メニュー

「タピオカカフェ」に、都市型小型店開発…イオン九州が本業以外にも注力する理由

九州地方で総合スーパー(GMS)やホームセンターを展開するイオン九州(福岡県)。イオンのSM事業再編の一環で、マックスバリュ九州との経営統合に向けた準備を進める同社だが、昨今、新フォーマットの開発や新規事業へのチャレンジを水面下で進めている。そのねらいとは。

FC事業に参入!1号店は「タピオカカフェ」?

FC1号店となるフードボート・カフェは二日市店にオープン予定だ(イオン九州HPより)

「フランチャイズ事業推進部をつくり、フランチャイジーとしての新たな事業を検討してきた。その(FC店舗)1号店を10月末にオープンする。ここでは詳細は話さないが、収益向上につなげるべく新たな事業領域に挑戦していく」

 1010日に東京都内で開かれたイオン九州の19年度上期決算説明会で、イオン九州の柴田祐司社長はこう話し、FC事業に乗り出すことを明らかにした。柴田社長の説明では、「カフェ業態」という以外に具体的な内容について言及はなかったが、配布資料には、「FOOD BOAT café(フードボート・カフェ)」のロゴが記載されていた。

 調べてみると、群馬県の食品卸企業・マルイ物産が展開するカフェで、流行のタピオカドリンクやスノーアイスなどを主力商品として販売。現在「フードボート・カフェ」の屋号では「高崎OPA」「イオンスタイル板橋」「イトーヨーカドー曳舟店」の3カ所に店舗を展開している。

 柴田社長の説明と照らし合わせると、このフードボート・カフェを、イオン九州がフランチャイジーとなって運営するとみられる。1号店は「イオン二日市店」(福岡県筑紫野市)のフードコート内にオープンする予定だ。

 しかし、直営でもテナントでもなく、なぜFCという運営手法をとったのか。これについて柴田社長は「とくに中・小型店のフードコートでは(テナントの)入り手が少なくなっている。われわれも自前で外食事業は運営しておらず、だからといって一からつくるのは無理がある」と説明。さらに、「九州・沖縄エリアで見れば、イズミさんやサンエーさんも(外食のFC運営を)やっている。イオンとしてはあまりなじみのないやり方かもしないが、そういったことにも挑戦して利益を出せるようにしたい」と話した。

都市型小型店にもチャレンジ!

イオン九州が5月末にオープンした「ニコキッチン六本松店」

 イオン九州はもう1つ、対外的には公表していない新規事業をスタートさせている。ダイヤモンド・チェーンストアオンラインではすでにレポートしている都市型小型フォーマットの「ニコキッチン」である。今年5月に福岡市中心部に1号店をオープンしているが、公式なリリース等は一切出していない。

参考:イオン九州が密かに実験する小型新業態「ニコキッチン」の全容

 同フォーマットについて簡単に説明すると、コンビニよりやや大きい店舗サイズで、直営の食品売場(加工食品や冷凍食品、飲料などが中心)と、阪急ベーカリーが運営するインストアベーカリー、クックチャムが運営する総菜売場をミックスしたフォーマットだ。「第二のキッチン」を標榜し、料理に時間をかけられない有職女性や子供を持つ主婦をメーンターゲットとしている。

 柴田社長はこのニコキッチンについて、「(今の状態は)完成形でも何でもないと思っている。(実験を重ねながら)新たな都市型の店舗モデルをつくっていきたい」と話した。すでに3号店までは取締役会で承認が下りており、「3号店まではつくってみて、(本格展開するか)答えを出したい」(柴田社長)

 イオン九州がニコキッチンのような小型店を出す理由は、これまで主力事業としてきた大型店の出店が容易ではなくなりつつあるという事情がある。柴田社長は、福岡県内にオープン予定の他社の大型ショッピングモールで、当初入居予定だったテナントが出店を取りやめたという事例に触れながら、「人口が減少するなかで、大型店をさらにつくっていくのは難しいものがある」と指摘した。そうしたなかで、都市型小型店に新たな成長余地を求めているというわけである。

新たな成長機会につなげられるか

 イオン九州の19年度第2四半期の業績は、営業収益が対前年同期比1.2%減の1102億円、営業利益は4月の予想値を上回ったものの、3億円の赤字を計上。四半期純利益も4億円の最終赤字となるなど経営環境は厳しい。

 こうした状況下で、既存のビジネスモデルを維持したままでは、さらなる成長は見込めないという危機感がイオン九州にはあるのだろう。成長機会を創出するために、FC事業への参入や、都市型小型店の開発といった新たな事業へのチャレンジに動いたというわけである。

 「(FC事業も都市型小型店も)今までやったことのないことだが、これからはそういった新しい領域にも踏み込んでいかないといけない。『餅は餅屋』という考え方もあるが、(餅屋から)ノウハウをもらってやってみるということも必要になってくる」と柴田社長。イオン九州の新たなチャレンジは実を結ぶか、今後の動向が注目される。