かつてアパレルの成長の原動力だったショッピングセンター(SC)だが、時代の変化と共に、エリアは地方から大都市圏へシフトし、テナントの主役も「物販」から「エンターテイメント」「飲食」に変わりつつある。現在のSCは、資本力のある“勝ち組”アパレルには「何でもあり」の有力チャネルにみえているのかもしれないが、“負け組”にとってはもはやそうではなくなっている。SCとアパレルの関係は今後どう変わっていくのだろうか。
SCのアパレルテナントは「同じ顔ぶればかり」
「最近、どこのSCもアパレル系はテナントが同じ顔ぶれじゃない」
こう話すのは、ある40代の産業系新聞の女性記者である。
今も昔も、SCのデベロッパーは新しいアパレルテナントの誘致に心血を注いでいる。だが近年は、高額な家賃を払えるテナントが少なくなっている。デベロッパー側も勢いのあるアパレル企業を厚遇して“好立地”に入れるため、余計に特定のブランドが目立つというのである。
民間の調査会社、矢野経済研究所によると2018年の国内アパレルの総小売市場規模は対前年比0.1%増の9兆2239億円だった。今回は微増となったものの、アパレル市場は漸減傾向が続いている。
落ち込みが顕著なのが「婦人服・用品」で、14年から2%、金額にして1872億円もシュリンクしている。この減少傾向は歯止めがかかる気配がなく、まさに「アパレルデフレ」といった状態だ。
市場縮小に伴い、アパレルテナントも純減へ
「全国2400超における商業施設のテナント純減数は『レディース』(婦人服)が約1600店とファッション全体の8割を占めた」――19年10月21日付の日本経済新聞では、商業施設向けシステム開発のリゾーム(岡山市)の分析結果として、このように報じている。
もちろん、ECやフリマアプリといった実店舗を脅かすチャネルとアパレルメーカー・専門店との競争が激しくなっていることも、テナント純減の一因だろう。また、市場が伸びない中、テナント運営企業は、自社が展開している店舗を厳しく選別し、不採算店を放置しておかない姿勢を鮮明にしている。さらにこの「逆も真なり」で、デベロッパーによる不採算アパレルの追い出しも活発になっている。
“大得意先”だったアパレルが選別を強めるようであれば、デベロッパーも展開エリアをテナントが集まりやすい大都市圏にシフトしたり、「エンターテイメント」「飲食」を切り口としたテナントの誘致を強化したりせざるを得ない。
“自縄自縛”状態のSC
オンワードホールディングスの600店閉鎖や、SCを主力チャネルとしていた「アメリカン・イーグル」の日本撤退が決定するなど、もはやブランドがある程度浸透しているアパレルでさえ、「背に腹は代えられぬ」と大胆な撤退策に打って出ている。こうした状況下、アパレル各社は実店舗ではなく、ECに力を入れざるを得ない状況となっている。
ただ、デベロッパー側もECに傾きすぎると館全体の売上高が落ちるとして、「O2O(オンライン・トゥ・オフライン)」をテナントに提案するなど、ネットを介した仕組みの活用に対して厳しい姿勢で臨む場合も少なくない。SC側がこうした“自縄自縛”状態に陥っていると、縛りに嫌気をさしたテナント側の退店は加速していく。。
不振のアパレル専門店やアパレルメーカーがSCからの退場を余儀なくされるなかでは、デベロッパー側もユニクロ(山口県)のような安定した収益が稼げるジャイアント企業や、このところ台頭著しいワークマン(東京都)などに傾注してしまう。その結果、冒頭のような「同じ顔触れ」のSCばかりになってしまうというわけだ。
「D2C」「サブスクリプション」といった新潮流のビジネスが台頭しはじめるなど、アパレルは今、変化の真っ只中にある。こうしたアパレルテナントの変化に対し、SCはどんな新機軸を打ち出していくのか。アパレルの変化を超えるような、大胆な施策が待たれるところだ。