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離職率が下がり店長の負担も減少 多拠点ビジネスの生産性を高める「ABILI Clip」とは

小売、外食などの大手チェーン店を中心に、50万人以上が利用するマネジメントサービスを展開するClipLine(東京都)。2013年の創業から11年目、次々と新サービスをリリースし事業拡大を進めている。日本の基幹産業であるサービス業をターゲットに、多拠点ビジネスならではの課題に着目した支援を行うことで生産性を高め、現場で働く人のQOL向上を目指す。ClipLineが手掛けるサービスとはどのようなものなのか。新たに追加されたサービスの内容、今後のビジョンについて、代表取締役社長の高橋勇人氏に話を聞いた。

大手チェーンを中心にユーザー数は50万人以上

店舗に用意された端末や各スタッフのスマートフォンで利用されている

 サービス業界ではセルフ型端末やロボット導入などによって省人化、省力化を積極的に進める一方で、慢性的な人手不足のもと、従業員の労働生産性をどう上げるかは大きな課題である。とくに、多拠点ビジネスの場合、現場で働く従業員の人数が多く、非正規社員の占める割合が高いため、標準化された教育システムをどう運用するかは最重要課題の一つだ。

 「多拠点ビジネスの現場で、店の売上を任される店長がマネジメントをしやすくなる仕掛けをつくりたいというのがClipLine創業のきっかけ」と高橋氏は話す。

 アクセンチュアでコンサルタントとして働き、外食チェーンやアミューズメントチェーンの店舗売上をアップさせる支援をしてきた高橋氏は、本部からの指示が伝言ゲーム化していて意図がうまく伝わっていないこと、現場の従業員を束ねる店長のマネジメント能力が売上を大きく左右することを痛感したのだという。

 そこで開発したのが、「ABILI Clip」(アビリクリップ)という動画型のマネジメントシステムだ。本部と現場をダイレクトにつなぎ、動画を通じて個々で実践研修を行ったり、本部の考えや知っておくべき重要事項などを学習できる仕組みで、現在同社が展開するABILIブランドの主軸サービスとなっている。従来は「ClipLine」(クリップライン)という名称でサービス展開しており、小売・外食業界で知られたサービスだったが、23年8月にサービスをリブランドした。

 「創業以来目指しているのは、人の手によるサービス、人の顔が見えるサービスの現場で『できる』をふやすプラットフォームを提供すること。動画を活用して標準化されたマネジメントを行うことで、現場をまとめる店長の負担が減り、店舗・拠点間でのマネジメントのバラつきがなくなって、結果的に店舗の売上向上や顧客満足度のアップにつながっていく」

 ABILIの導入先は、そごう・西武、スーパーマーケットチェーンのオオゼキやイズミヤ、成城石井、コンビニエンスストアのNewDays、外食チェーンの吉野家やファーストキッチン、ペッパーランチなどをはじめ、その他生活サービス企業、介護、保育企業に至るまで、ユーザー数は50万人を超えている。

店長が複数店舗を兼務可能に

ABILI Clipの使用シーン

 ABILI Clipの具体的な使用シーンを紹介する。

 たとえば、飲食チェーンの場合、接客の方法は、店長など熟練者がお手本を見せて教えるのが従来のやり方だ。一方、ABILI Clipによる動画の仕組みを利用すると、店長が直接教えなくても、スマホやタブレットさえあればいつでも理想的な接客方法を学ぶことが可能で、繰り返し練習もできる。

 高橋氏は、「人が人に教えるOJTでは、お互いの時間を拘束するだけでなく、指導者によって教え方が変わることでサービス品質のバラつきが発生し、顧客満足度や業績の低下につながる。人によるOJTに置き換えてABILI Clipを活用すると、そのバラつきがなくなる」と話す。ABILI Clipが大手のチェーン店に採用され、着実に実績を積み重ねている理由はここにある。店長によるOJTが不要になり、時間に余裕が生まれることで、一人の店長が複数店舗を見られるようになるのも大きなメリットだ。

