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ヤフー、ZOZO買収 会見で語られたこと 「EC事業でナンバーワンが視野に」

9月12日、ヤフー(東京都/川邊健太郎社長)はZOZO(千葉県/澤田宏太郎社長)に対して株式公開買い付け(TOB)を行い連結子会社化を目指すことを発表した。ZOZOならびに、同社株式の35.94%を保有する創業者で12日付で代表取締役社長を退任した前澤友作氏もTOBに賛成。
ヤフーによるZOZO買収の目的は、同社がEC事業を強化する中で、市場規模1兆7728億円という物販系のBtoCのEC市場で最大のマーケット規模を有するアパレル・雑貨カテゴリーを特に強化することが必要と認識しているためである。ヤフーは今秋、オンラインショッピングモール「PayPayモール」の開始を予定しており、その中核をZOZOが担うというわけである。
ヤフーによる買収で、ZOZOはどう変わるのか?会見で語られた発言、質疑応答の模様を掲載する。

ヤフー川邊健太郎社長

 「本日、ZOZOとの資本業務提携契約締結した。ZOZO株式50.1%の保有を目指して、(ZOZO)グループ企業に迎えたい。投資額は約4000億円に達する。なぜ、4000億円も投じて、ZOZOを迎え入れるのか?それは、これまでの広告事業メーンからEC事業を柱にし、業績拡大のドライバーにしていくという戦略に乗っ取った形での今回の提携である」

 「今回の資本提携の4つの重要なポイントについてお話しする。ポイント1はZOZOTOWNがECモールに初出店。秋にヤフーは『PayPayモール』というプレミアムモールを立ち上げる。そこのファッションカテゴリーにZOZOに入ってもらう。ZOZOのブランドは7300あり、全ブランドさんにその理解を得ていただくべく、働きかけをこれから両社で行っていく」

 「ポイント2は、ECによる購入者が爆増、ということだ。まずYahoo!JAPANSOFTBANKPayPayを運営し、国内最大級の利用者を誇る情報通信グループからZOZOに対し、爆発的な送客ができるということ。さらに相互送客も可能で、Yahoo!JAPANZOZOの両社の利用者属性が異なるため、両社ともに顧客基盤の拡大が見込める。Yahoo!JAPANからZOZOに対しては30~40代中心に男性客を送客でき、ZOZOからYahoo!JAPANに対しては、20~30代中心に女性客を送客できる」

 「ポイント3は、両社のE C物販爆増だ。ヤフーは過去5年でEC取扱高が倍の1.87兆円に拡大した。ZOZOも市場以上の成長率で、両社合算で2兆円以上になる。今後、両社が連携することで爆増すると考えており、その際、トラベル事業で培った一休.comとヤフートラベルの成功事例、ノウハウを徹底的にZOZOに注入したい。その結果、ヤフーとZOZOを合わせることで、2020年代前半にEC取扱高で国内No. 1を目指し、今回それが射程圏内に入ったと考えている」

 「ポイント4が、コマース事業の営業利益爆増だ。ヤフーのEC事業の2018年度営業利益は580億円、19年度は約700億円を見込んでいる。これにZOZO19年度計画値である約320億円を単純に合算するだけで、ヤフーのEC事業営業利益は、対前年度比1.8倍になる。広告一本足打法から、広告とEC2本の柱が立つことになる」

左から、ヤフー川邊健太郎社長、ZOZO澤田宏太郎社長、ZOZO前社長の前澤友作氏

ZOZO 澤田宏太郎社長

「前社長の前澤は既成概念を壊して、ZOZOを作った。一方で会社は大きくなり、業界や社会に与える影響は大きくなった。これからは安定感が重要になってくる。安定的な成長を実現する上でのパートナーとしてヤフーがベストだという判断をした」

ZOZOは今年で21歳。企業として大人の入り口に立つことを求められている。ZOZOはつまらない会社になるのではと思われるかもしれないが、その心配は不要だ。これまで同様、ある程度“やんちゃな大人”であり続けたい」

「経営者として前澤から学んだことの一番は、『非常識・非合理と言われることにトライしないとなかなか成功しない』ということ。実際、何度もその状況を目の当たりにしたことが、経営者としての私の財産になっている。その財産を会社に伝えていくことが私の大きな使命だ。もちろん“やんちゃな大人”の張本人である前澤を失うことは会社にとって大きなインパクト、これは今後の課題であるが、幸いにも突拍子もないアイディアを持っている社員はたくさんいる。そのような人材を経営者として大切にしながら、これまで以上に事業を推進していく」

「これから、トップダウン経営から、組織の強さを活かした経営に移行する。創業者が去ることは小さいことではないが、養ってきた挑戦心などをどんどん活かしていきたいと思っている。ヤフーの力を借りながら、社員一人がzozoという会社を磨き上げていくのが、新しい経営陣の使命であると思っている」

質疑応答

–前澤さんに聞く。ZOZO社長の辞任を決定した今の気持ちは?先ほどから言葉が詰まる場面もあったが、本当に後悔はないのか?

