メニュー

フード&ドラッグ、ヘルスケア強化…フォーマット開発が加速するドラッグストア業界

ここ数年、有力ドラッグストア(DgS)・薬局チェーンによる新しい店舗フォーマットが続々と登場している。DgS業界が高い成長率を維持するためには、調剤併設推進に加えて物販へのテコ入れが急務。有力DgSが新しい店舗フォーマットの開発に乗り出すのは当然の流れだ。新しい店舗フォーマットはDgS業界の成長をけん引する次世代の“乗り物”になるか──。

イオンウエルシア九州は23年4月6日にフード&ドラッグの新フォーマット1号店「ウエルシアプラス大野城若草店」を福岡県大野城市に開業している。

伸び率鈍化で物販へのテコ入れが急務

 ここ数年、有力ドラッグストア(DgS)・薬局チェーンによる新しい店舗フォーマットが続々と登場している。

 背景には人口減少社会を迎えての物販の“頭打ち”感がある。

 実際、日本チェーンドラッグストア協会(東京都:以下、JACDS)が2023年3月に発表した『2022年度版業界推計 日本のドラッグストア実態調査』によれば、22年度のDgS企業381社2万2084店舗の全国推定売上高は対前年度比2.0%増の8兆7134億円にとどまった。対前年度の伸び率は、21年度までの5年間は毎年度5%前後を維持していた(17年度5.5%、18年度6.2%、19年度5.7%、20年度4.6%、21年度6.3%)。22年度の伸び率2.0%は、DgS業界関係者が“成長の踊り場”と表現する13~15年度(13年度1.2%、14年度1.0%、15年度1.1%)以来の低い数値だ。

 もちろんコロナ禍の“特需”の反動減の影響があったことは間違いないが、予想よりも低い伸び率にDgS業界関係者は肩を落としたはずだ。現在、大手DgS企業は軒並み調剤併設を推進している。22年度も「ヘルスケア」「調剤」「ビューティケア」「ホームケア」「フーズ・その他」の中で「調剤」の伸び率が対前年度比9.1%増と、最も高い伸びを示した。

 ただし、22年度の薬価引き下げやチェーン薬局を対象にした調剤報酬減額の影響は十分に反映されていないため、JACDSは「実際より高めの数値であり、23年度(の実態調査)はかなり厳しい数値が予想される」としている。

 DgS業界が高い成長率を維持するためには、調剤併設推進に加えて物販へのテコ入れが急務となっている。有力DgSが新しい店舗フォーマットの開発に乗り出すのは当然の流れだったといえる。

フード&ドラッグフォーマットが続々

新たにフォーマット開発に乗り出すDgS企業が増えている。

 最近、目立つのが“フード&ドラッグ”フォーマット開発の動きだ。すでにフード&ドラッグを展開するコスモス薬品(福岡県)、クスリのアオキホールディングス(石川県)、G e n k yDrugStores(福井県)などに加えて、新たにフォーマット開発に乗り出すDgS企業が増えている。

 DgS最大手のウエルシアホールディングス(東京都:以下、ウエルシアHD)は、主要事業会社ウエルシア薬局(東京都)が中心となり、食品強化型店舗を展開している。20年4月に開業した「ウエルシア平塚四之宮店」(神奈川県平塚市)を皮切りに21年10月には「ウエルシアイオンタウン幕張西店」(千葉県千葉市)、21年11月にはマックスバリュ北陸(石川県)、ウエルシアHDと資本関係にあるホームセンターみつわ(福井県)とともに、福井県内でDgS、食品スーパー、ホームセンターの3つの業態を融合させた「ウエルシア鯖江上河端町店」(福井県鯖江市)をはじめ数店舗を開業。

 22年4月には、イオン九州(福岡県)と協業し、生鮮をフルラインで揃える「ウエルシア熊本麻生田店」(熊本県熊本市)を開業している。22年9月にはウエルシアHDとイオン九州が合弁会社イオンウエルシア九州(福岡県)を設立。イオンウエルシア九州は23年4月6日にフード&ドラッグの新フォーマット1号店「ウエルシアプラス大野城若草店」を福岡県大野城市に開業している。

