首都圏で生鮮宅配を展開するパルシステム生活協同組合連合会(東京都/大信政一理事長:以下、パルシステム連合会)の新たな物流センター「熊谷センター」(埼玉県熊谷市)が竣工した。敷地面積は約3万3000㎡、投資額は約100億円といずれも同連合会にとって過去最大だ。
2月6日に開催された内覧会ではその内部を公開。訪れてみると、世界の先進的な生鮮宅配サービス同様のシステムや設計を導入した、最新鋭のセンターの姿があった。
ねらいは需要が伸びる
チルド商品の売上拡大
今回の新物流センターの背景にあるのは、ミールキットの「お料理セット」といったチルド商品の需要伸長だ。
まさに今後の成長の土台とも言える熊谷センターにおいて、パルシステム連合会は最新のシステム導入により、省人化と省力化、そして高い生産性の実現をめざした。同社の従来型の物流センターでは、人員を177人配置して1人510件だったが、熊谷センターでは、86人配置して1人930件(ともに1時間当たりの処理件数)をこなせるようになるという。
英国テスコも導入する
集品システム「BPD」を採用
では、熊谷センターはどのような設備を導入しているのが。大きな特徴の1つは、トーヨーカネツ(東京都)の2つの最新の集品システム「BPD(ブランチ式ピックディレクター)」と「GTP(Goods to Person)」と、既存のシステムを組み合わせて設計し効率化を図っている点だ。
「BPD」は、コンベア上を流れる集品箱が、必要箇所にのみ分岐して作業者の場所に向かうというもの。作業者のもとには必要のない集品箱が運ばれてくることがなくなるため、待ち時間を短縮できるとともに、全体の作業効率が従来より3割ほど高まるという。
同連合会の物流全般を担うパルライン(東京都/太田賜嗣夫社長)の物流再編推進室室長の飯野恵氏はBPDについて「英国のテスコ(Tesco)でも生鮮宅配の冷蔵品の集品に採用しているシステム。国内では食品の分野で導入している企業はまだないのではないか」と話す。
「GTP」は、アマゾンジャパン(東京都)をはじめ大手ECも導入しているとされるシステムで、要求とおりの順番で商品を作業者に運ぶというもの。作業者は運ばれてきた商品を集品箱に投入するだけなので、作業が単純化されるためミスを減らすことができる。「商品のピッキングミスの発生率は従来40ppm(100万回のオーダー中40回)ほどだが、同センターでは10ppmほどまで減らせる見込み」(同連合会の物流担当者)。
ハイブリット式の
システム導入を可能にする
「順立てマルチシャトル」
さらにパルシステム連合会は、熊谷センターの設計にあたって、高度な物流網を構築しているデンマークやイギリスの生協も視察し、先進事例を取り入れた。たとえば「少ない従業員数で連携が図りやすいように、センター内には仕切りをつくらず1フロアでは全体を見通せるようにしている」(飯野氏)という。
所在地 埼玉県熊谷市樋春袋田1223-3
階数 地上2階建て
敷地面積 約3万3000㎡
延床面積 約2万865㎡