル買収が頻発し、その結果、日本企業によるアジア進出が活発化する」というものだ。
2024年もいくつかの企業買収が新聞紙面を飾ったが、2025年はもっと買収が加速するだろう。私は昨年、某メディアの編集長と2025年の企業買収劇について語り合った。彼は、大手アパレルによる小ぶりなアパレルの買収が進むと言っていたが、私は賛成しなかった。私は、外資アパレル、外資ファンドなど、海外のアパレルやファンドの企業買収が進み、否が応でも日本のアパレルの国際化が進むと述べた。勝負はあったようで、この予想はどうやら私の勝ちのようだ。私が「外資アパレル、外資ファンドがM&Aの主役になる」と考えるのは、日本のアパレルが過度なドメスティックビジネス偏重主義から脱却しなければならないという危機感もある。日本のアパレルのバリューアップのキーは国際化である。だから、外資に牽引される形で海外、それもアジアに出て行くのだ。2025年は日本のアパレルの国際化がますます進むだろう。
予測4 アパレルのSDGs対応進む
第四の論点はSDGs(持続可能な開発目標)である。誰も口にはしないものの、大多数が「面倒だ」と思っているのが実はSDGsである。しかし2024年の猛暑は人類が生きてゆけるラインを超えているかのように感じるほどだった。このまま温暖化が進めば、地球は一体どうなるのだろうか。2024年は、夢物語からリアルな話へ移行した年だった。なんの根拠があるわけでもないが、今年はさらに猛暑が地球を襲う気がしてならない。このまま自由な企業活動を放置するのではなく、政府なり機関がある種の“強制力”をもって対応すべきだろう。例えば、私が数年前から訴えている在庫税などの導入を急がねば取り返しのつかないことになる。たかが服、されど服だ。なめてかかるととんでもない目にあう。
予測5 ファーストリテイリングは過去最高益を更新する
最後の論点はユニクロ。私の予測は「ファーストリテイリングは過去最高益を更新する」だ。相変わらず好調なファーストリテイリングだが、2025年も最高益を更新するだろう。ひょっとしたらZARAに追いつくかもしれない。ユニクロは東南アジアに未開の地が山のようにあり、過去にない大型M&Aを仕掛け、一気に店舗を拡大する可能性もある。
ユニクロだけは他のアパレルと同列で考えてはならない。“別物”と考えるべきだ。
河合拓氏の新刊、大好評発売中!
「知らなきゃいけないアパレルの話 ユニクロ、ZARA、シーイン新3極時代がくる!」
話題騒然のシーインの強さの秘密を解き明かす!!なぜ多くのアパレルは青色吐息でユニクロだけが盤石の世界一であり続けるのか!?誰も書かなかった不都合な真実と逆転戦略を明かす、新時代の羅針盤!
プロフィール
株式会社FRI & Company ltd..代表 Arthur D Little Japan, Kurt Salmon US inc, Accenture stratgy, 日本IBMのパートナー等、世界企業のマネジメントを歴任。
著作:アパレル三部作「ブランドで競争する技術」「
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/