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絶好調ニトリは中国をどのように攻めるのか?

家具・ホームファッション専門店のニトリホールディングス(北海道/白井俊之社長)は、32期連続増収増益という快進撃を続けている。そのニトリがさらなる成長を遂げるために、現在力を入れているのが中国事業だ。どのように中国を攻めるのだろうか。

ニトリHD似鳥昭雄会長は本決算説明会で中国事業の進捗を語った

SPAの次なる成長エンジンは中国

 約30年前に、製造、物流、小売のすべてを自社で賄う製造小売(SPA)モデルに切り替え、32期連続増収増益という快進撃を続けてきたニトリ。今年4月の決算説明会でも、その好調ぶりをニトリホールディングスの似鳥昭雄会長、白井俊之社長は語った。

 快進撃が続くなか、ニトリは早くも次なる成長エンジンを模索している。都心部への進出、人口の少ない小商圏モデルの確立、デコホームとニトリの差別化、家電への挑戦などがそれに当たる。

 しかし、その中でも最も力を入れているのが中国事業だ。というのも、国内だけではいずれ成長の限界を迎えてしまうからだ。

 「ユニクロや無印良品のように当社も伸びる可能性がある」と似鳥会長は、決算説明会でこのように力を込めた。

 ただ、飛ぶ鳥を落とす勢いの国内とは違い、中国事業は苦戦が続いている。

 「進出する方法に多少手違いがあった。南部などは出店エリアを広げすぎてしまった。中国と日本は大きさが全然違う。湾岸地帯など、ドミナントエリアを決めて集中すべきだった。同じ杭州市内、深圳市内であっても、所得によって購買行動がまったく違う。調査を進めて、ダメなところは早めに撤退する」(似鳥会長)。

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独自MDから世界共通MDに切り替え

独自MDから世界共通MDに切り替え

 実際、中国事業は2018年から改革に着手し始めている。

 最も大きな取り組みは、商品政策(MD)の変更だ。これまで、日本と中国の共通の商品が少なすぎた。約70%が中国のオリジナル商品で、日本との共通商品は30%。現在、中国で展開している店舗数は、2030店舗しかないのにもかかわらず、である。

 19年2月期には、グループ全体で商品開発力、調達力、各国販売会社のシナジーを高めるため、「グローバル商品本部」を新設した。その結果、前期からグローバル共通商品の割合は、前期末で約50%になった。今期中に70%まで高めることを目標にしている。グローバル商品の比率を高めることで、日本の販売数のメリットを各国にも生かし、グループ全体の収益率を改善するためだ。

 つまり、中国独自のMDからグローバル共通のMDへと方向転換する。

 また、品質への取り組みとして、「グローバル品質保証体制」の構築をめざす。具体的には、日本で販売するためのさまざまな品質規定やマニュアルを海外でも通用するように、グローバルな視点で書き換えることで、「各国最適」ではなく、「全体最適」な品質確保を行えるようにする。

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元・日産副社長を起用!組織も全面見直し

全社を挙げて中国を成功させる!

ニトリ白井社長は「全社を挙げて中国事業を成功させる」と意気込む

 商品だけでなく、組織も強化する。

 まず1812月に、重要市場としている中国での成長に必要な体制づくりを全社を挙げて取り組むべく、「日中合同グローバル事業強化プロジェクト」立ち上げた。現在、課題抽出のフェーズが終わり、改善策の実行、ノウハウづくりのフェーズに移行したという。

 大きな課題として、店舗の魅力、売上対策、商品の供給体制、人材育成を掲げている。これらの課題を解決し、中国事業を成功させ、ニトリのノウハウを明文化することで、さらなるグローバル化を推進する。

 また、似鳥会長は「現地に任せすぎた」という。人材面では、「中国に行きたい人に行かせる」のではなく、経営陣から見て「腕利きの適正な能力を持っている人に行ってもらう」ようにする。

元・日産副社長を海外事業責任者に起用

 今、中国事業成功のカギを握るのが、日産自動車(神奈川県/西川廣人社長)の副社長を務めた、松元史明氏だ。18年9月にニトリホールディングス副社長として、グループ入りし、海外事業の責任者を務める。

 「松元さんはヨーロッパ、アジアなど海外現場でたたき上げの人。本部のエリートというより、海外支店が長く、言葉も34カ国後話せる。そういう人が中心になって海外事業を変えていく」と似鳥会長の松元氏への期待も高い。

 「中国事業は将来を期待していただきたい。今年は踊り場で、来年からまた拡大していきたい。十分可能性があると思っている。急がず、コツコツやっていく。」という似鳥会長。中国では、今期は5店舗出店し、4店舗退店し、1店舗増に止まるが、来期以降、来期以降拡大に転じる。

 18年に国内500店舗を突破したニトリ。国内市場が飽和化してこれまでのような成長維持が難しくなる前に、中国事業に先行投資し、新しいステージへと向かう。