メニュー

連載「バイヤー必見!今行くべき専門店」 第2回 精肉担当の経験値を高める“肉体験”

商品開発やバイイングのヒントとして、食品スーパーのバイヤーならば、外食のトレンドを必ず押さえておきたいところだ。そこで本連載では、外食トレンドの“今”をよく知る「ホットペッパーグルメ外食総研」上席研究員の有木真理氏に、食品スーパーの提案に生かせる、アイデアが光るメニューを提供する専門店を紹介してもらう。連載第2回の今回登場するのは、精肉バイヤーの肉に関する知識や経験値を一気に高めることができる飲食店と専門店だ。

いまや女性もこぞって
ステーキをほおばる時代

 肉ブームが過熱しています。「ホットペッパーグルメ外食総研」が毎月実施している「外食市場調査」では、「焼肉、ステーキ、ハンバーグなどの専門店の市場規模」が年々伸長しています。 
 大きなきっかけは、2014年から肉グルメのイベント「肉フェス」が全国各地で開催されるようになったことです。その後、健康志向の高まりから「ロカボ」「糖質制限」というワードが注目されるのにともない、低脂肪かつ高タンパクな食材として「赤身肉」のブームが発生します。今では女性がダイエット食として赤身肉のステーキをほおばる、という風景もよく目にするようになりました。
 15年に飲食店などで生肉の提供が規制されると、加熱されてはいるがレア感が楽しめる「ローストビーフ」が一世を風靡。山盛りのローストビーフにはじまり、バースデーケーキに見立てた焼肉の盛り合わせ、塊肉の豪快なバーベキューなど、“SNS映え”するメニューも次々と登場し、肉ブームはいまだに冷めることを知りません。
 このように大人気の肉メニューですが、実は自宅でおいしく調理するのはなかなか難易度が高いものです。「お肉はお店で食べるべし!」が筆者の自論ではありますが、食卓向けメニューを提案する精肉バイヤーの皆さまに、新たな食べ方提案のヒントや、精肉に関する知識・経験値を伸ばすことにつながる飲食店や専門店を紹介させていただきます。

 

さまざまな部位の厚切り肉を味わう!
「ここから 錦糸町本店」(東京都墨田区)

「ここから 錦糸町本店」の外観。大きな看板が目印だ

    錦糸町に1号店をオープンし、今や東京都内を中心に全国20店舗以上を展開する焼き肉店「ここから」では、厚みが5センチほどもある厚切り肉が楽しめるのが特徴です。名物の1つは「伝説盛り」(税抜4980円)。タン、ハラミ、ヒレの3種盛で、分厚い肉を豪快に焼いていただきます。盛り合わせ以外に「ぶ厚い」シリーズの単品もあるので、好みの部位のみを注文することも可能です。
 厚切り肉は、静止画でも動画でも“SNS映え”しますし、厚みがあるぶん肉汁を閉じ込めて焼き上げることができるために素材をいっそう美味しく味わえます。最近、食品スーパーでも厚切りのステーキやタンの提案が増えていますが、部位を広げて厚切り肉をシリーズで提案するのも面白いかもしれません。

名物の1つは「伝説盛り」。厚みが5センチほどもある厚切りのタン、ハラミ、ヒレの3種盛

「焼肉ここから 錦糸町本店」
所在地   東京都墨田区江東橋2-6-14
営業時間  月~土17:00〜翌5:00、日祝は~23:00、定休日なし

グラスフェッドビーフの
魅力を学べる精肉専門店
「Saito Farm麻布十番」(東京都港区)

本初の牧草飼育牛の専門店である「Saito Farm麻布十番」

 牧草飼育牛「グラスフェッドビーフ」の人気がじわじわと高まっています。最近では取り扱う食品スーパーも多く見られるようになりました。牧草飼育牛は、味の良さはもちろんのこと、大自然のなかで放牧され、牧草だけを食べて育つため、肉質は赤身が多く、栄養価が高いと言われています。高まる健康志向に沿った素材としても提案したいところです。
 そこで、素材の魅力を知ることができるおすすめのお店がこちら。なんと日本初の牧草飼育牛の専門店である「Saito Farm麻布十番」です。医師の斎藤糧三氏が、栄養価の高いスーパーフードとして牧草飼育肉を普及させるべく設立した精肉店で、厳しい規格をクリアした極上ランクの素材が手に入ります。また、火〜土曜日の夜は「角打ちタイム」と称して、ステーキを中心に牧草牛の出来たてメニューが店内で食べられます。

医師の斎藤糧三氏が選定する、厳しい規格をクリアした極上ランクの素材が手に入る

「Saito Farm麻布十番」
所在地  東京都港区麻布十番1-5-5 SH麻布1F
営業時間  12:00~19:00

 

1杯1万1000円の
最高級和牛ラーメンを食す
「WM BY WAGYUMAFIA」(東京都港区)

世界最高級の和牛ラーメン「WAGYUJIRO」(1杯1万1000円)

 世界最高級の和牛ラーメン「WAGYUJIRO」の存在をご存じでしょうか。驚くことなかれ、このラーメンの価格は税込1杯1万1000円!東京都港区にある和牛レストラン「WM BY WAGYUMAFIA」で毎月26日のみ食すことができる渾身の1杯です。1日100杯が完売するというのだから驚いてしまいます。
 ラーメン専門店「ラーメン二郎」の影響を受けた、いわゆる“インスパイア系”のラーメンで、スープは尾崎牛や神戸牛などのげんこつを煮込んだ牛白湯。同じく尾崎牛や神戸牛の腕肉を丸ごと煮込んだチャーシューは、1切れ約100gとボリュームがありながらも歯がすっと通る柔らかさです。思わず「よし!」と気合いを入れて食べたくなる“体育会系”っぷりは「ラーメン二郎」ゆずり。そこに和牛の高級で繊細なテイストが加わり、ここでしか味わうことの出来ない逸品といえます。
 この特別感と話題性。究極の商品開発の事例として味わってみてはいかがでしょうか。「WM BY WAGYUMAFIA」は会員制のお店なので、是非、お知り合いを通じて足を運んでみてください。

店内の雰囲気。店には、この1杯のラーメンを求めて世界の有名シェフも訪れる

 

「ホットペッパーグルメ外食総研」上席研究員
有木 真理(ありき・まり)

リクルートライフスタイル沖縄の代表を務めると共に、ホットペッパーグルメ外食総研の上席研究員として、食のトレンドや食文化の発信により、外食文化の醸成や更なる外食機会の創出を目指す。自身の年間外食回数300日以上。ジャンルは立ち飲み~高級店まで多岐にわたる。趣味はトライアスロン。胃腸の強さがうりで1日5食くらいは平気で食べることができる。「ホットペッパーグルメ外食総研」https://www.hotpepper.jp/ggs/