平和堂が滋賀県内で運営する農場が「平和堂ファーム」(平和堂ファーム長:延澤太)だ。食品小売業が農場を経営する場合、多くは垂直統合型のビジネスを志向し、安定的な調達と商品の独自性を第一に求める。これに対し地域共創を掲げる平和堂のスタンスは異なる。自社が持つ経営資源を積極的に活用しながら新規就農を支援、ひいては地域農業の振興をめざしている。
目的は「地域との持続的成長」
自然が豊富な滋賀県は、米のほか麦や大豆、茶といった作物の生産地として知られる。だが他のエリアと同様、農業従事者の高齢化や新たな担い手の不足などの問題を抱え、徐々に衰退傾向にある。
その中、平和堂が自社農場の「平和堂ファーム」を滋賀県野洲市に開場したのは2020年8月のことである。現在、同農場ではいちご、ミニトマト、かぶの3種類を生産。収穫された作物は、県内にある平和堂の大型店を中心に販売、味と鮮度で支持を集める。また現在はシャインマスカットの生産準備を進めている。生産品目は、「作りやすさ」や「儲けやすさ」も基準の一つなのだが、何も平和堂ファームとして利潤の追求だけをするわけではないという。どういうことだろうか。
農業に参入した狙いを、同社地域共創事業部の橋本光正部長は次のように説明する。「当社が目標にするのは地域との持続的成長。実現のためには地域が健康であることが必要だ。地域が健康とは、活性化された経済のもとで新たな雇用が発生、結果として消費が拡大するという状態を指す。その循環を促す一環で農業を始めた」。
ただ地域において上記のような好循環を阻むボトルネックになっているのは、高齢化や担い手不足のほかにも根本的な要因がある。それは「農業は儲からない」という問題だ。農林水産省によれば、令和3年の全農家(法人含む)の平均農業所得(農業粗収益-農業経営費)は125万円だった。収入にならなければ、新たな担い手を期待できないのは当然ともいえる。
厳しい現状に対し、平和堂では自社の経営資源を活用した、生産から販売までの一貫したモデル構築をめざしている。
具体的には、
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