前澤 悩みまくりました。一部では無責任ではないかという意見が出ることも予想していました。ただ、本当の無責任とは、自分の権力や地位に甘んじて、会社の成長機会を逃し、自分の地位に安住することではないかと考えます。ZOZOはいま課題を持っており、その課題を解決するために今回の提携は素晴らしいものになります。これまでの私のトップダウンのある意味わがままな経営から、社員1人1人権限を持ち、あたかも1人1人が社長のように振る舞える、総合力を持った組織にならなければなりません。それによって、今以上の総合力を持った企業として、ZOZOはさらなる成長を遂げていく必要がある。そのための苦渋の決断でした。

「経営者は孤独である」とよく言われますが、私はこれまで、みんなで楽しく事業に勤しんで来れたので、「全然孤独ではないよ」と思っていました。ですが、今回、辞任するという決断を一人で悩んでいた時、ようやく「経営者は孤独なんだ」と痛感しました。

質疑応答の前、スペシャルゲストとして、ソフトバンクグループ社長の孫正義氏が前澤氏とともに登壇する一コマもあった

ーー改めて今回の提携に経緯について。(ソフトバンクグループの)孫正義社長から今回の提携について話があったとのことだが、時期はいつくらいのことだったのか。ヤフーと組むことについてどのように考えているか。

前澤 時間軸については正確性を欠くため明言を避けたいと思います。孫さんに相談したのは「もっとロックに生きたいんだ」「いかがわしくありたいんだ」ということ。そこに(ヤフー社長の)川邊さんを紹介されて(資本業務提携の)話が始まりました。
 ヤフーさんとは結構前から協業をしていて、どういうふうにしたら盛り上がるとか、どうしていけば(取り組みが)深くなるのか、ということを議論していました。そうした経緯を踏まえ、今回しっかりとテーブルについて、資本業務提携についての具体的な話をしたという流れです。
 孫さんの声がけによってヤフーさんと提携したという話ではありません。

川邊 以前、経営者などにインタビューする、Yahoo!JAPAN上の「令和の特集」という企画がありました。
 そのなかで急遽、私が孫さんにインタビューすることになりました。孫さんはそこで「いかがわしくあれ」「平成の時代で失ってしまったのは日本のポジティブな意味での『いかがわしさ』」「月に行きたいなら行かせてやればいいじゃないか」といったメッセージを出されており、よほど前澤さんのことを気に入っているんだなと思いました。そうした経緯のなか、「今回前澤さんが人生の再スタートを切ろうということなので、ZOZO社と話をしてみたら」と孫さんから紹介を受けたかたちです。
 実際、ZOZOとは前から提携していたのでシナジーがあることはわかっていました。当社には以前に一休との提携ををうまくいかせた自信もあります。
 なお提携の話自体はそんなに前の話ではありません。ここ数カ月の話です。

ヤフー傘下で、ZOZOは目下抱える課題を解決し、さらなる成長を描けるか、そしてヤフーはECの世界でトップに立てるのか?

–今回の資本業務提携が発表され、様々な思惑などがありZOZO株価が急騰したが、こうした反応やネット民の反応等をどう見ているかについて聞きたい。

川邊 ネット上での反応を見ましたが、今回の両社の業務資本提携ならびにTOBは概ね歓迎されていると感じました。性格の全く異なる両社が新しいことをやってくれるんじゃないかという期待、そして、ヤフーがPayPayを使った大きな還元策がZOZOにも来るのではないかという期待で、そうした期待に応えたいと思っています。

–親子上場の問題について尋ねたい。(TOB後も)ヤフーもZOZOも上場を維持する方針だが、(今後事業方針によっては)親会社との利益相反が起こる懸念も考えられ、特にアスクルとヤフーの件を懸念しているZOZOの株主もいると思う。それについてどのように考えているか?

川邊 少数株主と支配株主の利益相反という論点だと思いますが、私の考えでは、「全株主の視点でZOZOの価値を最大化できるか」という点で考え、事業に集中していくことが、諸問題の解決(につながると思う)というか、そもそも(親子上場に関する)問題はないという前提でやっていきたいと考えています。

澤田 今回の資本業務提携を進めるに当たって、真っ先にその話を(ヤフー側に)差し上げ、それを前提に議論を重ねていきました。ですから、現段階では心配していません。

–2020年代前半にECで国内トップという目標を掲げているが、今後トップをめざしていくうえでM&Aなどあり得るのか。

川邊 広告事業と並んで、EC分野において1番になろうと真剣に行動しています。自社開発のサービスも目下準備中で、この秋に自社ショッピングモールの「ペイペイモール」がスタートします。
「PayPay」の認知度もヤフーとほぼ互角になるほどにまで上がってきています。(Yahoo!とは)異なるユーザーを持つペイメントサービスがこの1年で急拡大しているので、これを戦略にメーンにしていきたいと思います。 買収についても今後も良い話があればさせていただきたい。アスクルやZOZOTOWNのような輝きを持ったサービスを展開されしている企業で、当社に魅力を感じていただけるようであれば、積極的に話をしていきたい。大歓迎です。