小売業による物流領域での”同盟”が北海道でも誕生した。5月18日、北海道を地盤とする小売企業や物流企業など計14社が参画する「北海道物流研究会」が発足、札幌市内で1回目の会合が行われた後、記者会見が開催された。「2024年問題」や「脱炭素」など喫緊の課題が山積する物流の領域において、小売業や物流会社が競合・業種の壁を超えてアライアンスを結ぶ動きは、九州、首都圏に続き、北海道にも及んでいる。
北海道ならではの物流課題とは
北海道物流研究会に参画する計14社のうち、社名を公表した小売企業はイオン北海道(北海道)、西友(東京都)、北雄ラッキー(北海道)、トライアルホールディングス(福岡県:以下、トライアルHD)の4社。イオン北海道と北雄ラッキーは北海道を本拠としており、西友とトライアルHDは道外企業であるが北海道を重点エリアに位置づけ店舗を展開している企業である。
物流はサプライチェーンを維持するうえで欠かすことのできない領域だが、解決すべき課題は山積みだ。なかでも喫緊となっているのが、配送ドライバーの時間外労働時間に上限が設けられることで既存物流へのさまざまな影響が指摘されている「2024年問題」への対応。加えて、昨今の燃料高やドライバー不足の問題、「脱炭素化」に向けたロードマップ作成などもそれにのしかかる。
さらに北海道特有の課題として、厳寒期における物流インフラの維持や、広大な面積を誇る道内に店舗が点在しているがゆえに長大な走行距離・時間がドライバーに課されるといったことも挙げられる。たとえばイオン北海道は本部や大型物流センターを札幌市をはじめ道央に置いているが、店舗網は全道に広がっている。ちなみに同社最東端の店舗である「根室店」は、札幌市内から直線距離でも約340km離れており、北海道の小売物流の規模の大きさが伺い知れるだろう。
「販売面はライバルだが、物流面では仲間」
こうした小売各社が抱える物流面での共通課題を、競合の壁を超えて横連携しながら解決の道筋をともに見出そうというのが、北海道物流研究会の設立背景である。
イオン北海道の青栁英樹社長は「(物流の問題を)個社だけで解決することは難しい。同じ課題を有している企業と協働することが重要だ」と述べたうえで、「販売面ではしのぎを削るライバル同士だが、その手前の物流面では共通課題を抱える仲間でもある。取引先や行政にも協力も要請しながら、北海道の小売物流の効率化を図っていく」と力を込めた。
研究会における今後の取り組み内容としては、まずは各社の物流課題を洗い出したうえでマトリクス化し、分科会を形成。短期間で集中的に改善のための議論を進め、実証実験を行っていく。足元では「地方部での配送効率化」「地方部の物流拠点の共有化」の2テーマを軸に取り組んでいくとした。
こうした共同配送の取り組みを進めたうえで、中長期的にはイオンの物流センターにトライアルHDの在庫を保管するなど大型物流センターの共有も視野に入れたい考えだ。ただしこれについては「データのやり取りが必要になる。それぞれの会社に”すでに完成された仕組みがあるという壁”を超えて、物流プラットフォーム全体を共通化するというのが次の課題になるだろう」とトライアルHDの亀田晃一社長は指摘した。
物流改革は地方から! 「九州物流研究会」との連携も進める
小売企業を中心とした物流アライアンス形成の動きは、22年8月の「九州物流研究会」の発足を皮切りに、今年3月にはヤオコー(埼玉県)、マルエツ(東京都)、サミット(東京都)、ライフコーポレーション(大阪府)の4社が立ち上げた「首都圏SM物流研究会」、そして今回の北海道物流研究会と、各エリアで広がりを見せている。
このうち九州物流研究会については、イオン九州(福岡県)とトライアルHDが音頭を取って発足、今では小売企業や物流企業など約30社参画する大所帯になっている。分科会の活動も活発化しており、直近では九州内の県単位で分科会を形成して物流効率化のための取り組みを実行に移し、一定の成果を収めているという。
イオングループとトライアルHDが実質的な幹事役であるという共通項もあり、北海道物流研究会は九州物流研究会ともすでに連携を深めている。イオン北海道の青栁社長は「メンバーも行ったり来たりして互いに研究を進めている。北海道と九州という”端っこ”である地方から、改革を進めていく」と息巻いた。
他方で「業種業態に関係なく、ジョインしたいというメンバーがいればウェルカムだ」(青栁社長)として、仲間を増やしながら取り組み規模を徐々に拡大させていきたい考えだ。全国チェーンからローカルチェーンまで、北海道を地盤・本拠とする小売企業はまだまだ多く存在することを考えれば、”伸びしろ”は大きそうだ。