メニュー

再ブレイクするか!?都内でひそかに復活した「東京チカラめし」

一時は大きな話題を生んだ焼き牛丼「東京チカラめし」が東日本地域から姿を消して半年超。東京法務局などが入る九段第二合同庁舎(東京都千代田区)に5月7日、「東京チカラめし食堂」という名の焼き牛丼と日替わり定食の店がオープンした。同店開店の経緯や今後のブランディング戦略などについて、運営会社であるSANKO MARKETING FOODS(サンコーマーケティングフーズ:東京都/長澤成博社長)で執行役員開発部部長を務める小川直樹氏に話を聞いた。

牛丼の新たなジャンルを切り開く

 「東京チカラめし」を運営するSANKO MARKETING FOODSは「アカマル屋」「焼肉万里」「金の蔵」などの飲食・小売事業に加え、2020年には静岡県沼津の沼津我入道漁業協同組合(静岡県/植松敏征代表理事組合長)と業務提携し、水産事業を参入。また、官公庁内の食堂やレストランの受託事業も展開するなど、ビジネス領域を拡大している。

 ピーク時には国内に130店を展開していた「東京チカラめし」は、“焼く牛丼”という新たな牛丼ジャンルを切り開き、その知名度を高めるとともに、同社の飲食ブランドのけん引役として大きな影響力を持っていた。

 しかし急速な店舗拡大に伴い、さまざまな課題を抱えるようになり、首都圏唯一の直営店である「新鎌ヶ谷店」(千葉県鎌ケ谷市)を昨年11月に閉店。国内はフランチャイズ運営の「大阪日本橋店」(大阪府大阪市)だけになった。

ブランド復活と業態の再構築へ!

 2011年に「東京チカラめし」ブランドが誕生し、当時珍しかった「焼くお肉+どんぶり」というファストフードにチャレンジ。ビジネスを拡大した同社は、1号店の東京・池袋店を皮切りに100店以上を出店した。しかし人材育成やオペレーション面における課題も多く、また新型コロナウイルスの影響により閉店が続いた。とくに多くのファンに支えられていた東京・新宿と新鎌ヶ谷の店も、定期借家契約が終了となり、惜しまれながらも閉店した。

 「東京チカラめし」ブランドの復活と業態の再構築をめざし、新規出店先を探索する中、コロナ禍から携わっていた官公庁などの受託事業先施設に入札し選ばれ、「東京チカラめし食堂」がオープンする運びとなった。出店地は東京都千代田区、立地としても支持の高かった「半蔵門店」(東京都:214月閉店)と商圏が近いこともあり、出店を決断したという。

食堂内の風景

 同店について小川氏は「職員の福利厚生施設という特性上、11時から1430分までの限られた営業時間ではあるが、1日約300人の利用があり、チカラめしブランドが支持されているという手応えを感じている」と話す。客層は約9割が職員、残りの1割が訪問者であると考えられており、立ち上がりも好調だという。

国産牛の使用や「二毛作」業態化を模索

 東京チカラめしはお客だけでなく、社内にも思い入れの強いメンバーが多数いる業態だった。だからこそ新規出店における社内の意見を一致させることは難しかったという。

 そうした中、復活1号店として「食堂」をオープンした同業態における今後の戦略について、小川氏は「まずは東京チカラめし食堂で、『チカラめしモデル』を作りたい。10年前と比べ牛肉の価格も大きく変わっている。その点も踏まえ、本食堂でリブランディングできればと思っている」と語り、今後1年以内に運営オペレーションを確立し、再出店に向けた足がかりとしたい考えだ。

 同社はリブランディングの方向性として、第一に、これまで統一されてこなかった「焼き方」を、初期から採用されている調理方法であるスチームコンベクションによる肉の焼き付けに絞ることを決定している。

 材料については、タレ、国産米の使用を継続しながら、これまで採用してきた米国産牛肉の使用について、他の商材も含めて転換も検討している。

「東京チカラめし」の牛丼

 また「チカラめし商品のみの一極集中のブランディングではなく、付加価値をどこに付け、お客さまにどのように伝え、価値を提案するのかを検討していく」と小川氏が述べているように、季節限定商品の開発やテイクアウトサービスの拡大、地域活性化を目的としたイベントの企画、同社の他業態との商品コラボレーションなどさまざまな可能性を視野に入れ、検討中だという。

「食堂」の多店舗化は慎重に検討

 コロナ禍が明け、外食産業の業績も回復基調にある中、同社は246月期に各業態合計で17店を新規出店した。しかし「東京チカラめし」の新規出店については慎重な姿勢だ。

執行役員開発部部長の小川直樹氏

 「チカラめしブランドの価値は何かを考えていくことが次の仕事だと思っている。チカラめしのブランドを通じて、当社が水産業など一次産業への取り組みなどで感じたことも、業態を通じて発信していくことが私の役目なのかと思っている。そこを語れるようになれば出店機会が出てくるだろう」と小川氏。直近では、直営・フランチャイズ共に新規出店の計画はないという。材料費や水道光熱費のみならず、地代も含めた価格の高騰に対応していくために、業態や商品の付加価値について議論を継続する考えだ。

 コロナ禍を経て、新しい環境下での東京チカラめしの在り方を同社が追求・再構築し、新店として展開されるチカラめしがどのように進化するのか注目していきたい。