 キリン堂(大阪府)は22年12月、既存店をスクラップ&ビルドして調剤併設の「キリン堂大淀新野店」(奈良県吉野郡)をオープンした。青果・精肉売場をコンセッショナリーが運営する、売場面積400坪の店舗だ。同社は今後の新規出店の際は、売場面積300~400坪以上が確保できる郊外立地の店舗であれば、大淀新野店のようなフォーマットを出店していきたい考えだ。

 サツドラホールディングス(北海道)のグループ会社でDgSを運営するサッポロドラッグストアー(北海道)は、店舗の生活総合化戦略を推し進める。価格政策のESLP(エブリデー・セイム・ロー・プライス)化の推進、プライベートブランドの開発強化なども土台にしながら収益基盤を確立。商品政策面では生鮮食品の取り扱い拡大や100円均一商品の導入などラインロビングを強化するとともに、店舗への調剤併設を推進。人口の少ない小商圏でも成り立つ収益モデルを確立し、出店余地を拡大していく計画だ。

 23年5月期からは、サッポロドラッグストアーの主力フォーマットである売場面積380坪店舗などに青果・精肉の導入を開始。さらに実験中の売場面積430坪の6店舗では、総菜の販売にも乗り出している。

トモズはヘルスケア機能を付加

 トモズ(東京都)は現在、「けんコミ(健康コミュニティ)」の導入店舗を増やしている。

けんコミとは地域住民の健康コミュニティコーナーだ。

 「けんコミ」とは、住友商事(東京都)、サミット(東京都)、トモズの住商グループ3社と、卸売業3社(国分グループ本社〈東京都〉、東邦ホールディングス〈東京都〉、大木ヘルスケアホールディングス〈東京都〉)によるサンフラワープロジェクトが4者共同で展開する地域住民の健康コミュニティコーナーだ。

 「けんコミ」には8台の健康測定器(身長・体組成・握力、骨健康度、糖化度、肌年齢、血管年齢、ベジチェック〈野菜摂取量〉、血圧、ヘモグロビン)を設置。来店客が自身で健康状態をチェックする。加えて常駐する2人のトモズの管理栄養士が栄養指導、健康相談、健康のために推奨するサミット販売商品の提案、サンフラワープロジェクトとトモズの管理栄養士が共同で開発するレシピ紹介を行う。現在、「けんコミ」は6例まで増えた。すべてサミットとトモズが営業する店舗内にある。食と健康の“ハブ”である「けんコミ」は、今後も導入例を増やしていく方向だ。

 さらにトモズは22年10月、「トモズ池尻大橋店」(東京都目黒区)内にお客の健康をトータルにサポートする「トモズラボ」を開設した。健康に関するさまざまなサービスを提供する「トモズラボ」、管理栄養士とともに健康管理を行う有料会員プログラム「トモズ健康くらぶ」、睡眠状態をデータ化・可視化する「ねむりの窓口」、タッチパネルでがんの基礎知識を学べる「みんなのがん学校」の4つのサービスからなる。将来的にトモズの商勢圏内10店舗につき旗艦店1店舗に「トモズラボ」を設置。管理栄養士によるカウンセリングや健康寿命延伸のためのプログラムを利用したいお客に対し、「トモズラボ」を紹介していく意向だ。

 アインファーマシーズ(北海道)は23年4月21日、新コンセプトストア「AYURABeauty帝国ホテル店」をオープンした。同社が手掛けるオリジナルコスメブランド「AYURA」を中心に、特徴的なコスメ&ビューティを提供する伊勢半(東京都)、「チャコット」「Obag(i オバジ)」の3つのメイド・イン・ジャパンのブランドとコラボしたコンセプトショップ。同社は「AYURABeauty」を大きなエンジンにして、リテール事業の主力である「アインズ&トルペ」の出店も加速させていく考えだ。

このほか、5月15日発売の「ダイヤモンド・ドラッグストア5月15日号」では、「有力DgS・薬局チェーン10社のフォーマット開発に迫る。新しい店舗フォーマットはDgS業界の成長をけん引する次世代の“乗り物”になるか──。」について、特集を組んで詳報している。購入はこちらから