 ABILI Clipでは、誰に何を学習させるかは本部側で設定する。接客方法を学ぶ場合、学習者は動画を見て練習を行い、自らの実践を撮影し、その動画をアップロードして本部に報告する仕組みも備わっている。動画の配信は、接客に限らず幅広く活用するケースが多く、全系列店88店舗でABILI Clipを導入し、約3,000名の従業員が登録されている回転寿司チェーンを展開する銚子丸では、経営理念や衛生管理、調理技術、清掃などの店舗業務などを学べる370本の動画を用意している。

 「すし銚子丸では、学習のモチベーションを上げるために、学習状況に応じて認定ランクがアップするユニークな仕組みをつくった。その結果、Webサイトに寄せられる顧客アンケートで、導入後3か月間の接客スコアが前年同期比で10%程度増加したという報告が寄せられている」

教育動画の翻訳までサポート範囲を拡大

生成AIによる翻訳のイメージ

 同社は、主軸のABILI Clip以外に、教育レベルの可視化を行う「ABILI Board」、顧客満足度を測る「ABILI Voice」というラインナップを揃えるほか、「ABILI Partner」という伴走支援や映像制作・編集のサービスも用意し、実行支援のサポートも行っている。

 クライアントからの声として「プロダクトを提供するだけのSaaS企業は多いが、ABILI Partnerによる強力なバックアップがあったことで実行できた」という声も寄せられ、解約率が際立って低いのも同社の強みだ。

 「ここ最近はコンサルもやってほしいという企業が増えている」と高橋氏が話す通り、仕組みの提供という枠を超えて多拠点ビジネスの包括的な支援に力を入れる。

 また、顧客からの要望を受けて新機能も続々と追加している。2023年12月には、外国人従業員向けにABILI Clipの翻訳機能をリリースし、AIによる自動翻訳によって外国人向けに英語の字幕表示が可能となった。翻訳精度も問題なく、導入先からは高い評価を得ているという。さらに、2024年初夏には、非正規従業員を含めた現場従業員のキャリアアップを支援するABILI Careerのリリースを予定している。

 「大手チェーンでは、従業員のキャリア形成のためにしっかりとしたキャリアアップシステムが用意されているが、現状は紙ベースでの管理、運用がほとんど。ABILI Careerによって、スキルチェックや承認のプロセスが短縮し、店長の負担が大幅に軽減する、よりフェアなキャリア育成につながるといったメリットが期待できる」

ターゲットは1千万人以上

代表取締役社長の高橋勇人氏

 最近では大手物流企業にも導入が決まるなど好調を維持する同社だが、今後の成長はどのように描いているのか。

 「現在、50万人以上に当社のサービスを利用いただいているが、多拠点ビジネス企業全体で考えると、当社のターゲットは1千万人以上になる。量的な目標として、現在の10倍、20倍に拡大していきたい。さらに、今年の初夏にリリース予定のABILI Career以外にも必要な機能、サービスはまだまだある。すでに導入されているシステムとの連携といったニーズもあると考えているので、サポートの質、対応可能な範囲をより広げていきたい」

 多拠点企業において、現場を率いる店長のマネジメントの負担を減らし、店舗、拠点間のバラつきをなくすことは、売上や顧客満足度のアップへとつながっていく。

「ABILIを活用して成果が出てくると、従業員の満足度も上がって離職率も下がる。離職率が下がるということは、結果として採用コストも下がることになるので、業績に大きく寄与することになる」

 小売、外食をはじめとするサービス業は、主力産業でありながら現場で働く人の賃金が低い現状がある。「この厳しい現状を何とかしたい」と語る高橋氏は、「個々の従業員の生産性を上げるお手伝いを続けることで、頑張れば時給3,000円、4,000円を受け取って豊かな生活ができるようになるかもしれない。サービス業界で働く皆さんのQOLを上げていきたい」と意気込む。