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来店前に自社アプリを開いてもらうために、食品スーパーが実装すべき1つの機能

気づけば、食品スーパー各社のアプリ機能はずいぶん発展しています。商品開発ストーリーやレシピ提案などで情報量が増えたほか、オンライン購入ができたり、買い物メモが可能だったり、掲示板的なコミュニティ機能を備えていたりします。いつの間に? なぜ進化に気づきにくいのでしょうか。それにはリアル店舗における慣れ親しんだ行動パターンが関係しているのかもしれません。

情報量の増加・機能進化が続く食品スーパー各社のアプリ

食品スーパーのスマホアプリ3つの機能

 食品スーパーのスマホ用アプリは、総じて①ポイントカード代替、②折り込みチラシ代替から始まったように思います。次いで③クーポン券代替でしょうか。これらの基本機能だけで、来店頻度が高い業態ですからアプリの使用頻度も十分に保証されます。むしろ十分すぎて、豊富なレシピ提案も、商品への関心を高める開発ストーリーも、その他諸々の機能にも気づかない恐れがありそうです。

 食品スーパーのアプリに見られる最近の進化、中でもレシピ紹介の充実ぶりは目を見張るほどです。オリジナルメニューを動画コンテンツで配信するチェーンもありますし、レシピが販売施策と絡んでいる例も増えています。実に、小売業の情報発信はSNSも含めてマルチメディア化してきました。ただ、アプリの機能が進化するだけでは十分とはいえません。

 先日お話をうかがったベイシアの相木孝仁社長は、自社アプリについて「まだ全然」と言われました。情報量は格段に増え、内容は充実しているものの、「本当の意味で購買のアシスタントになっていません」(相木社長)との評価です。

 相木社長は、けっきょく利用客のほとんどがポイントをつけるためにアプリを使用していると指摘されました。

 「レジまで来て、初めてアプリを立ち上げます。これを変えることができたら大きな違いを生むでしょう。来店前にアプリを開き、いい商品があるなと思っていただける状況を作り出したい。簡単ではありませんが」(相木社長)

 リアル店舗のアプリに何が備わったら、このような行動変容をもたらせるのでしょうか? 以下に私見を述べてみます。

買い物は商品を探すときに始まる

 店舗まで来ないと買い物が始まらない・・・。これはリアル店舗の宿命でしょうか? そうではないと思います。同じ店舗在庫を扱うネットスーパーの場合、来店せずとも買い物が成立しています。

 それがネットスーパーというものだ? それはそうですが。店外で買い物ができるネットスーパーと、足を運ばなければ買い物が始まらない店舗との違いは何かということです。それは購入可能な商品を検索できるかどうかです。

 買い物は、自らの必要に照らして商品を探すことから始まる場合がほとんどです。与えられる情報から始まる割合は低いでしょう。特売情報を満載したチラシにしても、一人の顧客が実際に買うのは掲載品の中から多くて数品、割合は数%に過ぎないと言います。90%以上はチラシに載っていない商品を探して購入していることになります。

 オンラインショッピングでの行動を考えても、買い物はプッシュされた情報からよりも、自ら検索した情報を主体としていることが確認できると思います。オンラインではいつでも検索を始められるので、サイトを訪れる頻度も高まります。

 私個人は、アマゾン(amazon.co.jp)のサイトを訪れる頻度がYahoo! JAPANより高いくらいです。何か必要を思いつくたびにサイトに行き、検索しています。個別の商品を探すというより、カテゴリーの検索から始まることが大半です。枕を買い替えたいとか、新しいノンアル飲料を探したいとか思うとき、アマゾンにアクセスします。

 時間をかけてサイト内のページ遷移を繰り返し、商品を見比べます。必要を感じたらメーカーのHPやYouTubeなども使ってさらに詳細に調べます。店でこんな時間はかけられませんが、オンラインならできます。もし店内で同じように情報を取得できるとしても、その場では処理できないでしょう。

 食品スーパーも、店内在庫のネット検索が可能になるとき、顧客は来店前にもアプリを立ち上げるようになるのではないでしょうか。自分が探したい商品を探せるからアプリを開く。そうした行動が定着して初めて、店側が伝えたい情報も目に入るようになるのでは。

 もっとも、店舗の在庫検索が可能なことだけをもって、店の競争力が高まるわけではないでしょう。何年か前に店舗在庫のネット検索を可能にした実験店がありましたが、続きませんでした。ただ、アマゾンと食品スーパーのアプリを照らし合わせて考えてみると、両者の使い方の違いは商品検索にあると思う次第です。