ボディメイクをするトレーニー(ジムなどで体を鍛える人)たちの間で、話題になっている飲食店のサブスクサービスがある。その名も「焼肉フィットネス」。焼き肉ファストフードをコンセプトに全国展開している焼肉ライク(東京都)が手がけている。飲食店が手がけるサブスクサービスは他にもあるが、焼肉フィットネスは利用者の来店頻度が高いことが特徴だ。サービスが生まれた経緯やユーザーからの反響、今後の展望について、焼肉ライクの代表取締役社長 有村壮央氏に聞いた。
食事管理にストイックなトレーニーたちの意見を取り入れたサブスク
定額で毎日焼肉を食べられる「焼肉フィットネス」をはじめた経緯について、焼肉ライクの代表取締役社長 有村壮央氏はこう語る。
「肉をメーン食材としているステーキ屋にはボディメイクをするトレーニーが増えている。しかし、同じように肉を扱っていても焼肉屋には来ないという問題意識があった。焼肉は脂っぽいイメージをもたれているため、トレーニーが安心して食べられる赤身肉などをセットで提供するのはどうかと考えた」
ジムに通い始めたことで、トレーニーのストイックな食生活を知ったのだという。
「コンビニで鶏胸肉を買ったり、プロテインを飲んだりしていて食事管理が大変そうだった。何を食べるか迷うことなく、毎日焼肉を食べられるサービスがあれば喜ばれるのではないかと思った」
さっそく、有村氏は自身のTwitterで、トレーニーたちに質問する。
「焼肉ライクで上ロース、ハラミ200gが食べられて、ごはんかサラダを選べるサブスクプランがあったら興味ありますか?」
このツイートは800万インプレッションを獲得、多くのリアクションがあった。本気でトレーニングやボディメイクをしているトレーニーたちから続々とコメントが届いたのだ。「コメントからわかったのは、身体を鍛えている人にもさまざまな志向性があること。筋肉量を増やしたい人、ダイエットで糖質制限をしている人、脂質制限をしている人などがいる」
当初、1種類のサブスクプランを作ろうと思っていたが、志向性に合わせ複数のプランを作ることにした。すぐに商品化に取り組み、2週間ほどで「焼肉フィットネス」をローンチした。恵比寿本店ではわずか5分で100セットが完売し、現在では13店舗でサブスクプランを提供している。
ジムに通う感覚で、焼肉フィットネスを利用するユーザー
サブスクプランには、セレクトプラン(税込1万4,080円/月)と低脂質プラン(税込1万780円/月)を用意。期間中、毎日1回まで注文可能だ。セレクトプランは筋肉アップセット、低脂質セット、低糖質セットの3種類のいずれかをその日の気分で選ぶことができる。
サブスクプランのリリースまでわずか2週間。社内の反応はどうだったのか。
「サブスクのお客さまと、一般のお客さまとでは対応が異なる。サブスクは支払いがすでに完了している状態なので、かえってオペレーションは簡略化される。初月は多くの来店があり混雑して多少の混乱はあったものの、店舗・お客さま共に徐々に慣れてきている」
現在、焼肉フィットネスを契約しているユーザーは1店舗あたり30~60名で、なかには毎日来店するユーザーもいるという。
「規則正しい生活をしている人が多く、定期的にジムに通う感覚で来られている。そのため、飲食店のサブスクの中では来店頻度が高い。しかし、ある程度予測していたものの初月はなかなかの赤字だった。価格帯の微調整をしながら軌道修正していった」
来店頻度の高いユーザーが多いと、ビジネスとしては難しい部分があるのではないだろうか。
「キャパシティに余裕のある店で展開しているので、毎日でも来ていただけたらうれしい。もちろん、ユーザーすべてが毎日来店したら赤字だが、用事があって来られない日もある。現在はいいあんばいの来店率に落ち着いている」
来店頻度が高まることで、店とユーザーの距離も近づいた
そもそも、焼肉ライクは「焼肉をもっと気軽に」というミッションを掲げ、焼き肉ファストフードをコンセプトにした焼肉チェーンだ。来店者の8~9割は食べ放題の脂ののった焼肉を食べる学生、1,000円定食でサクッと焼き肉を食べる人たち。焼肉フィットネスは焼肉ライクを知ってもらい、認知を広げるためのひとつの施策なのだ。
「焼肉フィットネスは想定以上の反響があった。2~3ヶ月連続で来店して、来店回数でコスパを計算してSNSに投稿している人、焼肉フィットネスに通って何キロ痩せた!と記録を取っている人もいる」
実は、焼肉フィットネスを活用したダイエット企画も考えていたのだが、自主的にダイエットの様子を投稿し始めるユーザーが出てきた。来店頻度が高まることで、サービスやお店に愛着をもち、応援してくれるユーザーが増えたのだという。
「よく来店する方は店員にも優しく対応してくれる。お店を好きでいてくれて、『ここをもっとこうしたらいいと思う』とSNSのDMでアドバイスをくれる人もいる」
ユーザーに受け入れられた焼肉フィットネスだが、有村氏は満足度と認知度の向上が次の目標だと話す。
「契約しているユーザーの満足度を最大限にあげたいと考えている。スタートするタイミングは当初1ヶ月に1回だったところ、今はいつでも始められるようにした。季節に合わせたメニュー変更や、健康にいい食材を積極的に取り入れるなど、新鮮なサービスを提供していく。トレーニーにはある程度認知してもらえたものの、焼肉フィットネスを知らない人はまだまだ多いので、さらに認知度をあげていきたい」
今回、トレーニーという新たな顧客を取り込むことに成功した焼肉ライク。今後、さらに広げていきたい顧客層とは。
「焼肉フィットネスの提供をはじめたことで、健康にいいサービスを提供していきたいという想いが強くなった。例えば、糖尿病予備軍の人に役立ち、親御さんにプレゼントしたくなるようなサブスクプランなども考えていきたい。また、子ども食堂などの取り組みをしているので、中高生が1人でも安心して通えるお店にもしていきたい。私たちにとっては、すべての焼肉好きがターゲット。気軽に楽しめる焼肉のファーストフードの輪をさらに広げていければと思う」