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イトーヨーカドーGMS否定の抜本改革と、食品館分社化で首都圏スーパーマーケット戦略本当の始まり

セブン&アイホールディングスが10月10日発表した2020年2月期第2四半期決算発表で、祖業イトーヨーカ堂の再構築プランが発表された。いよいよ待ったなしの構造改革に追い込まれた総合スーパー(GMS)改革だが、その副産物として首都圏食品スーパー戦略が遅まきながら本気で動こうとしている。

158店中103店舗をSC化
22店舗分社化、不採算33店舗は…

 イトーヨーカ堂の20202月期上期営業利益は、対前期比27.3%となる5億円だった。額にして対前期比13億円のマイナスだ。

 イトーヨーカ堂は192月期まで5期連続の最終赤字となっているが、営業利益段階では、162月期に139億円の巨額の営業赤字に転落して以降、テナントミックスによる売場構成の見直しや店舗閉鎖等を行い、翌172月期に営業利益5000万円、182月期30億円、そして192月期には47億円と右肩上がりで業績を回復させていた。それだけに202月期、第2四半期決算とはいえ、大幅な営業減益となったことに、もはやさらなる構造改革待ったなしといったところだ。

 そこでイトーヨーカ堂は既存のGMSのスキームを壊し、新たな事業モデルの再創造を進める。

 店舗政策では、現在展開する158店舗のうち継続可能店として103店舗に絞り、不採算33店舗は外部企業との連携等を模索し、それもできなければ閉鎖も検討する。22店舗あるイトーヨーカドー食品館については、分社化して、首都圏で展開するヨークマートなどスーパーマーケット企業と併合させ、収益性の回復をめざす。

 継続可能店の103店舗については、「16年度から18年度まで実施した43店舗について、合計30億円の営業増益が達成できており、やるべきことは見えている」と井阪隆一セブン&アイ社長は語るものの、今回行うのは自主MDからの大幅撤退と有力テナントの導入によるショッピングセンター化を図るという、総合スーパー(GMS)の存在そのものを否定する苛烈な改革だ。

 イトーヨーカ堂の事業部別営業利益の推移を見るとそうせざるを得ない事情が明白だ。食品とテナントが安定的に利益を生み出している(直近7期で食品は全ての期で黒字、テナントは6期が黒字)一方で、衣料・住関連を担当するライフスタイル事業部は全ての期が営業赤字なのである。

 そこで、好調な食品は維持する一方、衣料・住関連では18年度比で約50%まで売場面積の削減を図り、テナント導入を図る。

 衣料・住関連の中でも、利益の見込める「肌着」「ヘルス&ビューティ」は継続強化の方針で、「こども」は個店ごとに判断、「衣料」「服飾」「住まい」は原則テナントに変更する。

食品館は分社化し、
首都圏グループスーパーと併合へ

食品館22店舗をイトーヨーカ堂から切り離し、収益性の向上を図る

 分社化する食品館22店舗はヨークマートやシェルガーデン、フォーキャストなどとともに成長戦略に掲げる首都圏食品戦略を推進するため、収益性の高いモデルへと転換を図る。

 この食品館は、当時も衣住低迷・食好調の中、そして首都圏でスーパーマーケット事業を展開する小売業を傘下に持つにも関わらず、イトーヨーカ堂だからできる食品スーパーがあるとの考えのもと、2010年に1号店をオープンし、当時は1年以内に10店舗、早急に100店舗体制をめざすと豪語していた業態だ。当初から、「総合スーパーの食品売場とスーパーマーケットはお客の求める機能が全く異なり、必要な品揃えもそれに伴うオペレーションも違う。その上、物件の取り合いとなっている都心部で早急に収益性の高いモデルで多店舗化するのは至難」という声が多かったが、案の定という状況が続いていた。

 遅きに失した感が拭えないが、食品館を分社化し、首都圏のグループ食品スーパー企業との併合を進め、①店舗フォーマットの確立、②商品供給プラットフォームの確立、③調達、製造、物流の効率化、管理部門の効率化を図る。将来的には、国内スーパーマーケットのなかでも屈指の実力を持つ、グループのヨークベニマルとの連携も視野に入れる。これはセブン&アイが重点戦略としておきながら、なかなか成果をあげられなかった首都圏スーパーマーケット事業の抜本的な再構築といえ、今後の展開が非常に楽しみと言えるものだろう。もちろん、①店舗フォーマットの確立、がその前提となることは言うまでもない。

 こうした改革を行うことで、イトーヨーカ堂では18年度比で22年度末に1700人の人員削減を見込んでいる。

 ようやく本気になったイトーヨーカ堂のGMS改革とセブン&アイの首都圏スーパーマーケット戦略。良い立地を抑えているだけに、そのポテンシャルは低くない。