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大手が巨大化すればCGCも規模を拡大しなければならない宿命=CGCグループ 堀内淳弘 代表

日本最大のコーペラティブチェーンであるCGCグループ(以下CGC)の、加盟店総売上高が遂に4兆円を突破し た。順調な加盟企業拡大の背景には、競争環境や法律の変更等により、中小の食品スーパー(SM)だけでなく、中堅規模のSM企業の加盟も増えている点があ るのだと言う。シジシージャパンの堀内淳弘CGCグループ代表に、これからのCGCが進む道を語ってもらった。

4兆円突破!!5兆円到達までそれほど時間はかからない

CGCグループ代表 堀内淳弘(ほりうちあつひろ) 1946年東京生まれ。69年流通経済大学経済学部卒業、同年東急ストア入社。75年シジシージャパン入社。80年取締役社長室長。85年専務取締役。91年代表取締役社長。2007年CGCグループ代表に就任。

──CGC加盟企業の総売上高が、ついに4兆円を突破しました。規模拡大のスピードが非常に早まっているという印象を受けます。

堀内 コーペラティブチェーンは元々、ヨーロッパで大手小売業の台頭や生協活動が活発化していく中で、中小規模の小売業が大手企業と互角に戦っていくために生ま れた組織です。つまり、大手小売業が存在するから、われわれコーペラティブチェーンが存在するわけです。したがって、イオン(千葉県/岡田元也社長)さん なり、セブン&アイ・ホールディングス(東京都/村田紀敏社長)さんなりが規模を拡大していけば、それに伴って私たちも規模を拡大していかなければ、「大 手さんと互角に戦っていくために」という元々の趣旨を実現することができなくなってしまいます。だから、イオンさんが大きくなればなった分だけ、私たちも 大きくならざるを得ない、宿命を背負っているというわけです。ただ規模の拡大に邁進しているわけではないのです。私たちが生き残っていくために、今この時 期、規模拡大が必要になったということです。

──2006年ごろから、もう一度規模を拡大しようという目標を掲げていました。そして今、実際にそのとおりの結果が出ています。加盟企業が順調に増えている背景をどのようにとらえていますか?

堀内 21世紀に入り、改正食品衛生法の施行をはじめとして、いろいろな法律がグローバルルールに則った内容へと変化しました。そうすると、中小規模の小売業1 社ではとても対応しきれない問題が山積みされることとなったのです。加盟企業の要望もそれまでとは大きく変わってきています。食の「安心・安全」や、環境 問題、コンプライアンスの問題にどう取り組むかということを重要な経営課題として持つようになっています。

 たとえば環境問題ですが、企業としてしっかり取り組もうということになれば、最低でも年商1000億円ぐらいの規模がなければ専門部署を設置して 専任者を配置することは難しい。食の「安心・安全」をきっちり確保した商品開発体制については、さらに大きな企業規模がなければ、とても整備することなど 不可能です。

 こうした小売業を巡る環境変化に伴って、中小企業だけでなくそれなりの企業規模をお持ちのSM企業が「このままではダメだ!」という危機感を感じ られて、CGCに入会するケースが増えています。今の流れのままいけば、グループ総売上高5兆円の突破も、それほど時間はかからないはずです。

──あと何年ぐらいで5兆円態勢が整うと見ていますか?

堀内 現段階では、それほど時間はかからない、としか申し上げられません。なぜなら、加盟は希望される企業がすべて加入できるわけではなく、既存の加盟企業さん と競合する企業の新規加入については、その加盟企業さんの了解をいただいたうえでトップ会の承認を得なければ、入会が認められないという決まりがあるから です。

 実際にこれまでも、そういう理由でお断りしたケースはありました。ただ2000年を契機に変わってきました。これまでなら既存の加盟企業さんが、 「絶対に新規加盟を認めないだろうな」というケースでも、了解を得られるようになったのです。ここにきてようやく加盟企業さんが「私たちの敵は大手さんで あって、地元の中小SMではないのだ」ということをご理解いただけるようになったのだと思っています。

──加盟企業さんの意識の変化を促した要因とは、具体的にはどのようなことだったのですか?

堀内 1つの例でいくと、CGCに加盟するA社とその競合B社が切磋琢磨し合っていたあるエリアでは2社で70%の売上シェアを持ち、競合他社の新規参入を許さ ない強固な地盤を確保していました。しかし、両社が非常にシビアな競争を繰り広げた結果、B社が経営に行き詰まり、大手SMに買収されてしまったのです。 その後、B社の店舗は大手SMとして生まれ変わり、さらに別の大手系SMも新規参入を果たすなど、エリアの競争環境が激化しました。A社にとっては、そん なことになるぐらいなら、B社と仲良く一緒にやっていたほうがよかったと言うわけです。そういう事例がたくさん出てきました。その意味では、加盟企業の数 はさらに増えていくものと見ています。

変わらないCGCの柱 商品こそすべて!

──先ほど、加盟企業の要望する内容が、大きく変わってきたとおっしゃっていました。一方で、CGCといえば“商品こそすべて”という考え方で事業を行っています。商品活動については今後どのように進めていきますか?

堀内 創業以来、“商品こそすべて”を協業活動の柱にしています。初期のころの開発委員はすべて加盟企業の社長が担っていましたから、商品にたいへんこだわる方々が多数、CGCに加入されたという背景があります。

 ですから社内(株式会社シジシージャパン:東京都/森田隆夫社長)には今も、“商品こそすべて”というDNAが脈々と受け継がれています。

 ただ、これまでは“安いか”“美味いか”ということだけが判断のより所でしたが、時代の変化に伴って、現在は「安心・安全」の確保に最重点を置い た商品開発態勢に移行しています。これを実現するためには、1つの商品を開発するのにも、工場の点検から商品の履歴管理まで膨大な手間と時間がかかるよう になります。CGCと同じレベルで商品開発を行うことができる大手チェーン企業は国内には、イオンさんとセブン&アイさんしかありません。ですから、新し い商品開発態勢に移行したここ4~5年で、商品の品質は格段に向上したと思います。

──シジシージャパンの商品開発スタッフが商品の製造工場に立ち入って、品質の確認を行っているわけですか?

堀内 はい、それが仕事ですから。社員は海外出張がものすごく多く、加盟企業の代表バイヤーさんらと共に毎週10~20人単位で海外に出張しています。08年度は中国だけで100日強ぐらい、社員が行っている計算になります。

 基本的に、商品をつくるということは、ものすごく難しいことです。つくったら、自分で責任を負わなくてはならない。CGCは一部商社さんにお願い している商品もありますが、ほとんどの商品は自分たちでつくっています。メーカーさんに商品を提案させて、メーカーさんの名前を明らかにして、責任もメー カーさんに押し付けるやり方はプライベートブランド(PB)商品とは言いません。PB商品は自己責任のうえで開発しなければなりません。

──これだけ長い期間、商品開発に注力して活動を行ってきているわけですから、社内には商品開発に関して専門性の高い人材が豊富にいるということですね。

堀内 はい。世界に通用する商品開発者の資格である、SQFプラクティショナー(*1)の資格保有者が現在社内に70人ほどいます。ただ社内の商品開発スタッフが勉強するだけでは「安心・安全」な商品を開発することはできません。製造を委託するメーカーさんもそれなりに勉強していただかなければなりません。そこでCGCでは03年から、HACCP(*2)やISO(*3) など第三者認証をメーカーさんに取得するようにお願いしており、06年からはそうした第三者認証を取得しているメーカーさんとだけお取引をすることにして います。認証を取得したらそれでよいというわけではありません。たとえば、ちょっとした事故が起きたとします。改善が不可能な場合は、工場を替えるしかあ りません。CGC基準は国内でいちばん厳しい基準なのではないでしょうか。万全な開発態勢を確保するために、必要不可欠なことなのです。

*1:SQFはSafe Quality Foodの略で、プラクティショナーは実務家の意味。HACCPとISOを組み合わせた、食品の安全と品質の確保を目的とした国際認証システムである 「SQF2000」を導入・維持・従業員教育をするためには、SQFプラクティショナーの資格保有者が必要不可欠
*2:原料の入荷から製造・出荷までのすべての工程において、あらかじめ危害を予測し、その危害を防止するための重要管理点を特定し、そのポイントを継続的に管理する手法
*3:工業分野の国際的な標準規格を策定するための民間の非営利団体

CGCが果たすべき役割の幅がどんどん広がっている

──加盟企業さんからのPBに対する評価も上がっているのでしょうね。一方で、大手小売グループ各社は現在、低価格帯のPB開発を推進していますが、CGCではどのように対応していますか?

堀内 こういうご時世ですし、イオンさんやセブン&アイさんがどんどん低価格PBを打ち出していますから、加盟企業さんからも、そうした商品を拡充させたいという要望が高まっています。

 低価格PBの1つは、「断然お得」商品です。これはもともとメーカーさんにお願いして、工場の閑散期を活用してつくっていただいたものです。当初 はスポット的な扱いでの活用を想定しておりましたから、品切れについても容認していました。ところが、「低価格商品をもっと売るから、定番商品の扱いにし て、品切れしないようにして欲しい」という加盟企業さんの要望がものすごく増えてきましたね。ですから今、そうした商品を安定的に供給できる態勢の再構築 をし始めているところです。

──総売上高4兆円を突破されて、CGCグループの勢いがさらに増しているととらえている方が多いと思います。CGCに死角、課題があるとすれば、どういうところにあるとお考えですか?

堀内 やはり、CGC内の統合戦略をいかに進めていけるかということに尽きると思います。

 小売業は年商500億円で半人前、2000~3000億円でやっと1人前です。年商100億円の企業の皆さんには「3社集まって年商300億円に なってください」、年商300億円の会社には「3社まとまって年商1000億円企業になってください」と言っています。そして現在、アークス(北海道/横 山清社長)を先進・成功例にして、各地でいろいろな動きが出始めています。ですから組織内協業をいかに推進できるかがCGCの課題ですね。SMに必要な最 低限度の売上高は300億円です。その規模がなければ、専任のバイヤーを置けないのです。

 それとコンプライアンスの徹底を図るにも、やはりある 程度の企業規模がなければできません。先述した環境問題への取り組みも同様で、1社ではできません。グループを挙げて取り組む以外にないのです。このよう に、1社だけではできないことがどんどん増えている中で、商品分野は当然のこととして、それ以外にもCGCが果たすべき役割の幅がどんどん広がっていると いうわけです。

──CGCの業界での存在感、および加盟企業への責任感がますます大きくなりますね。

堀内 これからが大変です。気を引き締めて、グループ全体の舵取りを行っていきます。